「老後資金2000万円問題」は妥当な見方!
人によってはそれ以上に多額の自己資金が必要になる
シンガポール在住のファイナンシャル・プランナー、花輪陽子です。少し前の話になりますが、金融庁が「『老後資金』として、2000万円程度の蓄えが必要」といった内容のレポートを発表し、大変な話題になりました。その後の政府の対応が悪く、年金制度に対して国民の間に不信感が広がってしまったことは、みなさんもご存じのとおりです。
私は、2014年に厚生労働省で開かれた年金問題に関する検討会に、有識者の一人として参加しました。その際、必要な老後資金を夫婦の就労形態別に推計し、資料として提出しました。その資料は、今でも厚生労働省のサイトで閲覧できます。
資料では、たとえば「夫婦の片方がずっと厚生年金に加入し、もう片方が専業主婦(主夫)」というケースの場合、総務省の家計調査による平均的な生活費や、年金支給額の目安から割り出した老後の必要資金は、約1366万円となっています。
これは、退職して年金を受け取りながら生活する期間を、65~90歳までと仮定した場合です。今さかんに言われているように、人生を100年と見なした場合だと、必要資金は2000万円程度が妥当なところだと言えるでしょう。
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ただし、これはあくまでも目安であって、すべての人に当てはまる数字ではありません。「国民年金にのみ加入している自営業の夫婦」だと、65歳で引退した場合、不足額は4000万円以上に膨れ上がります。とはいえ、自営業は基本的に定年がないので、65歳以降も長く働けば、不足額を圧縮することは可能です。
また、今は共働きで、夫婦ともに厚生年金に長期にわたって加入しているケースも多いもの。その場合、年収などの要件次第で異なりますが、老後資金の不足額は2000万円より少なくなるでしょう。ただし、将来的に介護施設を利用することなども視野に入れると、まとまった貯蓄をしておく必要はあります。
単身者の場合は、ずっと厚生年金に加入していたとすると、65歳からの標準的な厚生年金支給額は、月額15万6500円程度。持ち家で住居費がかからなければ、何とか生活していけるかもしれません。しかし、やはり介護施設に入ることなどを考えて、1000万円以上は貯蓄しておいたほうが安心です。
さて、先ほど私はこうした情報を2014年に推計したと書きましたが、私だけでなく多くのファイナンシャル・プランナーが、それよりも前から、自力で老後資金を準備する必要性を発信し続けています。しかし、現役時代は住宅の取得や子どもの教育費など、何かと大きな出費が続くこともあって、老後資金を二の次と見なしてきた人が多かったように思います。
今回、金融庁がレポートを出したことで、多くの人が老後資金について考える機会を持てたことは、むしろ良かったのかもしれません。
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シンガポール人も老後資金に不安を感じている
多くの人は月収の3割以上を将来のために貯蓄する!
ところで、いま私が住んでいるシンガポールでも、多くの人にとって老後資金の問題は懸案事項です。シンガポールでは一般的に「過不足なく老後生活を送るためには、約1億円が必要」と考えられています。日本以上にハードルが高いですね。
シンガポールの公的年金制度は、相互扶助の精神がベースになっている日本の「賦課方式」とは異なり、「積立方式」となっています。賦課方式では、現役世代の支払った年金保険料が、現在の年金受給者に給付されます。つまり、自分の支払った分が自分のところへ戻ってくるわけではありません。私たちが将来受け取る年金は、その時点の現役世代が負担した年金保険料からまかなわれます。日本では少子高齢化が進んでいるため、この方式には無理が生じており、今後も年金支給額の削減などが進められることは既定路線です。
一方の積立方式は、自分が現役時代に貯めた分を、自分で受け取る仕組みです。シンガポールには、医療費、持ち家取得、老後生活に備えることを目的とした「CPF(中央積立基金)」と呼ばれる公的制度があります。この制度により、55歳以下の人は給与の20%を、政府の管理下にある個人の口座に強制貯蓄することになっています。加えて、雇用者が給与の17%を拠出することになっているので、合計で給与の37%が毎月強制貯蓄されていきます。なお、このCPFには、一般の預金と同じように金利がつきます。
貯めたお金は住宅取得や医療費などとして使うこともあるので、これだけで老後の生活を支えるのは困難です。そのため、多くの人がCPFとは別に給与の15~20%程度を老後資金のために積み立てたり、運用したりしています。
ちなみに、シンガポールの世帯月収の中央値は約70万円で、日本よりもずっと高額です。シンガポールの人々は、そのうちの3割以上を将来のために貯めている形です。
賃金カットされることなく67歳まで働けるので
高齢になっても働き続けるのが当たり前
月収が高いといっても、物価も高いシンガポールで、毎月これだけの金額を老後資金に回すのは大変です。そのため、多くのシンガポール人は共働きですし、高齢になっても働くのが当たり前です。
シンガポールの企業の一般的な定年は62歳ですが、雇用主は従業員に対し、67歳までの継続雇用を申し出る義務があります。継続雇用の従業員に対し、賃金を大幅にカットすることも認められないため、高齢になっても働きやすい環境です。
もちろん、普段から節約している人も多いです。シンガポールは外食費が高いのですが、自炊をすれば食費を切り詰めることはそれほど難しくありません。また、マイカーについては税金が高く、持つと維持費だけで月20万円くらいかかってしまうと言われることもあり、移動は公共交通機関を使用する人がほとんどです。
ただし、節約しづらい費目もあります。代表的なのが教育費。ローカルの学校に通い、国内の大学に進むのであれば、日本でずっと公立の学校で学んだ場合と同じくらいの教育費で済みますが、国際色豊かなシンガポールでは、海外の大学に進学する子どもも多くなります。留学となると、渡航先によっては莫大な出費を覚悟しなければなりません。
また、共働きだと、家事や子どもの学校・習い事の送迎などをホームヘルパーに任せる家庭も多いのですが、フル活用すると年間100万円弱の出費になってしまいます。
このように、何かとお金が出ていくなかでも、出費にメリハリをつけ、若いうちからしっかり老後資金について考えているのが、シンガポールの人たちのすごいところです。元々、年金だけに頼れないという意識が強いからなのでしょう。日本では、年金だけで十分生活できていた時代もあったので、認識の甘さがあるのかもしれません。今は状況が大きく変わっているわけですから、シンガポールの人たちの姿勢を見習ってみるのも得策です。
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ただ、シンガポールもいい部分ばかりではありません。先ほど、シンガポールの世帯月収の中央値は約70万円と紹介しましたが、もちろん、それよりもグンと収入が少ない世帯も多いです。収入が少なければ、強制貯蓄で貯められる金額も少なくなるので、日本以上に厳しい老後生活になることが予想されます。日本では、少額でも年金を一生受け取ることができますが、シンガポールの年金は使い切ってしまえばそれで終わりです。また、今後物価や医療費が高くなる可能性もあるかもしれません。それを考えると、病気がちで収入が少ない人など、社会的弱者を救済する機能はかなり手薄だと言えるでしょう。
公平ではあるものの、自己責任の側面が強いシンガポールと、相互扶助の精神が貫かれる一方で、現役世代も退職世代も共倒れになりかねない日本。みなさんはどちらがいいと思いますか?
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