中国の景気刺激策は大規模で、中国株も上昇したけれど、2020年の刺激策を受けた株価上昇と比べると、まだ上昇余地がある
2024年10月8日(火)、米国・シアトルからメルマガ&オンラインサロン「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」で情報配信をしている元フィデリティ投信トップアナリストのポール・サイさんが、ストックボイス社が手掛ける経済・マーケット番組「WORLD MARKETZ」(TOKYO MX 月~金 22時~23時)に生出演した。
今回の放送では、石破政権への評価、中東情勢と原油価格、中国の景気刺激策などをピックアップ。中国の景気刺激策は、2020年の刺激策と似たような規模の大きいもので、中国株は大きく上昇したけれど、2020年の株価上昇と比べると、まだ上昇余地があるそうなので、さっそくチェックしていこう。
石破政権の課税による再配分政策は、貧富の差が小さい日本で大きな効果が出るかよくわからない
番組は、石破政権が誕生したことへの感想を、アシスタントの木村カレンさんがポールさんに質問するところから始まった。
ポールさんが確認した情報によると、石破政権は地方創生と課税による再配分政策、米国への依存を脱却するためのアジア版NATO(北大西洋条約機構)などが目玉政策になっているとのこと。
地方創生は長期的な問題で、すぐに結果が出そうにないものの、「福岡みたいな街からヒントをもらえるんじゃないか」とポールさんは提案した。福岡は女性が多く、街全体においしいレストランなどがあり、そういう地方が増えればもっと良くなっていくようだ。
また、課税による再配分政策は、大きな効果が出るかよくわからないそう。アメリカは貧富の差が大きく、再配分は妥当かもしれないけれど、貧富の差がそこまで大きくない日本での再配分に、ポールさんはあまり意味を感じていなかった。
日本とアメリカの関係については、ポールさんがフィデリティ投信に勤めていたころ、石破さんが会社に来てミーティングしたことがあり、印象的な発言をしていたことを覚えているそう。
その発言とは「アメリカはそんなに頼りにならない」ということ。アメリカに対する日本の立場が昔より弱く、日本は自国のために準備しておく必要があるというのが、当時の石破さんの姿勢で、今回の目玉政策を見ても、当時と似たようなことを考えていそうとポールさんは感じたようだ。
今のアメリカとの関係を日本と韓国で比べると、韓国系アメリカ人がアメリカで政治的な力を持っている一方、日系アメリカ人は3世や4世が多く、日本のためにロビー活動を行うわけでもないため、アメリカと日本とのつながりが第二次世界大戦後より弱くなっているという側面は、確かにあるとのことだった。
すると、番組MCの渡部一実さんが「課税による再配分などは来月、再来月にすぐできる話ではなく、特にマーケットにも関係ないという感じでいいですか」と切り出した。
ポールさんは、課税による再配分は短期、1年、3年で影響があるものではなく、成功すれば5年、10年、20年の期間で影響が出るもので、効果があるかもわからないとして、懐疑的な見方を崩さなかった。
中東情勢、中国の景気刺激策、悪くない米雇用統計と原油価格を支える材料が多く、石油株も上昇した
続いては、中東情勢の話題に。
ポールさんは番組で以前、WTI原油がレンジの下限で推移しており、何かあったら反発するのではと語っていたのだが、今回のイランとイスラエルの対立を受けて、中東や原油、エネルギーセクターをどう見ているのか、渡部さんが質問した。
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WTI原油は、世界の不景気で需要の低下が見込まれて下がったが、中東で紛争が拡大する方向になり、原油供給が減るということで、70ドル割れくらいのレンジ下限から反転したとポールさん。
そして、中東の問題はすぐに改善しそうにないようだ。アメリカは大統領選で中東に目を向ける余裕がないうえ、イスラエルがアメリカの話を聞かなくなり、暴走気味のため、しばらくは問題が拡大する方向に動きそうとのこと。
また、中国が景気刺激策を行っているほか、アメリカの雇用統計も景気が悪くないことを示したため、原油価格を支える材料が多く、これで石油株も相当上昇したようだ。
中国の景気刺激策で、中国株はまだ上昇の余地がありそう。アイスクリーム機で有名なSharkNinjaの株価はアメリカ上場時から3倍以上に
次に、中国株の話題に。
中国の景気刺激策で、上海株や香港株が国慶節前に大きく上がったけれど、景気刺激策や不動産バブルの崩壊、中国のマーケットに対するポールさんの見方を、渡部さんが聞いた。
中国の景気刺激策はGDPの6%ほどの大規模なもので、株式市場は上昇したけれど、国慶節明けの今日(10月8日)は、他の刺激策がまだ出るという期待が裏切られたため、少し失望して下がったとポールさんは解説。
