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ドミニカで実感した資本市場の意義。少数の財閥が資本を独占し、資本市場が閉ざされた国ではイノベーションが起きにくく、スタートアップも育たない

2025年11月5日公開
ポール・サイ
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 先日、私は友人の結婚式でドミニカ共和国を訪れました。

 ドミニカ共和国は青い海と陽気な音楽に包まれた美しい国ですが、経済のしくみを観察すると、資本市場の未発達が国の成長の大きな制約になっていることに気がつきました。

ドミニカ共和国のビーチドミニカ共和国のビーチ 出所:写真AC

ドミニカはカリブ海地域の中で高い成長率を誇るが、そこには大きな課題もある

 ドミニカ共和国は、カリブ海地域の中でも高い成長率を誇る国です。

 GDPの約7割をサービス業が占め、観光業と海外在住ドミニカ人からの送金が外貨収入の柱となっています。

ドミニカ共和国のGDPの推移ドミニカ共和国のGDPの推移(米ドル換算値) 出所:世界銀行

 しかし、貿易収支は慢性的な赤字であり、輸入超過を観光収入、海外からの送金、外資による直接投資で補っています。

 さらに財政赤字も続いており、政府は国債発行や国際機関からの借入れで資金を調達しています。

 要するにドミニカ共和国は、国内資本の自立的循環が弱く、外部資本に依存する構造になっているのです。

資本市場の開かれたアメリカではアイデアが富に変わり得るが、資本市場が閉ざされたドミニカではアイデアが富に変わらない

 ドミニカ共和国には実質的なベンチャーキャピタル市場が存在せず、株式市場もまったく活発ではありません。新しい企業が資金を調達して成長する道が閉ざされているため、起業家精神が十分に活かされにくいのです。

 これに対して、アメリカでは資本が参入障壁にはなりません。

 アメリカで起業した私の弟は、パワーポイントと履歴書、そして、自分に対する信用だけで、まず約200万ドル(約3億円)の資金を調達しました。そして、その後の事業拡大の過程で2500万ドル(約38億円)を追加で資金調達できたのです。

 この私の弟の事例は、米国の資本市場が個人の実力とアイデアを信頼し、柔軟に資金を供給するしくみを持っていることを示しています。

 つまり、アメリカでは「資本がなくてもアイデアがあれば挑戦できる」ということです。

 アメリカでは資本市場が社会の血流として機能しているのです。

ドミニカでは少数の財閥が資本を独占し、経済の新陳代謝がなかなか進まない

 ドミニカ共和国では、資本はごく少数の財閥に集中しています。

 代表的なのがヴィチーニ家とセントロ・クエスタ・ナショナル(CCN)という財閥です。

 ヴィチーニ家は砂糖産業を起点に、エネルギー・不動産・メディアなどに事業を拡大し、国全体に強い影響力を持っています。もう一方のセントロ・クエスタ・ナショナルはスーパーマーケット「ラ・シレナ」を中心として、小売・流通を支配しています。

 この両財閥は内部留保した自己資金で事業を拡大しており、外部から資金を調達しないため、資本市場が機能する余地は小さいです。結果として、新規参入者は資本市場にアクセスできず、経済の新陳代謝がなかなか進まない状況になっています。

資本市場の目的は投機の場を提供することではなく、社会全体の資本を効率的に配分することにある

 このようなドミニカ共和国の資本市場の状況は、どのような示唆を与えてくれるでしょうか?

 日本の投資家が理解すべき重要な点は、資本市場の目的は投機の場を提供することではなく、資本を効率的に配分することにある、ということだと思います。

 株式市場は、社会全体の富を「どの企業が最も生産的に使うか」を判断し、資金を流す装置です。利益を生み出す企業には資金が集まり、非効率な企業からは資金が離れます。そして、これが経済の健全な循環を生むのです。

 この観点から見ると、健全に機能する資本市場では、ファンダメンタルズに基づいて正しく資本を配分する投資家が報われると考えられます。

 つまり、株式投資は単なる短期的な値動きのゲームではなく、社会全体の資本配分を支える重要な公共的役割を持っているのです。

結論:資本市場は国の未来を決めるものであり、株式市場で投資を行うことは国の未来づくりに参加する行為である

 ドミニカ共和国のように資本市場がほぼ閉ざされているような国では、富は一部の層に集中し、イノベーションは起きにくいです。

 これに対して、アメリカのように資本市場が開かれた国では、努力とアイデア次第で誰にでもチャンスがあります。

 だからこそ、株式市場で投資を行うことは国の未来づくりに参加する行為であり、正しい資本配分を行う投資家が経済の発展とともに報われると言えるのです。

 

●ポール・サイ  ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガ「米国株&世界の株に投資しよう!」を配信中。11月12日に初の著書『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』発売。

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