NYダウは1123ドル安、50年ぶりの10日続落という不名誉な記録に
日本時間の12月19日(木)。この日は米連邦準備理事会(FRB)と日銀が同時に12月の金融政策決定会合の結果を発表するビッグイベントの日だった。午前4時の結果発表前までは上昇していたNYダウが発表と同時に大きく崩れ、午前4時30分から始まったパウエル議長の記者会見を受けて更に下落。1123ドル安という急落を演じた。下落が始まった12月6日から10日続落となり、1974年以来50年ぶりの不名誉な記録となった。
今回の米連邦公開市場委員会(FOMC)におけるFRBの判断は事前の予想通り3会合連続となる0.25%の利下げである。政策金利の誘導目標レンジは4.25%~4.50%。これで2024年はちょうど1.00%の利下げが行われたことになる。ここまでは良かったがマーケットにとってネガティブサプライズだったのが、新たに更新されたドットチャートだ。
米株急落の要因は、2025年の利下げ回数の見通しが2回へと減ったこと
ドットチャートはご存知のようにFOMCメンバーによる政策金利予想のことで、ドット(点)によって表した金利予測分布図である。毎年3月、6月、9月、12月に見直しが行われる。12月は2024年最後のドットチャートの提示であり、前回9月からの変化が非常に重視されるわけだが、2025年の利下げ回数が9月時点の4回から2回に減ったのだ。要するにいきなりの半減、利下げペース鈍化との明確なメッセージが発せられた。また、同時に発表された経済関連の予想データにおいて2025年の個人消費支出(PCE)物価指数の見通しを9月時点の2.2%上昇から2.5%上昇に上方修正。わずか3カ月でインフレ基調が強まるとの見方が示された。
マーケットの事前予想としては「2024年は前倒しで利下げを行ったので、2025年の利下げ回数は4回ではなく3回に減るだろう」というのがコンセンサスとなっていたが、いきなり2回に減らされた形となる。株式市場にとって利下げペースが鈍化することは当然のことながら逆風になる。インフレ予想の引き上げも逆風だ。NYダウが1123ドル安(2.6%安)、S&Pが178ポイント安(3.0%安)、ナスダック716ポイント安(3.6%安)となったのも頷ける。
FRB議長のタカ派的利下げへの変心に失望し、トランプ相場が帳消しに
FRBのパウエル議長は記者会見の席で「一部のFOMCメンバーがトランプ次期政権発足に伴う経済政策によって物価高となる見込みでその影響を織り込んだ」と述べた。政策影響の推測や臆測はしないというのが従来のパウエル流FOMCのスタンスであったため、「非常に意外」と受け止められている。いずれにせよ今後も引き続き利下げが行われるものの、その実態は「タカ派的利下げ」と捉えられ、マーケットにかなりのショックを及ぼしたと言える。1月のFOMCでの利下げは見送られる可能性が急激に高まった。
これによりトランプ相場が帳消しとなった。大統領選の投票日だった11月5日のNYダウは4万2221ドル。12月4日には4万5014ドルまで買われて6.6%上昇していたが、12月19日の終値は4万2342ドルとなっており「行って来い」の状況だ。連日強い動きを見せて初の20000ポイントを付けたナスダック市場も19372ポイントまで下落している。
米国の2024年7~9月のGDP確報値は年率+3.1%と速報値より上方修正され、週間の新規失業保険申請件数は予想を下回った。利下げペース鈍化を正当化する内容であり、金利先高観が株式市場の相対的な割高感を強める形となっている。これでは積極的に株を買うムードにはなれない。
一方、日銀は政策金利を据え置き。2025年3月会合での利上げが濃厚か?
一方、同日12月19日(木)のお昼頃。日銀の12月の金融政策決定会合の結果が発表され、多くのマーケット参加者の予想通り政策金利が据え置かれた。米国株が急落した流れを受け朝方の日経平均株価は700円を超える下げでスタートしたものの、円安進展や政策金利を据え置いた日銀の姿勢に支えられて徐々に戻す展開となり終値は268円安(0.7%安)にとどまった。円安を作り出したのは「米国は利下げペース鈍化、日本は利上げペース鈍化」との解釈だ。ドルが買われて円が売られる形となり、157円台後半まで円安・ドル高が進んで5カ月ぶりの水準に。これが日本市場にはプラスに働いて、米国株ほどは下げなかった。
植田和男総裁は記者会見で「データはオントラック(想定どおり)でここ数カ月間きているが、次の利上げの判断に至るには、もうワンノッチ(1段階)ほしい」と述べた。具体的な判断材料は、2025年の賃上げの行方とトランプ次期政権を巡る不確実性の払拭だ。賃上げに関しては春闘の集中回答日まで待つ必要はなく、春闘の賃上げ度合いが見えてくれば判断できるとのことだ。そうすると、その判断は1月では早すぎ、4月まで待つ必要はないことから、2025年3月18日~19日に開催される金融政策決定会合において0.25%の利上げがなされ、日本の政策金利は0.50%の水準になると考えるのが妥当だろう。
「米利下げ鈍化&日利上げ鈍化」で円安進行。政府や日銀の頭痛のタネに
とは言うものの、またまた大きな波がやってきている円安問題は放置できないはずだ。日本において円安は即、輸入コスト増となり物価高を引き起こすからだ。「利上げを急ぐ必要はない」とハト派的な姿勢を強調するほど円安を呼び込み、結果的に利上げに追い込まれる可能性を高めてしまう。政策金利の方向性が真逆の日米中銀。マーケットでは来年の日米金利差はさらに広がると見るようになっている。
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2024年は飛躍した「勝者のポートフォリオ」。2025年も乞うご期待!
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●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供によるメルマガ配信などで活躍。
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