総裁選を機に高市トレードから石破トレードへ。市場は激しい展開が続く
このところ激しいマーケット展開が続いている。その最大の要因は石破茂新政権の誕生である。9月27日の自民党総裁選。第1回目の投票でアベノミクス後継者である高市早苗氏が1位になったことで史上初の女性首相誕生への期待が高まり、金利低下・円安に伴う「高市トレード」が活発化した。日経平均株価は高値引けの908円高、そしてドル円も146円台まで円安が進んだ。
ところが株式市場が引けた後の15時20分頃のこと。決選投票において石破氏が高市氏を破るサプライズの結果が出た。その瞬間に為替は一気に142円台へと急伸、そして日経先物株価は夜間取引で2400円安の3万7440円に急落。石破首相の誕生で「早期利上げ、法人税増税、金融所得課税強化」というタカ派的緊縮政策が行われるのではないかという思惑の「石破トレード」一色となった。株式市場での石破氏の評判は悪く「高市氏で決まり」のシナリオがほぼ形成されていたため失望感は大きかった。ちょうど3年前の岸田文雄新総裁の選出後に見られた「岸田ショック」を彷彿とさせる動きだ。激しいトレードの元凶はヘッジファンドによる短期的仕掛け売りである。
総裁選後は下落率トップの1910円安。石破政権は市場から厳しい洗礼
週明けの東京市場における日経平均は4.8%下落の1910円安でスタートした。自民党総裁選後の初日取引日における下落率で堂々のトップだ。普通は新総裁が決まると「ご祝儀相場」と言って誕生を歓迎するように株式市場は上昇するが、今回は「逆・ご祝儀相場」となった。これが株式市場での石破新総裁への評価だ。嫌な予感がした。
なぜ、これほどまで激しく下落したのか? もちろん「高市トレード」の巻き戻しの反動という理由もあるが、金曜日の908円高を差し引いてもさらに1000円安の下落だ。この分は「石破トレード」の影響と見なければならない。株式市場で最も懸念されているのが金融所得課税の強化である。総裁選の公開討論会で既に口にしていたため実際に彼が首相になると「株式市場にとってはマイナスだ」とのイメージが働く。ちょうど3年前の岸田ショック時も同じ理由で株式市場は下落。日経平均は「12年ぶり8営業日下落」という不名誉な記録を作った。9月14日高値3万795円から10月6日の安値2万7293円へ3502円安、11.4%の下落率となった。
石破政権で金融所得課税強化は行われず。超富裕層向け税制改正は成立済
だが、石破政権では金融所得課税強化は行われない。なぜなら、2025年からミニマムタックス導入が既に決定(2023年12月に税制改正成立)しており「1億円の壁」問題は解決済みだからだ。高額所得者(株式・不動産所得なども含む)には22.5%の最低税率が適用(ミニマムタックス)が適用される。株式関連税率は15%(国税)のため差し引き分が増税となる。総裁選挙中に石破氏が金融所得課税強化の話を持ち出したのは、岸田派からの票の取り込みを狙ったものであり、その戦略はまんまと成功して決選投票で勝利した。このようなカラクリが存在していたのである。メディア報道やマーケット関係者による「金融課税強化懸念で株式市場は急落」との解説は的外れである。石破内閣では金融所得課税強化は行われないと考えるべきである。
ところで「ちゃぶ台返し」とは何か? まずは早期解散。公開討論会では「国民に判断していただく材料を提供するのは政府の責任であり、新しい総理の責任だ。世界情勢がどうなるかわからないのに『すぐ解散します』という言い方はしない。解散していい状況が整うかどうか判断する」と早期解散に後ろ向きだった。ところが、この姿勢を撤回する形で「10月9日解散、27日投開票」の方針を示した。9月30日のことだ。すなわち、石破氏は10月1日の首相就任前に衆院選の実施を明言した。この言動が憲法に違反する疑いがあるとの批判が出ている。
金融正常化、裏金議員問題。ちゃぶ台返し発言が続き、国民や市場は混乱
そして、金融正常化の推進だ。石破首相は金融緩和を重視するアベノミクスに対して批判的であり距離を置いていた。ところが、日銀の植田和男総裁との会談後の記者団とのインタビューで「個人的には現在、追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」と答えた。「石破トレード」で円の買いポジションを大量に仕込んでいたヘッジファンドたちの「円買い・ドル売り」が一気に巻き戻され、143円台から147円台まで下落。翌日の株式市場において日経平均は一時1000円を超える上昇となった。
さらに驚くべきことは、注目された所信表明演説では従来の持論はほぼ封印される形となり、北大西洋条約機構(NATO)のアジア版構想や日米地位協定の改定などについての言及はなかった。衆議院選挙で勝利することを重視する短期志向の考えが透けて見える。
だが、その選挙。石破内閣を自ら「納得と共感内閣」と位置付けているにも関わらず、「裏金議員を原則公認、比例重複も容認」との方針を固めたとの報道で物議を醸した。国民からは「納得もされず、共感もされない内閣」との評価で内閣発足時の支持率は51%(テレビ東京・日本経済新聞社)となっており、歴代内閣においても非常に低水準に留まっている。ただ、その後、世論の反発を受け、党の処分の重い人や説明責任を十分果たしていない裏金議員を非公認にするとの報道で混乱に拍車がかかっている。
衆議院選挙の自民議席減は濃厚。波乱の動向をセミナー録画ビデオで復習
そもそも石破氏は自民党内で「党内野党」と呼ばれる立場だった。従来の自らの言動や立場のちゃぶ台返しばかりが目立つ。今後も不規則発言が続く可能性がある。投資家にとっては非常にやりにくい状況が継続しそうだ。
10月27日の衆議院選挙では自民党がかなり議席数を減らすことは確実である。そういう面も含め、金融市場はしばらく不透明で投機色の強い動きになる可能性がある。今後の動向を見極めながら投資戦略をじっくり練っていくこととしたい。10月3日(木)に開催したWebセミナーで『金融相場初動で石破ショック、今後のマーケットはどうなる?』と題して石破政権での投資のポイントや銘柄選択を詳しく解説した。ぜひ参考にしていただきたい。
衆院選、米大統領選、FOMC後に行う11月14日(木)セミナーは必聴だ!
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●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供によるメルマガ配信などで活躍。
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