2017年1月から「iDeCo」加入者は50万人も増加!
会社員と公務員の加入者急増で、2018年末には100万人到達も
2017年1月に「iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)」の加入対象が拡大され、原則、20~60歳までの現役世代は誰でも「iDeCo」に加入できるようになりました。それから、あっという間に1年3ヵ月が過ぎ、加入者が2.5倍以上に増加しています。
それまで「iDeCo」の加入者は、「自営業者」と企業型確定拠出年金や企業年金のない会社の「会社員」に限られていましたが、2017年1月からは新たに「公務員」、企業型確定拠出年金や企業年金がある会社の「会社員」(企業型確定拠出年金がある場合は、会社が「iDeCo」への加入を認めた場合のみ)、「専業主婦・主夫」も加入対象に加わりました。
これによって2016年末には30万6000人しかいなかった「iDeCo」加入者は、2017年9月には2倍に拡大し、2018年2月末時点で81万7000人となっています。このペースで増加すれば、2018年中にも加入者は100万人に達します。
急増している「iDeCo」加入者の内訳を見てみると、2017年1月から2018年2月までで「会社員」が29万6000人増、「公務員」が15万3000人増となっています。全体の増加分51万1000人のうち、約88%の44万9000人が「会社員」と「公務員」ですから、従来は「iDeCo」に加入できなかった「会社員」と「公務員」の高い加入意欲が伺えます。
いずれにしても、この1年3ヵ月で加入者が51万1000人も増えたのは大きな成果と言えるでしょう。こうした「iDeCo」の盛り上がりに寄与したのは、金融機関各社の取り組みのおかげでもあります。
2017年1月以降は「口座管理手数料」無料がスタンダードに!
商品本数で圧倒するSBI証券に、楽天証券が対抗
かつて、「iDeCo」(2017年以前は「iDeCo」という愛称がなく、「個人型確定拠出年金」としか呼ばれていませんでした)を取り扱う金融機関の戦略は、大きく以下の3つに分かれていました。
A)「口座管理手数料が高いし、投資信託の運用コストも高い」
B)「口座管理手数料は高いが、投資信託の運用コストは安い」
C)「口座管理手数料は安いが、投資信託の運用コストは高い」
Aが選択の対象外なのは明らかですが、BとCのどちらの金融機関を選ぶかは、なかなか難しい問題でした。しかも、こうした金融機関を比較するようなサイトもほとんどなかったため、多くの人は情報不足の状態で選ばざるを得ない状態でした。
こうした中でユーザーとしては、別の選択肢が欲しくなります。つまり、
D)「口座管理手数料が安く、投資信託の運用コストも安い」
という金融機関です。こうした魅力的な金融機関が登場し始めたのは、2016年6月に確定拠出年金法が改正され、「iDeCo」の加入対象が拡大された頃からです。
毎月支払う口座管理手数料は無料(当時は一定要件あり)であったものの、投資信託の運用管理費用(信託報酬)の高さがネックだったSBI証券は、2016年4月、運用管理費用(信託報酬)の低い投資信託のラインナップを一気に追加してきました。これによって、「口座管理手数料が無料(金融機関の分)で、投資信託も低コストで運用が可能」という金融機関を選べることになりました(SBI証券の投資信託の本数は現在63本)。
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⇒【SBI証券のiDeCo、手数料・メリットは?】口座管理料と加入時手数料が誰でもいつでも無料! 投資信託のラインナップが他社より圧倒的に豊富!
SBI証券のほかの金融機関もこの流れに追随することになります。楽天証券は口座管理手数料を原則無料とし、低コストの投資信託を絞り込んで提示するアプローチを取って、業界をあっと言わせました(キャンペーン開始後は、残高要件設定も1年積立すれば手数料無料の要件を満たす設定だった。楽天証券「iDeCo」の投資信託の本数は2018年4月時点で30本)。SBI証券は取扱商品本数が多すぎて「複雑さ」があることを、楽天証券は逆手にとったわけです。
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これ以降、りそな銀行や野村證券、みずほ銀行など各社が「条件つき口座管理手数料 無料」を打ち出したり、労働金庫連合会のようにiDeCoの商品ラインナップを一新した「新プラン」を提示したりと、魅力的なプランを提示する金融機関が登場し始めました。
今や「金融機関(運営管理機関)に支払う手数料は無料」「国民年金基金連合会や信託銀行の徴収する分の手数料のみ負担」というのがスタンダードになりましたが、そのきっかけは2017年1月からの「iDeCo」加入対象範囲の拡大だったのです。
「iDeCo」の商品数は10本程度に厳選、
低コスト投資信託をラインナップするのが標準に!
