今回は米国、欧州、新興国など、世界各地域の目下の経済情勢をまず俯瞰してみたいと思います。
米国は個人消費の回復力が非常に強い状況
米国経済は他の先進国との対比で、依然として、個人消費の回復力が非常に強い状況です。
2024年9月の米小売売上高は市場予想を上回り、ホリデーシーズンに向けた消費者の購買意欲が堅調であることが確認されました。
特にPlacer.ai(※)のデータによると、小売店への訪問者数は増加傾向にあり、季節的な需要が押し上げられる見込みです。
(※編集部注:「Placer.ai」は消費者のリアルタイムな移動データを分析できるプラットフォーム)
また、Indeedのデータでは、季節労働の求人広告がパンデミック前の水準に戻り、求職者数もここ数年で最高レベルに達していることが明らかとなりました。これにより、短期的な労働市場の活性化が見込まれ、消費行動が一層活発になる可能性があります。
トランプ大統領誕生、さらに「トリプルレッド」となれば、バラマキ政策が実行され、米インフレリスクは一層高まる
アメリカではインフレ期待も上昇しており、特に短期的なインフレリスクが市場では注目されています。
ドイツ銀行のリサーチでは、米国市場がインフレリスクに対して楽観的である可能性が指摘されており、今後の経済成長がインフレを長引かせる可能性も示唆されています。
一方、アメリカの家計債務削減は底を打ち、再び借り入れの増加が予想されているため、消費者が引き続き景気を支える要因となるでしょう。
特にトランプが当選するような状況になれば、その時は大統領は共和党、上下院も共和党が多数派を占める「トリプルレッド」になる可能性が高いので、トランプ政権のバラマキ政策が、議会も通って実行される可能性が高くなると思います。
そうなれば、アメリカのインフレリスクはさらに高まるでしょう。
欧州は国内需要の低迷により、景気が弱含んでいる
一方、欧州では、景気が弱含んでいます。これは国内需要の低迷が主な要因とされています。
フランスでは2024年以降、財政赤字が拡大する見通しですし、ドイツとフランスの企業競争力はパンデミック前の水準と比較して低下しており、輸出の成長鈍化が懸念されています。
こうした状況は、欧州全体の経済活動を一層下押しする圧力となる可能性があります。
中国経済は依然として問題を抱えている。インドではインフレ圧力が高まっている
中国経済も依然として問題を抱えています。
中国の2024年9月の輸出は予想外の減少を見せ、特にEU向けの輸出が大きく落ち込みました。その一方、ロシア向けの輸出は急増し、過去最高となっています。
中国国内では信用成長が鈍化し、政府債務の拡大が民間部門への資金供給を圧迫しています。これにより、さらなる景気刺激策が必要とされる可能性があります。
インドでは、消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回る伸びを見せていますが、その要因は食品価格の上昇にあり、インフレ圧力が高まっています。
インフレ圧力の高まりは国内消費に対するリスク要因であり、今後のインドの政策動向に大きな影響を与えるでしょう。
ここまでは、世界各地域の経済情勢をチェックしてきましたが、次に米国株式市場における各セクターの状況を見てみましょう。
株式市場はセクターによってパフォーマンスに大きな違い。消費関連株やテクノロジーセクターが引き続き投資家に人気
米国の株式市場はセクターによって、パフォーマンスの違いが大きくなっています。
特に、消費関連株やテクノロジーセクターが引き続き投資家に人気であり、高いリターンを上げています。
BofAグローバル・リサーチのデータによると、消費関連株への資金流入には顕著なものがあり、ホリデーシーズンの消費増加がその後押しとなる可能性があります。
また、テクノロジーセクターは依然として多くの投資家に「最も活況を呈しているセクター」と見なされており、特にAI関連銘柄の成長が期待されています。
その一方、製造業は一部で過熱感が見られる程度であり、また、金融セクターは安定した回復を見せていますが、地方銀行の株価は、依然として他の金融機関に比べ、遅れを取っています。
全体的に循環株の回復が見られ、景気回復の兆しが見える中で、こうしたセクターに対する期待が高まっています。
エネルギー市場では、ブレント原油価格が75ドルを割り込み、需給見通しの下方修正や中東情勢に対する懸念の緩和が価格に影響を与えています。
また、米国の天然ガス価格も下落圧力を受けており、今後のエネルギー需要の行方が注目されています。
もしも、米大統領選による株価下落があれば、いい銘柄をピックアップするチャンス
総じて、2024年10月は世界経済の不透明感が続く中、アメリカでは個人消費の強さや季節労働の増加が景気を支える一時的な要因となっていますが、インフレリスクや市場の変動に対しては引き続き警戒が必要です。
株式は各セクターのパフォーマンスを見極めながら、リスク管理を重視した投資戦略を取った方がいいでしょう。
もしも、米大統領選による株価下落があれば、いい銘柄をピックアップするチャンスだと思います。
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。
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