資産運用の専門家「IFA」に相談すれば、
投資する金融商品の幅を広げることができる!
ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子です。今回は、日本にいながら「IFA」を通じてシンガポールや香港の金融商品に投資する方法をご紹介します。
「IFA(インディペンデント・ファイナンシャル・アドバイザー)」とは、特定の金融機関に縛られず、顧客のニーズを最優先した金融商品の提案やアドバイスを手掛ける、資産運用の専門家です。
この連載でも何度かお話ししていますが、シンガポールや香港には、日本で販売されていない魅力的な金融商品があります。そのため、「もっと資産運用の選択肢を増やしたい!」と考えるのであれば、海外でしか販売されていない金融商品への投資も、真剣に検討してみるといいでしょう。
しかし、海外の金融商品に投資するというと、「億単位の資金が必要なのでは?」「金融商品の専門的な知識が必要なのでは?」と尋ねられることがあります。そんなときに頼りになるのが「IFA」です。
海外の金融商品に投資するには、確かに、ある程度のまとまった資金が必要ですが、今回紹介する「IFA」を経由すれば、億単位よりはもう少し手の届きやすい金額で投資することが可能です。また、私は仕事で「IFA」とも付き合いがありますが、彼らの多くは金融機関で豊富な経験を積んでおり、高度な専門知識と提案力を兼ね備えた頼れる存在です。
これらのメリットがあることから、シンガポールでは日本よりも「IFA」が身近な存在としてよく知られているのです。
「IFA」と「FP」の違いとは?
投資を敬遠しがちな日本人こそ「IFA」を活用すべき!
日本でも、少しずつ「IFA」の存在が知られるようになってきましたが、まだ広くは浸透していない印象ですし、「FP(ファイナンシャル・プランナー)」との違いもわかりにくいかもしれません。
明確な定義はないようですが、「FP」が人それぞれのライフプランに合わせた資産設計(節約・家計管理などを含む)を専門分野とするのに対し、「IFA」は金融商品を用いた資産運用のアドバイス、メンテナンスに長けている、と認識しておけばいいでしょう。
「FP」も必要だと思いますが、私は資産運用を敬遠しがちな日本人こそ、その専門家である「IFA」に頼るようになればいいのでは、と思います。資産運用について「IFA」に気軽に相談するのが当たり前の世の中になれば、投資に対するハードルも下がるかもしれません。
ちなみに、シンガポールでは「I(インディペンデント)」がつかない「FA(ファイナンシャルアドバイザー)」という職種についている人のほうが、「IFA」よりも多いです。「FA」は、特定の保険会社の商品を主に取り扱い、保険の提案をメインに活動しています。
「IFA」は保険に限らず、より幅広い金融商品を仲介します。日本に住んでいる人が、シンガポールの金融商品に投資するのであれば、「FA」ではなく「IFA」を頼ることになります。なぜなら、シンガポール在住者以外は、原則としてシンガポールの保険(利回りの高い年金保険など)を買うことができないため、保険専門の「FA」ではあまり役に立たないからです。
「IFA」を利用することで、多額の資金がなくても
「プライベートファンド」などに投資できることも!
ここからは、「IFA」のメリットを詳しく紹介していきましょう。
「IFA」を利用すると、資産運用のアドバイスやメンテナンスをしてもらうことができ、資産形成をするうえで大きな助けになります。
「IFA」に相談することで、個人が金融機関で普通に買うことができない、特殊な金融商品を買えるようになる場合もあります。富裕層の資産を管理・運用する、金融機関の「プライベートバンキングサービス」も、「プライベートファンド」や「プライベートエクイティファンド」(※いずれも、資金を募る対象が限定されている、ハイリスク・ハイリターンなファンド)といった、特殊な金融商品を提供することで知られていますが、通常は資金が最低でも2億円程度は必要になります。しかし、「IFA」に依頼することで、そこまで多額の資金がなくても、「プライベートファンド」や「プライベートエクイティファンド」などに投資できる場合があります。
プライベートバンキングでは、資産運用に回せる資金が2億円あるなら、原則的にその全額を銀行に預け入れなければならないのですが、「IFA」にはそのようなルールがありません。利用者が「IFA」からのアドバイスを受けたうえで、「自己資金のうち、これくらいの割合なら、この金融商品で運用してもいい」と考えた分だけを、適宜、自己判断で投資に回すことができるのです。
たとえば、「プライベートファンド」はファンドマネージャーによって設定される最低投資額が異なり、一般に20万シンガポールドル(約1600万円)程度から始められるものが多くなっています。なかには、最低投資額が10万シンガポールドル(800万円)程度と、比較的ハードルが低いものもあります。
「適格投資家」の認定を受ければ、
さらに投資できる金融商品の選択肢が増える!
