「勝者のゲーム」と資産運用入門

日経平均株価はいくらまで上昇するのか?
企業収益で見たバリュエーションから推測する太田忠の勝者のポートフォリオ 第243回

2026年6月2日公開
太田 忠
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先週は日米の主要指数の5つが揃って最高値更新。株式市場はお祭り騒ぎ

 日米の主要株価指数が揃って最高値更新。マーケットはFOMOからFEMOへ―。

 先週の株式市場は凄まじかった。米国市場ではNYダウ、S&P500、ナスダックの主要3指数が連日で最高値更新。そして、日本市場でも日経平均株価とTOPIXが最高値更新となった。ありそうでめったに見られない上昇局面での主要5指数揃い踏みでの最高値更新。株式市場はお祭り騒ぎの真っ只中。AI・半導体関連が相場を牽引する傾向はさらに強まったとの印象を受ける。

 前回のコラムでは『日経平均6万円超えでもバブルにあらず。企業収益から見たバリュエーションは適正値』と題して重要なポイントを述べたが、今回は『日経平均はいくらまで上昇するのか? 企業収益で見たバリュエーションから推測する』がテーマである。続編を読むつもりでお付き合い願いたい。

日経平均6万6329円をつけた5月29日のPERは17.9倍でバブルにあらず

 株式市場におけるバブルとは「ファンダメンタルズでは説明できない株価」のことを指す。経済や企業の実態を超えた株価形成はいずれ崩壊する。ここで大事なのが株価上昇自体は「バブル」ではない、ということだ。株価は収益力を反映したものでありそれを計測するのがバリュエーションだ。最も広く使われている指標がPER(株価収益率:利益に対して株価が何倍に買われているか)だ。PERが高ければ割高、低ければ割安になる。1980年代から現在に至るまでの日経平均のPERを分析した結果、「太田流バリュエーション解釈」では日経平均において「15倍が適正基準値、20倍を超えればバブル発生」と定義していることは前号で述べた。

 ところが、中東有事前2月27日(金)の5万8850円におけるPERは20.9倍の水準だった。バブル基準の20倍を超えていたのだ。「もはやバブルではないか」との疑問が湧いてくるが妥当な株価水準である。なぜなら今後の利益増加を前提に株価が先行して上昇する現象だったからだ。日経平均のEPSは昨年12月末時点で2650円。2月末2815円。そして4月末に2920円、5月22日(金)の時点で3513円まで増加。要するに2026年3月期の上方修正を見越し、さらには2027年3月期の利益増加を織り込みにいっていたのだ。5月22日のPERは18.0倍であり20倍を割っている。日経平均は6万3339円と有事前の高値5万88850円を上回っているが、株価上昇よりも利益成長の方がスピードは速くなっている。それがPERの低下をもたらしている。さらに先週末5月29日(金)の6万6329円ではEPSは3699円、PERは17.9倍となった。株価がさらに上昇したのに利益はもっと伸びていることがわかる。

利益とPERで推測する日経平均の上昇シナリオ。8万5000円の可能性も

 「日経平均はいくらまで上昇するのか?」という問いに対して5月20日(水)に開催した「勝者のポートフォリオ」のWebセミナーでの私の解説を紹介しよう。基準は 5月18日(月)時点の日経平均6万815円、EPS3495円、PER17.4倍。3つシナリオを提示した。

〈シナリオ 1  利益水準そのまま、PER20倍〉
3495円×20倍 = 69900円 ≒ 70000円。PERが20倍に拡大するだけで7万円達成   
〈シナリオ 2  利益水準10%アップ、PER20倍〉
3845円×20倍 = 76900円。利益が10%増えれば7.7万円レベルに                    
 〈シナリオ 3  利益水準10%アップ、PER22倍〉
3845円×22倍 = 84590円。利益10%増、PERが22倍に拡大して8.5万円レベルに

 5月18日時点と比較すると5月29日の日経平均は9.1%上昇、EPSは5.8%上昇、PERは2.9%上昇となっている。EPSもPERも増加することで株価の上昇が起こっていることがわかる。すなわち「シナリオ2」に近い形で動いていることになる。利益水準が10%アップしてPERが19倍になれば日経平均は7万3000円、PERが20倍になれば7万7000円はすでに既定路線。利益成長をさらに先読みし、現在の金融相場でPERが22倍まで拡大し、市場参加者たちが許容すれば8万5000円になる可能性を秘めているということだ。

