日経平均は今年の高値から2000円下落し、一時3万8000円割れ寸前に
新年明けの東京市場。大発会の日経平均株価は587円安と大幅下落でスタートしたものの、翌日には776円高となり4万0083円と4万円台を回復した。ところが、その後はじりじり売られる展開が続いている。今この原稿を書いている1月17日の午前の取引において3万8055円を付けた。ちょうど今年の高値から2000円もの下落だ。一方の米国市場。1月12日のNYダウは4万1938ドルと4万2000ドル割れまで売られたものの、最近盛り返しており1月15日には4万3221ドルまで戻している。それぞれの高値は日経平均が2024年7月の4万2224円、NYダウは2024年12月の4万5014ドル。高値更新のためには日経平均は11%、NYダウは4%の上昇が必要だ。両者の間には明らかに大きな差が付いている。
ところで、2024年12月24日のコラム『日米金融政策発表で好対照、大幅下落の米国株vs踏みとどまった日本株』の内容を覚えておられるだろうか? 昨年末の時点では今とは真逆で米国株が軟調、日本株は堅調だった。その要因は日米の金融政策発表が大きく関係していた。
日本株好調を支えていたシナリオが「FRB利下げ鈍化&日銀利上げ鈍化」
12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)における米連邦準備理事会(FRB)の判断は事前の予想通り3会合連続での0.25%の利下げだった。政策金利の誘導目標レンジは4.25%~4.50%。2024年はちょうど1.00%の利下げとなった。ここまでは良かったが、ネガティブサプライズだったのが新たに更新されたFOMCメンバーによる政策金利予想と経済見通しだ。9月時点のシナリオに対して、2025年の利下げ回数は4回から2回に減らされ、インフレ見通し(個人消費支出物価指数)は+2.2%から+2.5%に上方修正された。わずか3カ月の間で「インフレ基調が強まったから、利下げペースを緩めなければならない」との見方が示されたのだ。12月18日のNYダウは1123ドル安で50年ぶりの10日続落という不名誉な記録となり、トランプ相場が帳消しとなった。
一方、12月の日銀の金融政策決定会合の結果は予想通りの「金利据え置き」との判断だった。植田和男総裁は記者会見で「データはオントラック(想定どおり)でここ数カ月きているが、次の利上げの判断に至るには、もうワンノッチ(1段階)ほしい」と述べた。具体的な判断材料は2025年の賃上げの行方だ。「賃上げに関しては春闘の集中回答日まで待つ必要はなく、春闘の動向が見えてくれば判断できる」とのコメントだった。その判断は「1月では早すぎ」「4月まで待つ必要はない」との見方から3月18日~19日に開催される金融政策決定会合で0.25%の利上げがなされ、日本の政策金利は0.50%の水準になるとのシナリオが固まった。
米国は利下げスピード鈍化、日本は利上げスピード鈍化という対照的な構図から「大幅下落の米国株vs踏みとどまった日本株」となったわけである。ついでに言えば、日米金利差の拡大によってドル円は再びドルが買われ、円が売られて158円台まで円安が進んだ。
日米金融政策を巡る解釈が変化。シナリオが激変してマーケットは真逆に
今回のテーマは『日米金融政策を巡って勢いづく米国株vsモタモタする日本株』。要するに12月末とは正反対の状況になっている。その理由は、今後の日米金融政策を巡る解釈が変化してきているからだ。12月の日米金融会合からは何も発表されていないのに、わずか2週間程度のうちにマーケットは逆方向に動いている。
まずは息を吹き返している米国市場だが、12月の消費者物価指数(CPI)のコア指数が+0.2%(前月比)と11月の+0.3%より鈍化し、予想の+0.3%を下回った。また12月の卸売物価指数(PPI)は+0.2%(前月比)と予想の+0.4%を下回った。要するに、重要なインフレ指標であるCPIとPPIが想定ほど高くなかったことで過度なインフレ懸念が後退、FRBの利下げペースが大きく鈍化する懸念が後退したことになる。また1月20日の「トランプ2.0(トランプ次期政権)」の発足を前に米国株を見直す買いの動きが出てきている。
一方の日本市場は冒頭で述べた通り冴えない。日経平均はまさかの2000円安である。日銀の利上げ判断「1月は早すぎ」というシナリオが崩れつつあるのだ。植田総裁はわざわざ「1月の会合で利上げを行うかどうか議論して判断する」とコメントしている。今春の賃上げに向けた企業の動きは活発であり、「昨年並み」とする発言が相次いでいる。加えて、熾烈な人材獲得の面から大卒総合職の初任給を41万円にするという東京海上日動のような企業も出始めた。これこそインフレ時代の本格的到来を感じさせる、景気のいい話である。早期の利上げは想定外だったため、株式市場に逆風となっている。また「トランプ2.0はどうなる?」「関税引き上げはどうなる?」という不透明感も漂っており、日本株売りの材料となっている。
相場を主導する先物市場。「売り方」が連日売り崩しを連発して大幅下落
その原動力は現物市場ではなく先物市場である。すでにご存知だと思うが、先物市場の方が現物市場よりも取引金額が大きく、先物主導で現物株が動かされていると言っても過言ではない。とくに昨秋からその傾向が強まっていると感じている。
1月10日(金)のマイナーSQ(特別清算指数)に向けて先物市場で「売り方」「買い方」の双方が激しいバトルを繰り広げた。「買い方」の勝利に終わると思われたが、SQ日に日経平均の最大組み入れ比率のファーストリテイリングが好決算にも関わらず決算プレイで急落。その結果、SQ値は3万9343円と12月の3万9434円を下回って「売り方」が土壇場で勝利。大きなドラマだった。
それに気を良くした「売り方」が連日売り崩しを連発。前日の米国市場の上昇or下落に関係なく、寄付き高値、14時頃に安値というパターンを作って利ザヤを稼ぐという構図である。「何だかおかしい」と感じているあなた、先物市場をしっかり観察すればマーケットの動向がより明確に理解できるとアドバイスしておこう。5分足を見ればトレンドがよく分かる。
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●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供によるメルマガ配信などで活躍。
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