成長する米国&世界に投資する最強のFIRE計画(プロジェクト)

エヌビディアを底値で買ったポール・サイ氏が初の著書を出版! マグニフィセントセブンはなぜアメリカにしか存在しない? 現在のAIブームはバブルか否か?

2025年11月19日公開(2025年11月28日更新)
ポール・サイ
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ポール・サイポール・サイ
ストラテジスト。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。フィデリティ投信で株式アナリスト、中国株調査部長、日本株調査部長を歴任。2017年に独立し、42歳でFIRE達成。現在は不動産投資と米国株式を中心に運用しながら、メルマガなどで個人投資家への助言を行う。台湾系アメリカ人で、中国語、英語、日本語に堪能。

 「やっぱり投資した方がいいってことですね」

 今回の本で読者に一番訴えたいことは何ですか、と尋ねた時、ポール・サイ氏からまず返ってきた答えは拍子抜けするほどシンプルなものだった。

 とはいえ、それは平々凡々な投資家が発した言葉ではない。

 節約と投資で資産を築き、42歳にして早々とFIRE。

 そして、自身が配信するメルマガの推奨ポートフォリオは3年で3.4倍に。リターンにすればプラス240%というその数字は、同時期のS&P500連動ETFのプラス70%に対し、実に3倍以上という圧倒的大差をつけている。

 フィデリティ投信で運用の腕を磨きに磨き、卓越した投資手腕を持つに至った、そんな男の絞り出した言葉。

 それが「やっぱり投資した方がいいってことですね」、だったのだ。

台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!出所:書籍『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』の「PART2 S&P500に大差! 驚異の投資成績を達成できた理由とは? ─ポール式投資術! 銘柄選びの極意─)

 そして、ポール氏への問いに含まれていた「今回の本」というのは、ポール・サイ氏の初の著書、『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』(ダイヤモンド社)のことである。

 S&P500に3年間で3倍以上の大差をつけたポール氏の投資法とはどのようなものなのか? 身を乗り出して知りたくなるような、その投資法がこの11月に発売されたばかりの本書では具体例を挙げながら存分に解説されている。

「投資をしているか、していないか」が資産形成がうまくいくかどうかの分かれ道

 本書に出てくるのだが、アメリカに住むポール氏の周りには、特に高収入でもないのにうまく資産形成してFIREを達成している人がいる一方で、逆にかなりの高収入でも資産形成がうまくいっていない人もいるという。

 なぜ、そんなことになるのだろうか?

 他人の家計のことなので、ポール氏が細部まで把握しているわけではなく、そこに推測は混じっているのだが、この好対照な両者について、

 「その違いを生んでいるのは、一言で言えば、『投資をしているか、していないか』だと私は考えます」(P241)

 とポール氏は述べている。

 「やっぱり投資した方がいい」というポール氏のシンプルな言葉はダテではない。自らも投資してきたことで早々にFIREを果たし、さらにこのような自らの周囲の人たちを観察していく中で、心の底から発せられた最も重要な言葉、それが「やっぱり投資した方がいい」だったということなのである。

「短期間で300万円を1億円に」といった派手なキャッチコピーに踊らされるな!

 もちろん、「やっぱり投資した方がいい」でポール氏の話は終了! というわけではない。まず、ポール氏が推奨するのは投資といっても長期投資だ。短期的な投機ではない。

 ポール氏は書籍の中でこのように書いている。

 「『短期間で300万円を1億円にした投資家がオススメの銘柄を紹介!』といった派手なキャッチコピーで、投資をあおる情報商材も少なくありません。しかし、仮に300万円を5年で1億円にしようとすれば、年率102%という成績が必要です。

 世界的な天才投資家でも、長期で達成できるのは年率20~30%が限界です。この現実を踏まえれば、『毎年数十%のリターン』をうたう投資話がいかに非現実的か、おのずとわかるはずです」(P249)

 このように短期的にものすごいリターンを謳う情報へ飛びつくことにポール氏は警鐘を鳴らし、投資におけるリスク管理の重要性を強調する。

 「分散投資を徹底した方がいいと思います。時間の分散、地域の分散、通貨の分散、資産タイプの分散、銘柄の分散といったことです」

 実際、ポール氏の推奨ポートフォリオにはアメリカ、カナダ、ドイツ、中国、台湾などさまざまな地域の企業の株式が組み込まれている。

 3年で3.4倍というポール氏の推奨ポートフォリオの成績はすばらしいものだが、そのリターンはハイリスクの投資対象に集中投資して得られたわけではなく、きっちりと分散投資を行い、リスク管理を行った上でのものなのだ。

ポール・サイ「短期間で300万円を1億円にした投資家がオススメの銘柄を紹介!」といった派手なキャッチコピーへ飛びつくことにポール氏は警鐘を鳴らす

最先端の巨大テクノロジー企業「マグニフィセントセブン」はなぜ、アメリカにしか存在しないのか?

