「キオクシアにあらずんば株にあらず」だった今年前半戦の日本株市場
全国1000万のキオクシアファンの皆さん、元気ですかー!
ということで皆さんの大、大、大好きなキオクシア(285A)。「キオクシアにあらずんば株にあらず」というのが今年前半戦の日本の株式市場だった。その「ズンバ・キオクシア」。今回、改めて分析して分かったことがキオクシアの信用取引は「一攫千金を夢見るビンボー投資家(金融資産の少ない投資家)が金を失うゲーム」になっているという厳しい現実だ。
キオクシアの株価の最高値は6月22日の11万2700円。時価総額は63兆円に達して日本の上場企業の堂々トップに躍り出た。第2位のトヨタ自動車(7203)は42兆円と遥か下に見下ろす存在。キオクシアの株価が急騰したのは4月に入ってからだ。将来性を楽観視したマネーがAI・半導体株に一気に流入して米国SOX指数と韓国KOSPIが爆騰。日本ではキオクシアがその象徴銘柄として脚光を浴びた。「新しい時代がやって来た!」「オールドカンパニーよ、さようなら」とまで言われた。個人投資家による信用取引は活発化。その筆頭がキオクシアだ。7月3日時点での信用買い残は1兆863億円と2位ソフトバンクグループ(SBG、9984)の2387億円に大差をつけ、3位フジクラ(5803)の1352億円、4位任天堂(7974)の978億円、5位三菱重工業(7011)の952億円など霞んで見えるほどだ。
キオクシアの信用取引が人気化した理由は異常なほどのボラティリティ
どうしてこれほどまで人気化したのか? それはズバリ「100株の取引でも1日50万円は稼げるぞ!」という値動きをするからである。もしあなたが手元に350万円あれば現物株は買えないが信用取引を使えば「1日50万円稼ぐ」ゲームに参加できる。1日で50万円は個人投資家にとっては大金だ。こんなオイシイ取引ができる。参加しない手はない。
ところがその魅力的であるはずの「値動き」は度を超えていた。今年のキオクシアの株価チャートを確認していただきたい。1月~3月までの緩やかな上昇(局面①)、4月~6月までの急騰(局面②)、7月~8月現在までの急落(局面③)の3つにはっきりと分かれる。ボラティリティを局面ごとに検証すると前日比変動率(絶対値)では順に4.70%、5.99%、7.90%。高値・安値レンジ(始値比)では6.30%、7.95%、10.46%。同(終値比)では6.45%、7.80%、10.84%との結果が出た。一般的にボラティリティが高いとされている「3%」の2倍~3倍である。「1日に50万円は稼げるぞ!」との誘惑に駆られるのも十分頷ける。
1日でも思惑と反対に動くとロスカットを余儀なくされるほどの値動き
手持ち資金が少なくても信用取引を使えばトレードできる。「値がさ株こそ、その中でもキオクシアこそターゲットだ!」となる。各局面の信用取引状況を週間ベースで見ると興味深い結果が出た。局面①の緩やかな上昇での信用倍率の平均値は7.74倍、局面②の急騰では初動の4月10日に1.90倍に急低下し、6月26日には27.77倍に急上昇。局面③の急落では高値から半値の5万6350円を付けた7月17日に36.75倍に一段と上昇し、7月30日の安値3万6020円(高値から68%下落、半値から36%下落)を迎える。株価が半値になったことで「170万円で取引できる!」と喜んで飛び込む姿がまざまざと浮かぶ。
トレンドと反対のポジションは大やられだ。だが、トレンドに合致したポジションも日によって大やられなのが日々の値動きから明白に読み取れる。要するに、ポジションを保有して1日でも自分の思惑とは反対に動くとキオクシアトレードから降りなければならない。無理して参加した投資家にはすぐに追証とロスカットが待っている。結局、やられるだけの大きなボラティリティが問題なのである。私は日頃から「リスク管理が重要だ」と個人投資家に言っている。特にリスクの高い個別銘柄では「リスク管理しなければ致命傷を負う」と。だが、キオクシアの場合はリスク管理すらできないほどの異常な値動きだ。
ストップ高やストップ安で取引ができない日がある流動性リスクも問題
「勝者のポートフォリオ」ではAI・半導体を期待分野の1つとして取り上げ、ポートフォリオに3銘柄を組み込んで大きな成果を出してきた。ただし「キオクシアだけは投資しないように」と私はアドバイスしてきた。実際のところ700名を超える会員の中でキオクシアの信用取引は皆無であり、投資したとしても現物の単元未満株の者だけだった。
キオクシアがヤバい理由をさらに書くと、①SOX指数や韓国KOSPIに振り回される(前日のSOX指数、今日のKOSPIの動きで勝手に乱高下)、②ファンダメンタルズは機能しない(好決算に反応しない。単に需給、ノイズ、投機に振り回される)、③ストップ高、ストップ安で取引できない(反対ポジションは損失確定売買すらできず悲惨)。③は恐ろしい。1日の売買代金が2兆円を超える銘柄なのに「売ろうにも売れない」「買い戻そうにも買えない」流動性リスクの発生する日があるからだ。私は長年、小型株アナリストをやってきたので小型株における流動性リスクの恐ろしさを骨の髄まで知っているが、まさか時価総額トップになった銘柄に流動性リスクがあろうとは…。経験したことのない世界である。
韓国ではSKハイニックス等のレバ型ETFが暴落し個人投資家に追証続発
そして、さらに恐ろしいニュースが出た。「キオクシア連動レバ型ETF、米で上場申請」がそれだ。日本では禁じられている個別株のレバレッジ型ETFが米国で次々に上場し人気化。異常なボラティリティのキオクシア、さらにトンデモ・ボラティリティになる。
韓国の株式市場を見るがいい。SKハイニックス、サムスン電子のレバ型ETFの暴落を受けて120万人の個人投資家に追証が発生、少なくとも36万口座が強制決済された。一攫千金に賭けていた運用資金の少ない、金融リテラシーの乏しい人たちが犠牲者となった。日本でも死屍累々になるのではないか? 日本の金融当局は黙認したままなのだろうか?
「異常なボラティリティ・キオクシアの信用取引は、一攫千金を夢見るビンボー投資家が金を失うゲームだ」をタイトルにしたが、もちろん金持ち投資家も手を出せば損失大だ。「年初10億円の金融資産の投資家が今や6000万円にまで減った」という話を耳にした。
あなたは大丈夫だろうか?
「キオクシアには手を出すな」と助言した勝者のポートフォリオは絶好調
さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションし、日本株を中心に個人投資家向けに投資助言サービスを行う「勝者のポートフォリオ」は快進撃が続いている。8月17日(月)時点の累計パフォーマンスは+208.7%と最高値を更新。7月は大きな下落に見舞われた中でも善戦したが、8月からは尻上がりに好調だ。
「勝者のポートフォリオ」の設定来パフォーマンスの推移と主要指数との比較 ※2021年10月1日スタート時からの手数料別のパフォーマンス。過去の実績であり将来の運用成果を保証するものではありません
勝者のポートフォリオでは、毎週のマーケット解説・投資戦略のメルマガ配信に加えて、毎月恒例のWebセミナーの開催とスキルアップを目的とするスペシャル講義を提供している。
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※記事中の数字は、過去の実績であり将来の運用成果を保証するものではありません。
●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしても活躍。DFRへのレポート提供による「勝者のポートフォリオ」、新サービス「投資プレミア講義&交流会」メルマガ配信などで活躍。

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