ちなみに、シンガポールでは「適格投資家(Accredited investors、略して「AI」)」に認定されると、5万シンガポールドル(約400万円)程度から「プライベートファンド」に投資できる場合が多いです。
シンガポールの証券先物法で定義されている「適格投資家」とは、日本円で2400万円程度の年収があるか、1億6000万円程度の資産(場合によっては不動産を含む)を保有する投資家を指します。シンガポールでは、「適格投資家」だと一般の投資家よりも優遇され、資産運用の選択肢が多くなるわけです。なお、シンガポール以外の国に住む人でも、前述の条件を満たせば「適格投資家」と認定されます。
「適格投資家」がなぜ優遇されるかといえば、信用力が高いからです。シンガポール政府には、収入や資産がない人に対して、リスクの高い金融商品を販売したくないという意図があるのでしょう。
「プライベートファンド」はたしかにハイリスク商品なのですが、リスクが高い商品には、当然高いリターンも付き物です。最近では、右肩上がりで上昇している英国の老人ホームなど、ヘルスケア業界に投資するファンドや、オーストラリアの「ランドバンキング」(開発需要のある未開拓地を小口化して販売。不動産投資の一種。リスクはかなり高め)に投資するファンド(※年利10%弱)などが、シンガポーリアンの間で大人気です。
シンガポールの「IFA」会社を探すなら、
シンガポール金融管理局に登録する「IFA」を選ぼう
「IFA」のメリットは、ここまでに紹介したように、資産運用の助けとなり、投資対象の幅が広がることの2点と考えておけばいいでしょう。
続いて、気になる「IFA」の手数料ですが、基本的に相談料に関しては無料です。利用者がファンドや保険などを購入した場合、「IFA」には金融機関からの仲介手数料が入るなど、コミッションベースの報酬体系になっているケースが主流です。
シンガポールの「IFA」に相談するには、「IFA」の会社を探すところから始めることになります。シンガポール金融管理局(=中央銀行、通称MAS)のサイト内には、「Financial Institutions Directory」というページがあるので、そこから「Financial Advisory」を選び、「Licensed Financial Adviser」を選択すると、「IFA」の会社の一覧を見ることができます。
サイトはすべて英語表記ですし、「IFA」にコンタクトを取ったとして、やりとりもすべて英語になります。ただ、なかには日本人がいる会社もあります。また、どの「IFA」を選べばいいのかを決めかねる場合には、その分野に詳しい日本のファイナンシャル・プランナーなどから紹介を受けるか、金融用語が分かる通訳に翻訳を頼んでみるのも手かもしれません。
また、やりとりは日本でできますが、基本的に契約をする際、一度はシンガポールに足を運ぶことになる可能性が高いでしょう。
日本で「IFA」を探すなら、金融庁の認可は必須!
証券会社と提携している「IFA」を活用するのも一案
「IFA」初心者で、シンガポールの「IFA」を探すのが不安ということであれば、まずは日本の「IFA」を活用してみるのもいいかもしれません。最近では、SBI証券や楽天証券などのネット証券会社と「IFA」が提携していることも多いので、利用しているネット証券経由で探してみるのも一案です。また、「IFA」を検索できる「IFAナビ」も便利です。サイトの中に金融庁の登録「IFA」のリンクもあるので、ちゃんと認可を受けているかも合わせて確認するとよいでしょう。
ただ、「IFA」も千差万別であり、スキルに差があるほか、人として合う・合わないも出てくるはずです。大切な資産について相談する相手なので、担当者は慎重に決めるようにしたいもの。個人的には、外債などのノウハウが豊富な、外資系プライベートバンクで働いた経験のある人などがベターだと思います。
日本でも、「IFA」は金融機関からのコミッションを収益にしている場合が多いですが、場合によっては相談料を取る会社もあるようです。念のため、事前に報酬体系なども確認をするといいでしょう。
さて、今回は「IFA」について紹介しました。個人での資産運用がなかなかうまく行かない人、そこそこ資金はあるけど、自分で運用するのが不安で専門家に任せたい人などは、ぜひ「IFA」という選択肢を検討してみてください。
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