 ただ、世界株への分散投資で基礎は固めた上で、ポートフォリオの中心に据え、重視すべきなのは米国株だとポール氏は説いている。何よりポール氏の書籍タイトルには「米国株で一生安心のお金をつくる方法!」と記されているのだし…。

 「私たちが住んでいる世界の中で、経済規模が一番大きいのはアメリカです。さらにもっと重要なことは、世界を変えるようなイノベーションを起こしている企業はアメリカに集中しているということ。最先端をいく巨大テクノロジー企業はアメリカにしか存在していないのです。それがポートフォリオの中で米国株の比重を高めるべき大きな理由です」

 いわゆる「マグニフィセントセブン」に代表される最先端の巨大テクノロジー企業。それらの企業はアメリカにしか存在していない。いつの間にか、当たり前のようになっているけれど、考えてみれば不思議にも思えるこの現象。ポール氏の書籍では、その理由についてもある種、身もフタもないレベルでストレートに詳しく解説されている。

台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!出所:書籍『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』の「PART1 巨大IT株はなぜアメリカだけに存在する?」)

 さらにポール氏の書籍では、米国株の強さの理由、アメリカという国の強さの理由がとてもわかりやすく説明されている。

 米国株の強さの理由として、「アメリカは人口が増え続けている先進国」という説明がよくなされることがある。そのこと自体は誤りではないだろうが、ポール氏の書籍、『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』では、それよりもっと深く、もっと幅広い観点から徹底的に、米国株の強さについて解説がなされているのだ。

 ポートフォリオの中心に米国株を据えるとしても、そういった背景をきちんと理解できていれば、より自信を持って、そのことを長期に渡って実践し続けることができるだろう。もし、あなたが米国株に興味を持ったなら、ポール氏のこの書籍を手に取ってぜひ読んでみてほしい。

エヌビディアもネットフリックスも投資家から悲観視され、安くなっていた時に買った! ポール氏の株式投資法、3つのステップとは?

 では、米国株を中心に据えるとして、その中からどう銘柄を選び、いつ、その銘柄を買えばいいのだろうか? 買ったあとはどうすればいいのだろう?

 ポール氏の書籍では、ポール氏の株式投資法が3つのステップに分けて解説されている。その3つのステップとは次の通りだ。

ステップ1:良い投資ストーリーを持つ優れた会社を見つける

ステップ2:優れた会社をみんなが悲観視し、株価が安い時に買う

ステップ3:買ったらそのまま持ち続け、あとは何もしない

 こうして3つのステップの概要を示しただけだと、ともすると簡単なことに見えてしまうかもしれないが、いざ、実践しようとすると、疑問もわいてくることだろう。

 良い投資ストーリーを持つ会社を見つけるといっても、どうやって見つけたらいいのか?

 優れた会社をみんなが悲観視し、株価が安い時に買うといっても、そのような時は怖くて買えないのではないか? そのような時に買うのは危ないことではないのか?

台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!(出所:書籍『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』の「PART3 優れた企業が過小評価され株価が割安な時に買う」)

 買ったら、「あとは何もしない」というが、本当に何もしなくて良いのか?

 3つのステップの表面だけなぞっても、ポール氏の投資法を真に理解することはできないし、身につくこともないだろう。本書では、具体例を挙げながら、3つのステップに沿った投資の詳しいやり方や、その背後にある意味などについて詳しい解説がなされている。

 そして、ポール氏の投資哲学の重要な要素として、「悲観視されているところにチャンスがある」ということがあるのだが…。

 今をときめくエヌビディアも、ポール氏が自身のメルマガで買い推奨したのは大底近くでのことだった(右図参照)。

 

 また、良い投資ストーリー自体は変わっていないのに、絶望的なまでに投資家から悲観視されていたネットフリックスもポール氏は見逃さなかった(下図参照)。

台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!(出所:書籍『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』の「PART3 優れた企業が過小評価され株価が割安な時に買う」)

 こういった具体的事例を交えながら、3つのステップからなるポール氏の株式投資法が解説されているのがポール氏の書籍、『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』なのである。

現在のAIブームはバブルではない! 人間の欲望が尽きない限り、知性への需要は無限だ

 すでに述べてきた通り、最先端の巨大テクノロジー企業はアメリカにしか存在せず、だからこそ、ポール氏は米国株を重要視している。当然ながら、ポール氏は現在のAIのトレンドを重視しており、AI開発用の最先端半導体を供給しているエヌビディアはポール氏の代表的な推奨銘柄だ。

 やはり、今の株式相場を考える上でAIの話題は欠かせない。

 ポール氏の今回の書籍の中でもAIに関するコラムが設けられており、そこでは人間と同等以上の知的能力を持つAGI(汎用人工知能)のことなど、AIに関するさまざまなトピックが取り上げられている。このコラムを読むと、有力なAI開発者の間では、多くの一般人が想像するより意外なぐらい早くAGIが開発されると考えられていることがわかる。

台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!(出所:書籍『『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』の「投資の知識を深めるコラム1 人類の知性を超えるAI誕生は近い!?」)

 ただ、最近の株式市場では「AIバブル」ではないかとの声が多く聞かれ始めたように思える。非常に巨額のAIデータセンター投資が進められており、AI関連企業同士で“循環取引”が行われているのではないかと懸念を示す向きもある。

 このような事柄について、ポール氏は今回の書籍のAIに関するコラムの中で、次のように述べている。

ポール・サイ現在のAIブームはバブルなのか? ポール氏の見方は?