ただ、中国景気の問題がこの刺激策で完全に解決するとは考えづらいのだという。不動産バブル崩壊、人口、退職年齢、政治、負債の再構成、リストラといった中長期の問題がすべて、刺激策で解決するわけではないようだ。
それでは、短期がどうなるかと考えると、今回の刺激策は2020年の刺激策と似たような、割と大きいもので、最近何十年で考えると3番目に大きい規模だそう。
MSCIチャイナで見ると、2020年の刺激策では大体ボトムから8割ぐらい上昇したけれど、今回の刺激策では大体4割の上昇で、前回の例から見るとまだ少し上昇する可能性はあるようだ。
そして、刺激策の良いニュースがもう少し続きそうな感覚がポールさんにはあるという。
もっとも、中国市場へ投資するポイントは、強みがある会社に投資すること。市場指数全体を買うと、国営企業や不動産バブル問題に影響される銀行も一緒に買ってしまうため、そんなにいい選択ではないとポールさんは考えている。
中国が不景気でも、グローバルで競争力がある企業はたくさんあり、一番メインなところとして挙げられるのは、アリババ、テンセント、バイドゥ、JDドットコム、PDDなど。テンセント以外はアメリカに上場しており、買いやすい銘柄だそう。
これらの銘柄のプラスの面は、AIやテクノロジーのトレンドに乗ることができることで、マイナスの面は消費関連が多いこと。中国の不景気で消費が弱いのが問題だけれど、グローバル展開していることで国内の弱さを補うこともできるようだ。
また、中国は輸出生産大国であり、輸出に強みを持つ会社もあるのだという。その1つが、以前番組で紹介した、アメリカで大流行しているアイスクリームメーカーのSharkNinjaだ。
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もともと、香港に上場しているJSグローバル(1691)がアイスクリームメーカーを作っていたのだけれど、JSグローバルがSharkNinjaという子会社を作って、アメリカに上場させたという経緯があるそう。
SharkNinjaは主に小型家電を取り扱っていて、ダイソンを模倣した掃除機を作ったり、独自の技術開発をしてアイスクリーム機や熱風を発生させて調理するコンベクションオーブン、エアーフライヤーといったいい商品作っているとのこと。
中国でいいものを安く作る力と、海外市場の組み合わせで業績が良く、株価は上場して3倍以上になっていて、こういう会社に注目するのもいいようだ。
ポールさんもアイスクリーム機を使って、糖質や炭水化物を減らしたり、プロテインを入れたり、スイカで作ったりと、ヘルシーで簡単に自分好みのアイスクリームを楽しんでおり、去年も今年もずっと使っているそうだ。
アメリカは発展途上国でないのに、ハリケーンの被害が大きくなる理由は、アメリカ人が海沿いに家を建てたいから
最後はポールさんの身の回りの話に。
ポールさんは家で鶏を飼っていることを以前、番組で明かしたことがあるのだが、その鶏は元気にしているのか、渡部さんが聞いてきた。
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「おかげさまで元気です」とポールさん。山猫が鶏を襲ってきて困っていたけれど、最近はラジオをつけて人がしゃべる声を出すと、山猫が怖がって来なくなったため、鶏を外に出すことができているようだ。
渡部さんは続けて「ハリケーンミルトンはポールさんが住んでいるシアトルまではいかないだろうけど、アメリカでは騒いでいるんですか」と質問。
ハリケーンミルトンはアメリカで騒ぎになっているそう。アメリカは発展途上国ではないのに、ハリケーンでの被害がなぜ大きくなるのかというと、アメリカ人は海沿いに家を建てたいからだそう。
海沿いの家がハリケーンでやられても、保険に入っていれば家を作り直すことができるけれど、最近は保険に入らない人も増えてきており、そういう人は今回ハリケーンも来たので、保険に入り直したほうが安心なのではと心配していた。
ここまで、10月8日(火)放送の「WORLD MARKETZ」に出演した、ポールさんのマーケット解説を中心にお届けした。
冒頭でも紹介したとおり、ポールさんはメルマガ&オンラインサロン「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」で情報配信をしている。登録後10日間は無料だ。米国株投資をしてみたい、すでにしているけどもっと現地からの情報が欲しい、ポールさんが推奨する個別銘柄やポートフォリオ(直近2年で100%近い上昇)を見てみたいという人は、こちらをぜひ登録してみてほしい。また、11月には初のWEBセミナーの開催も予定しているので、こちらも要注目だ。