令和のブラックマンデーから猛反発。日経平均は3万8000円台を回復!
東京市場に参加する投資家たちにとって一生忘れられない2024年8月5日。1987年のブラックマンデーに匹敵する急落がマーケットを襲い、投資家たちの化けの皮が剥がれた日だ。「誰が素っ裸で泳いでいたかは、大波が引いて初めてわかる」というウォーレン・バフェットの言葉を紹介したい。あなたは素っ裸で泳いでいなかっただろか? 溺れた人たちもいっぱいいた。その多くは信用取引やレバレッジ取引など危ない投資をして人たちに他ならない。新NISAで投資を始めたビギナー投資家にも大きな試練となった。日経平均株価は3万1458円まで売り込まれたが、今や3万8000円台を回復。7月11日の史上最高値4万2224円に対して安値から60%を超える戻りとなり、「半値戻しは全値戻し」を試す局面に入っている。
ところで、8月に起こった一連の暴落を振り返ると、そのきっかけは日銀にあったと言えよう。植田和男総裁は3月のマイナス金利解除に続いて、7月31日の金融政策決定会合で政策金利をゼロ金利(0.0%~0.1%)から0.25%への追加利上げを決定。また国債の買い入れ額を現在の月間6兆円から2026年1Qに3兆円まで半減させることを決めた。
「繰り返し利上げする」と誇張された英訳が暴落の引き金に
この日の東京市場は結果発表後に乱高下の末、日経平均は575円高と上昇して終了。ところが、15時半から開かれた記者会見で年内の追加利上げの可能性を否定しなかったことで為替相場が急激に動いて円買い・ドル売りが加速。ドル円は一時141円台まで進み、円安を背景とした業績拡大期待が急速にしぼむ形となった。8月1日の日経平均は975円安、8月2日は2216円安、そして8月5日は4451円安と暴力的な下落が加速した。
植田発言が軽率だったのはさておき、問題だったのが「繰り返し利上げをする」という誇張された英訳である。これが海外投資家にサプライズとして受け止められ、円キャリートレードの巻き戻しを誘発した。ドル円の今年の推移を見ると、年初は141円であったが円キャリートレードで161円まで円安が進み、再び一気に141円への円高。すなわち、年初からの円下落は全戻しとなった。
結局、これだけの大きな動きがマーケットで起こったため、令和のブラックマンデーの翌々日の8月7日に日銀の内田眞一副総裁が「不安定な状況で利上げすることはない」と明言して、沈静化を図ったのは皆さんご存知の通りである。
円安抑止のための植田発言、火消しのための内田発言。日銀は大丈夫か?
ところで、ここからが本題「日銀は迷走しているの? 独立性はあるの?」である。
まず問いたいのが7月の利上げである。植田総裁が3月にマイナス金利解除を決定した時は「次の利上げは急がない」との発言を繰り返した。これが投機筋に安心感を与え、円キャリートレードを加速させた土壌となった。4月の植田総裁の記者会見でのやり取りは「円安の影響を軽視している」との印象を市場参加者に与えて円売りが加速した。要するに、日銀は円安に追い詰められていった形だ。円安が進めば物価上昇による日本経済へのマイナス面が大きく、大物政治家たちは一様に「円安は悪だ」「なぜ円安を放置するのか?」というコメントを連日に渡って口にした。マーケットでは「日銀は9月に利上げ」との見方が大勢であった中、前倒し感が強かった利上げに加え、「年内にさらに利上げ」とのメッセージは強烈だった。要するに周囲のプレッシャーに押される形で利上げを決め、円安防止をここぞとばかりに記者会見の席で前のめりに言及したのではないか、という疑問が湧いてくる。
次に、内田副総裁の発言「不安定な状況で利上げすることはない」だ。株式市場は暴落、為替市場は常軌を逸した円高加速が起こり、当の日銀が引き起こしたことを踏まえての火消し役を担ったのは理解できる。とは言え、日銀の基本スタンスは金融正常化への着実な歩みである。こうした形での安易な火消し発言は「もはや日銀は当面利上げできない」との印象を与えることになり、それが円キャリートレード復活など投機的動きをくすぐるキッカケになりかねない、という危惧が起こる。
日銀もFRBを見習え。フォワードガイダンスを示し、市場の混乱を避けよ
植田総裁は8月23日の参院財政金融委員会に出席して「マクロ経済見通しがおおむね実現する姿になれば、金融緩和の度合いをだんだん調整していく基本姿勢に変わりはない」と述べて基本的路線の説明をした。もちろんこの発言を受けて、株式市場や為替市場での混乱はなかった。「あれっ、また利上げの話か、こりゃあ大変だ」という解釈はなかった。当然と言えば当然だが、春先からの日銀の一連の動きはマーケットを過度に刺激する内容が目立っていたと私は思う。金融正常化を進めるのならマーケットに妙な遠慮をしたり、マーケットにお伺いを立てるのではなく、多少の混乱があっても丁寧な説明力で乗り切る気概が必要だったと思う。
最後に中央銀行とマーケットの対話について皆さんに思い出していただきたい。前総裁の黒田東彦氏が2022年12月に突然決定した長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の修正。従来の「0%から±0.25%」から「0%から±0.50%」へと変更し事実上の利上げ宣言だった。株式市場は急落。日銀による大規模金融緩和の突然の修正を目の当たりにして、私が一番まずいと思ったのが「市場との対話」を全く無視した中央銀行総裁の姿勢である。金融政策を大きく変更するにあたっては、それを実行する数か月前から金融政策のフォワードガイダンス(先行きの指針)を示すことで市場の混乱を避け、事前に地ならしをしていくことが世界の金融政策の常識だ。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の姿勢を見て欲しいと思う。
9月5日のセミナーでは、利下げ後に到来する金融相場の投資戦略を伝授!
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●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供によるメルマガ配信などで活躍。
※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案や銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。原則毎月第一木曜夜は、生配信セミナーを開催。
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