「勝者のゲーム」と資産運用入門

日米欧の金融政策の方向性は現状変わらず。
焦点は6月の欧州中央銀行(ECB)での金融会合だ太田忠の勝者のポートフォリオ 第241回

2026年5月19日公開
太田 忠
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日経平均は半年という史上最速の期間で5万円から6万円への大台替わり

 日経平均株価は初の6万3000円台乗せ、TOPIXも最高値更新に迫る―。

 5月13日(水)の東京市場。日経平均は529円高となり終値で6万3272円と初の6万3千円台に乗せて取引を終了。4月27日(月)に初の6万円台乗せの記録を作ったばかり。日経平均がわずか半年という史上最速の期間で5万円から6万円への大台替わりをしたが、このペースでいけば1カ月半後の6月下旬には7万円台乗せとなる上昇スピードである。高市政権において「日経平均は7万円を目指す」と私は述べてきたが、昨年10月の政権発足から1年も経たないうちにこのシナリオが実現するならば、長期政権が期待される高市首相の時代に「日経平均10万円」という夢物語が起こるかもしれない。いやいや、夢物語ではない。なぜなら政権発足時の5万円から射程圏内の7万円まで40%の上昇率。そして7万円から10万円までは43%の上昇率。率で見れば同等の意味を持つ上昇だからだ。

 このところ日経平均への寄与が高い値がさ半導体関連が上昇しているのが目につく。最近のコラムにおいてNT倍率の上昇を話題にしてきた。日経平均の上昇スピードがTOPIXを大きく上回る状態のことだ。この動きを演出している投資家は誰か? 他ならぬ海外投資家である。4月の買越額は5兆6964億円で月間としては過去最大を更新。これまで月間最大だった昨年10月の3.4兆円を大幅に更新した。ともに高市政権下での記録である。ちなみに過去3カ月間の2月から4月にかけて日本株には6.2兆円の海外マネーが流入。3カ月間としては、安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」への期待感から海外投資家が日本株買いに積極的に動いた2013年3月から5月の5.5兆円を超えている。

株式市場の動向を占うのに欠かせないのが中央銀行による金融政策だ

 そうした中、株式市場にとって重要なのが中央銀行による金融政策だ。「株式市場の方向性を決めるのは、景気でも業績でもなく金融政策である」というのが私の一貫した考え方であるが、イラン情勢による原油価格高騰が多方面に影響を及ぼしており「インフレが再燃するのでは?」との懸念が出てきている。中央銀行の役割は経済情勢から適正な金利水準を見極めて最適化を図ることであるが、再びインフレとなれば金融政策の見直しが必要だ。なぜなら、現況下では「コロナ禍時代に苦しめられたインフレ状況が落ち着く」ことを前提に金融政策が行われているからだ。

 主要国の直近の金融政策は4月に決定されたものである。米連邦準備理事会(FRB)は3会合連続で政策金利を据え置いた。現在のFF金利は3.50〜3.75%であるが、米連邦公開市場委員会(FOMC)の参加者のうち4人が反対票を投じた。ミラン理事が今回も利下げを求めたことは既定路線だったが、クリーブランド連銀のハマック総裁、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁、ダラス連銀のローガン総裁の3人は金利据え置きを支持したものの、声明文に将来的な金融緩和を示唆するような文言を盛り込むことに反対。FOMCで4人が反対したのは1992年以来のことだ。パウエル議長は記者会見で足元の景気について「堅調に拡大している」と述べたが、「中東情勢の混迷で先行きは極めて不透明」とコメント。パウエル氏は5月15日に議長としての任期切れを迎え、ケビン・ウォーシュ氏が後任として就任する。中央銀行の独立性を重んじ、中立的な立場で金融政策を実行することが期待される。

FRBは利下げ、日銀は利上げシナリオが続く中、注目されるECBの動向

 一方、日銀も3会合連続で政策金利を0.75%に据え置いた。中東情勢の緊迫に伴う原油高が物価を押し上げ、景気にも下押し圧力がかかると予測。経済・物価への影響を見極めるため、金融正常化を目指した次のステップである利上げを見送った。日銀においても金融政策を決める9人の政策委員のうち、中川、高田、田村の3人の審議委員が金利据え置きに反対。物価の上振れリスクが高まりから政策金利を1.0%に引き上げることを提案したが反対多数で否決された。

 2月末に突然起こったイランを巡る中東情勢緊迫化という地政学リスクに晒されながらもFRBは利下げ継続、日銀は利上げ継続とのシナリオは崩れていない。インフレにまつわる不確実性はコロナ禍以降も度々直面しているが、「インフレからの脱却」との流れが変化して「インフレ抑制」を意識せざるを得ない状況に日米の中央銀行は至っていない。だが、例外がある。それはヨーロッパの中央銀行であるECBだ。

ECBの次回の6月会合における利上げの要否の判断は重要なものになる

 ECBのラガルド総裁は3月の講演で「利上げをためらうことはない」と話したため、市場では4月にも利上げに動くとの観測が高まった。ECBは2022年のロシアによるウクライナ侵略後に急速に進んだインフレを「一時的」と判断。その後の利上げが後手に回った苦い経験がある。同じ轍を踏まないとの意思表示だ。だが、4月の金融会合では利上げを見送り、7会合連続で政策金利を2.0%に据え置くことを決定。「利上げの可能性についても長時間にわたり深く議論した」とラガルド総裁は記者会見で説明。金融引き締めの用意があることも示唆する発信となった。注目されるのは「中東情勢の影響を見極めるのに6月が適切な評価のタイミングになる」とラガルド氏が発言したことだ。利上げの要否の判断時期として次回6月会合に照準を合わせた。

米経済指標もインフレ懸念が台頭。利上げに動けば相場の重要な転換点に

 先週発表された米国の経済指標は4月のCPI(消費者物価指数)が前年比+3.8%と23年5月以来の上昇率。4月のPPI(卸売物価指数)も前月比+1.4%と予想の+0.5%を上回ったためインフレ懸念が台頭。「FRBは年内に利上げに動く」との観測も市場参加者の間で浮上しており、長期金利は一時4.50%まで上昇して2025年6月以来の高水準となっている。

 現在のマーケットはFRBが2024年9月に利下げを開始して「金融相場」となり、それが株式市場の上昇の原動力になっている。もしFRBが利上げすれば金融相場はどうなる? 株式市場はどうなる? 皆さまにも考えていただきたい。マーケット参加者として最も大事な当面の重要課題だと私は考えている。

勝者のポートフォリオの設定来パフォーマンスは好調の日経平均を凌駕

 さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言を行う「勝者のポートフォリオ」。2021年10月にサービスを開始して以来5年目に突入し、2026年5月7日時点の累計パフォーマンスは+184.4%。3月はマーケット全体の下落の影響を受けたが4月からは大きく反発。2月に記録した最高値+186.1%を再びうかがう展開となっている。1昨年来+125.5%、昨年来+68.5%といずれの期間でもマーケット指標を圧倒。私の運用する「勝者のポートフォリオ」連動型個人ファンドも6億8533万円(昨年来+3億3510万円、+96%)となり、年初来でもすでに1億3369万円増(+24%)という凄まじさだ。「高市政権で日経平均は7万円を達成する」というのが私の見方だが、目標の自由億(10億円)はすでに射程圏内に入ってきた。

「勝者のポートフォリオ」の設定来パフォーマンスの推移と主要指数との比較

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●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供による「勝者のポートフォリオ」メルマガ配信などで活躍。

 

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