バリエーションに割高感はない。マーケットはFOMOからFEMOに移行か

 マーケットは「FOMOからFEMOへ移行」との見方が広がっている。先週の米国市場ではメモリー大手のマイクロン・テクノロジーに買いが集中。5月26日(火)に19%高の895.88ドルとなり時価総額は初めて1兆ドルを超えた。きっかけはUBSのレポートだ。メモリー需要の強さから収益見通しを上方修正。目標株価を535ドルから1625ドルに一気に引き上げた。マイクロンは今年に入って株価が3.1倍となっている。だが、マーケットコンセンサスの業績予想は上方修正されておりバリュエーションに割高感はみられない。現在のPERは8倍台であり、昨年末時点(8.3倍)とほぼ同じレベルにある。

 この傾向は半導体銘柄全体でみても変わらない。SOX指数のPERは25倍台。今年に入って80%あまり上昇しているにもかかわらず昨年末(26倍台)から大きく変わっていない。著名ストラテジストのエドワード・ヤルデニ氏は、現在の株式市場の姿をFEMO(Fabulous Earnings Momentum:素晴らしき収益モメンタム)と表現。ヤルデニ氏は「FOMO(Fear of Missing Out:買い遅れる恐怖)は投資家が株に殺到してPERを押し上げる現象であるのに対して、今回のラリーでは予想利益の増加が牽引してむしろPERは低下している」「FOMOとは異なる健全な相場上昇だ」と述べている。

SBGの株価は4日間で60%近く上昇し、時価総額がトップのトヨタに迫る

 国内市場でもマーケットはAIを中心とした「スーパーサイクル」入りとの声が出ており、それは時価総額にも如実に表れている。ソフトバンクグループ(SBG、9984)が5月25日(月)に7カ月ぶりに上場来高値を更新し、翌日も急騰してわずか4日間で60%近くも上昇。オープンAIのIPO観測が伝わったのをきっかけに買いが止まらない。時価総額は一時45.0兆円とトップのトヨタの48.0兆円に迫った。SBGが運用するAIファンドのNAV(純資産総額)は60兆円を超えており、株価は25%ディスカウントの状況だ。6月中にも逆転劇が見られるかも知れない。またキオクシア(285A)も株価上昇で時価総額が36兆円を超えとなり、三菱UFJ(8306)を逆転して第3位に躍り出た。今のマーケットを象徴する動きである。

 さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして提供する「勝者のポートフォリオ」は日本株を中心とした個人投資家向けの投資助言サービスである。毎週のマーケット解説・投資戦略のメルマガ配信に加え、毎月恒例のWebセミナーの開催とスキルアップを目的とするスペシャル講義を提供している。

日経平均のバリエーションの理解を深め、今後の投資戦略を立案しよう

 直近のWebセミナーは5月20日(水)20時から開催した。テーマは『日経平均6万円達成。日本株はバブルなのか? 現在と将来のバリュエーションを検証する』。すでに会員ページにセミナーの録画動画をアップしているので参考にしてほしい。

 次回のWebセミナーは6月17日(水)20時より開催予定である。テーマは決まり次第、皆さまにお知らせしたい。投資戦略だけでなく、個別銘柄の話やすべての質問にお答えするQ&Aコーナーもあり盛りだくさん。投資のヒントが満載である。10日間の無料お試し期間を使えば誰でも参加可能である。毎回参加者は300名近くのビッグイベントとなっており、奮ってご参加願いたい。

 また、スペシャル講義は投資スキルを身につける場として62本もの講義動画をリリースしている。個人投資家にとって必須のリスク管理、運用力を上げるためのマーケットサイクル投資法、恐怖指数の活用、システマティックリスクの対処法、ヘッジファンドの実態などを詳しく解説。ぜひとも参考にしていただきたい。

●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供による「勝者のポートフォリオ」メルマガ配信などで活躍。

 

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