 「AIにとって、少しでもマイナスに受け取られる出来事が起こると、メディアではAIのピークアウト論が取り沙汰されることがあります。

 ただ、世の中、常にネガティブなことを言う人はいます。

 それがあとから間違っていたことが判明しても、それほど批判されることはありません。その一方、もしそれが当たったら、『ほら、言った通りだろう』と自慢できます。だから、ネガティブな議論を展開するメディアは、常に一定数存在するものなのです。そういった議論はあまり重く受け止めることはない、と私は思います」(P158)

 今回、筆者はポール氏に取材した際、上記のようなポール氏の考えを認識していた上で、それでもなお、今は「AIバブル」が起きているのではないかということについて、かなりの時間を費やし、ポール氏に根掘り葉掘り聞いてしまった。

 それはここまでAI関連銘柄がかなりの勢いで大きく上昇してきたあと、何かあると大きく下落するというふうにボラティリティが高くなっているように見え、投資家の端くれでもある筆者が、ある種の“AI関連銘柄高所恐怖症”に陥っていたからかもしれない。

 筆者の問いに対しポール氏は、AIのトレンドは人類にとって非常に大きな出来事であり、仮にバブルの要素があったとしても今はまだピークではないと思う、といったことなどをいろいろと答えてくれた。

 その取材の数日後のことである。

 ポール氏は自身が配信しているメルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」において、「米国株!AIはバブルではない理由 ? 『知性(Intelligence)』をめぐる新しい産業革命」と題した非常によく整理されたAIに関する論考を掲載したのだった。これはもしかしたら、筆者がAIについてあまりにも根掘り葉掘りポール氏に聞いたことに触発されたことなのかも…!?

 そのメルマガのすべてをここで紹介するわけにはいかないが、とても明快で参考になる内容と思えたので、その一部を特別に以下に引用し、紹介したい。

私は、現在のAIブームを「バブル」とは見ていません。

(中略)

なぜならAIは単なるテクノロジーの流行ではなく、「新しいブロックバスター薬(Blockbuster Drug)」のような存在だからです。製薬業界で一つの画期的な薬が莫大なリターンを生むように、AIも最終的に「人類の知性(Intelligence)を拡張する」という、極めて大きな成果を目指しています。

(中略)

重要なのは、AIへの投資判断をしている人々--テクノロジーの最前線に立つ経営者や国家指導者たち--が、短期的な利益ではなく「技術の進歩」を見ているという点です。彼らは「今期の利益率」よりも、「どれだけ前に進めるか」を重視しています。AIの世界は基本的には“Winner Takes All(勝者総取り)”に近い構造を持っています。つまり、先行者が技術やデータを独占し、後発は追いつくことが難しいのです。

(中略)

インターネットがもたらしたのは「情報摩擦の消失」でした。言い換えれば、インターネットは効率化された電話です。しかしAIはまったく次元が違います。AIとは「知性(Intelligence)」そのものであり、人類が長年外部化できなかった“思考”を外に出す技術です。人間の欲望が尽きない限り、「知性(Intelligence)」への需要は無限です。だからこそ、AIの需要も止まりません。

(中略)

一方で、市場は常に短期志向です。AI関連銘柄も調整局面に入ることがあります。しかし、長期ストーリーが崩れていない限り、それはむしろ好機です。短期的な価格の揺らぎを恐れるよりも、構造的な変化を見逃さないことのほうが重要です。

私が「AIはもう終わった」と考える時が来るとすれば、それは利益が減ったときではなく、技術の進歩が止まったときです。現時点ではむしろ進歩のスピードが上がっており、その勢いが衰える兆候はありません。したがって、AIの時代はこれからが本番だと見ています。


(後略)

出所:メルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」2025年11月14日配信号「米国株!AIはバブルではない理由 ? 「知性(Intelligence)」をめぐる新しい産業革命」

 この「米国株!AIはバブルではない理由 ? 「知性(Intelligence)」をめぐる新しい産業革命」と題された論考は非常に読み応えがあり、大いに参考になるものと筆者には強く感じられた。ぜひ、全文を読まれることをみなさんにおすすめしたい。

 この論考の全文はメルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」への購読登録後、最初の10日間の無料期間を過ぎたあと、WEB会員ページにて閲覧することができる。

(後編の記事「日本株は長期投資には不向きだが、暮らしやすいのが日本の良さ。日本に住みながら成長力のある米国株へ投資するのが日本人にとっての黄金の方程式だ!」へつづく)

(取材・文/井口稔 撮影/中野和志)

 

●ポール・サイ  ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。

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