日米が円買いの協調介入を実施し、ドル円は163円台から155円台に
ドル円は163円台から一気に155円台。不意を突かれたFXトレーダーたち―。
7月31日の外国為替市場で日米両政府が円買いの協調介入を実施。協調介入は2011年の東日本大震災の直後以来15年ぶり。対ドルの円相場が1ドル=164円のレベルにまで迫り、およそ40年ぶりの安値水準となっていた。「歴史的な円安を阻止すべき」との考えが一致したことでの素早い動きだった。
東日本大震災では「有事の円買い」が起きたことによる円売りの協調介入だったが、今回のような円買いの日米協調介入はアジア通貨危機を受けた1998年の介入以来28年ぶり。複数の通貨当局がタイミングを合わせて実施する協調介入は、金融危機や大災害の発生時など極めて例外的な場面で発動するのが普通だ。今回のような平時の場面での協調介入は極めて異例の事態である。
行き過ぎた円安によるデメリットを是正するために協調介入を実行
歴史的な円安を阻止する理由は、行き過ぎた円安によるデメリットを是正するためである。トランプ大統領は事あるごとに円安を批判し、ベッセント財務長官もかねてから懸念を示していた。米国の見方はシンプルである。「ドル高になると(円安になると)日本の輸出が有利となり、米国経済にとってマイナスの影響が出る」との考えに基づいている。さらに言えば、トランプ大統領が打ち出している米国第一の貿易政策、すなわちトランプ関税効果を打ち消してしまうとの危惧があるからだ。米金融市場では通貨安と債券安が同時に進んでいる。円安が米国債売りに連鎖し金利高を引き起こす要因となる事態は避けたい。このところ米長期金利は4.6%台まで上昇しており、本来あるべき4%を切る水準からは程遠い。トランプ政権は11月に中間選挙を控えており住宅ローン金利の上昇などを避けたいとの思惑もある。
ベッセント財務長官の批判の矛先は日銀にも向けられている。「ビハインド・ザ・カーブ」。皆さんもこの言葉を知っているだろう。金融当局による経済政策への対応が遅れた状態を指す。景気後退期に後追いとして急激な金融緩和を行なったり、物価が急上昇しているにもかかわらず利上げが遅れたりしている場合に使われる用語だ。ベッセント長官は金融当局による金融政策の失態を非難する意味を込めて「日本はビハインド・ザ・カーブにある」と発言し、「日銀の利上げが本来の望ましいスピードから遅れをとっている」との主張だ。それ故の「円安、ドル高」であると。
日米欧の金融政策を今後3カ月スパンで考えることが株式投資家に重要
政府・日銀はゴールデン・ウィーク期間中にも円買い・ドル売りの為替介入に踏み切った。だが日本の単独介入では円安の流れを止められなかった。155円台まで進んだ円高は一瞬のことであり、すぐに160円台に戻った。今回の日米協調では米当局はユーロ売り・円買い介入を実施。対ドルと対ユーロという2つの基軸通貨を対象に強力なアシストを果たした。日本経済新聞のインタビューでベッセント氏は「多くのアジア通貨が円と連動している。1990年代のアジア通貨危機は大幅な円安が引き金となった」とコメント。強まる円売り圧力がアジア通貨へ波及する懸念も示した。
ここで大事な点がある。それは、今回の日米協調介入や昨今の経済情勢を巡って日米欧が今後どのような金融政策を行っていくかを株式投資を行う者としては考えておかねばならないことだ。私がすでに何度も言っているように株式市場の方向性は景気・業績ではなく金融政策によって決まる。6月の金融会合では米連邦準備理事会(FRB)は政策金利を据え置いたが、日銀と欧州中央銀行(ECB)は利上げを実施。7月は日米欧とも据え置きの無風状態だった。次回の9月に動きはあるのか? 10月は? 12月は? 今後3カ月スパンで何が起こるかを事前に準備することの重要性を指摘したい。私はすでに準備をしている。投資家として皆さんにも考えていただきたいのだ。本コラムでは日米欧の金融政策についてタイムリーに取り上げていきたい。ひとまずは8月下旬に開催されるジャクソンホール会議においてFRBのウォーシュ議長がどのような発言をするか注目される。何かが起こるジャクソンホール。パウエル前議長の発言はいつも投機的トレードの材料にされてきた。