「口座管理手数料が無料で、投資信託の運用コストも安い」という「iDeCo」取り扱い金融機関の参入は、このあとも続きます。マネックス証券、イオン銀行、松井証券など「iDeCo」新規参入組は、いずれもこのスタイルで口座獲得を目指しています。
大和証券などのように、既存の「iDeCo」取り扱い金融機関でも、当初は「期間限定で口座管理手数料を無料」「条件つきで口座管理手数料を無料」だったところを、「無条件で無料」に切り替えているところが増えています。
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また、「iDeCo」取り扱い金融機関の競争の活性化によって、「iDeCo」の運用商品を厳選し、かつ運用コストの安いものをラインナップする流れも進んでいます。
2018年5月に施行となる確定拠出年金法の改正では、「iDeCo」の運用商品数の上限は35本になりますが、実際はもっと少ない商品本数しかラインナップしない金融機関が多くなっています。商品を10~15本程度に絞り込んで、低コストのインデックスファンドをずらりと並べるのが標準的なものとなりました。
かつては、「販売手数料が無料(ノーロード)」と「信託財産留保額が無料(解約時無料)」というメリットこそあれ、運用管理費用(信託報酬)が年率2%以上という投資信託がゴロゴロ転がっていましたが、今や「年0.15%~年0.5%以下」というところまで下がっています。以前の運営管理費用(信託報酬)が2%以上だった頃と比較すると、最安値ならコストが10分の1に引き下げられたことになります。
有名な金融機関のなかでいえば、最も後発で参入した松井証券がその典型です。定期預金を含む12本の厳選した商品のうち、日本株インデックスファンドである「DIAM DC 国内株式インデックスファンド」の運営管理費用(信託報酬)は0.155%(税抜)です。松井証券では、国内株のアクティブファンド(ひふみ年金)1本と新興国債券のインデックスファンド(三菱UFJ DC新興国債券インデックスファンド)1本を除けば、運営管理費用(信託報酬)はすべて年率0.5%以下に収まるほど、徹底した低コスト商品をラインナップしています。もちろん、松井証券の口座管理手数料は無料です。
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「iDeCo」の金融機関の選択肢は出尽くしたので、
商品ラインアップなどに注目して金融機関を選ぼう!
ここまでで紹介したように、ネット証券ではSBI証券に続いて、楽天証券、マネックス証券、そしてイオン銀行や松井証券などリテールビジネスに積極的な金融機関も「iDeCo」に参入しました。
2017年1月以前から「iDeCo」参入済みであった金融機関も、おおむね新プランを提示し終わっている状態です。言い換えれば、現在新たな「iDeCo」のプランを提示していない金融機関は、「iDeCo」には今後も消極的だと考えていいでしょう。
こうしたことから、「iDeCo」を取り扱う金融機関の選択肢はほぼ出尽くしたのではないかと思います。また、金融機関各社のプランから考えても、「iDeCo」では「口座管理手数料が安く(無料)、投資信託の運用コストも安い」という状態がもう完成形に近いと考えられます。
そうなるとここから先は、それぞれの金融機関による「iDeCo」運用商品の選択眼や、加入時の相談体制が金融機関選びで注目すべきポイントになるかもしれません。
バランス型ファンドとして、「高コストの投資信託」をラインナップし、投資初心者から多額の手数料をもらうという戦略を取っている金融機関がまだあります。あるいは「○資産均等」のような流行の商品をバランス型ファンドの選択肢としている金融機関もあります。
こうした商品は魅力的に映るかもしれませんが、「iDeCo」は中長期の投資を前提としており、ひんぱんに商品の入れ替えを行う性格のものではありません。このとき、20年後も30年後も、同じ商品のラインナップで運用が続けられるかどうかは、金融機関選びの際に注目すべきところでしょう。
今後、「iDeCo」に関連して注目されるものとしては、投資助言に近いサービスがあります。例えば、みずほ銀行や「お金のデザイン」などが提供しているようなポートフォリオ診断ツールです。理想的には、リバランスを自動実行してくれるツールも欲しいところですが、ここは投資助言や投資一任の法律規制がありますから、短期的には採用は難しいのではないかと思います。
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「もう少し様子を見てから加入」の期間はもう終わり!
今こそ「iDeCo」をはじめる良いタイミング!
口座管理料の無料や運営管理費用(信託報酬)の低コスト化などが進んだ今、「iDeCo」の金融機関選びについては、もう様子見の時期は終ったと考えていいでしょう。むしろ各社の取り組みがほぼ見えてきた今こそ「iDeCo」の口座開設、積立開始の好機です。
「iDeCo」ではまとまった金額を最初に入金することができません。常にゼロ円からのスタートで毎月(あるいは年単位で)掛金を積み立てていくことになりますので、「iDeCo」の口座開設が1年遅くなれば、1年分の積立額と掛金が全額所得控除という税制メリットを取り逃すことになります。
ぜひ、金融各社のサービスを比較・検討して、「iDeCo」口座を開設してみてください。「iDeCo」の加入対象範囲が拡大してお得な金融機関が増えた今こそ、「iDeCo」を始めて豊かな老後につなげていただきたいと思います。
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1995年株式会社企業年金研究所入社後、FP総研を経て独立。ファイナンシャル・プランナー(2級FP技能士、AFP)、1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)、消費生活アドバイザー。若いうちから老後に備える重要性を訴え、投資教育、金銭教育、企業年金知識、公的年金知識の啓発について執筆・講演を中心に活動を行っている。新刊『読んだら必ず「もっと早く教えてくれよ」と叫ぶお金の増やし方』(日経BP社)が好評発売中。
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