市場への協調介入の影響は軽微。過去と比べて為替との連動性が薄れる
ところで今回の円高・ドル安による株式市場の影響はどう出ているのだろうか。株式市場全般ではほとんど動きは見られない。160円を超える円安から5円程度の円高となる155円程度の水準であれば、為替介入と言えども株式市場への影響は無視すべきイベントと捉えるべきだ。そもそも、為替水準で株式市場を判断する時代は終わっていると私は考えている。かつては「円安→企業業績向上→株高」「円高→企業業績悪化→株安」という単純なストーリーが機能していたが、もはや為替水準と株式市場の連動性は薄れている。
個別銘柄では上方修正を発表したトヨタ自動車(7203)をはじめとする自動車株、好決算の続く大手商社株などが円高を材料に売られているのが目についたが、これは単に為替イベントと決算プレイが交じり合って起きたものだ。いつも血眼になって収益機会を探しているヘッジファンドにとって格好のトレード材料となる。売り・買いの需給だけを頼りに短期勝負、1日勝負、1時間勝負、10分勝負で値幅を取りにくる「うぜぇ★やつら」。これに乗じて短期の個人投資家たちも一緒になって群がる。そうした値動きは単なるノイズであり、意味のない動きである。
勝者のポートフォリオの設定来推移は8月7日時点で+198.1%
日本企業は世界中でビジネスを展開しており、使用通貨は円、ドル、ユーロ、それ以外あまたという状況だ。世界中の拠点で多様な通貨を保有している。それを決算で円転換するだけなので、円高で目減りしてもあまり意味はない。意味があるのは単価や数量、コストなどのリアルな側面だ。この点を認識しておくことが長期スタンスのスマート投資家には必要だ。
さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションし、日本株を中心とした個人投資家向けの投資助言サービスを提供する「勝者のポートフォリオ」は快進撃が続いている。8月7日(金)時点での累計パフォーマンスは+198.1%と、7月15日(水)につけた最高値+205.0%が射程圏にある。7月は市場が大きな下落に見舞われた中でも善戦した。
「勝者のポートフォリオ」の設定来パフォーマンスの推移と主要指数との比較 ※2021年10月1日スタート時からの手数料別のパフォーマンス。過去の実績であり将来の運用成果を保証するものではありません
勝者のポートフォリオは、毎週のマーケット解説・投資戦略のメルマガ配信に加えて、毎月恒例のWebセミナーの開催とスキルアップを目的とするスペシャル講義を提供している。
次回Webセミナーは8月19日開催。信用取引の恐怖の本質を再確認する
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次回のWebセミナーは8月19日(水)20時から開催予定。テーマは『キオクシア暴落で信用トレーダーたちは阿鼻叫喚。信用取引の恐怖の本質を再確認する』。リスク管理すらしていないヤバい株式投資をしている個人投資家たちは見事に投げ飛ばされた。その実態に迫ってみるのがテーマだ。投資戦略だけでなく、個別銘柄の話やすべての質問にお答えするQ&Aコーナーもあり盛りだくさん。投資のヒントが満載である。10日間の無料お試し期間を使えば誰でも参加が可能である。毎回300名近いビッグイベントとなっており、奮ってご参加願いたい。
※記事中の数字は、過去の実績であり将来の運用成果を保証するものではありません。
●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしても活躍。DFRへのレポート提供による「勝者のポートフォリオ」新サービス「投資プレミア講義&交流会」メルマガ配信などで活躍。

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