夫婦の老後に2000万円の蓄えが必要とした金融庁の金融審議会の報告書が話題になっています。
長寿はおめでたいことですが、長生きすればするほどお金がかかるのも事実です。今回は、人生100年時代にどう備えればよいのかを考えてみました。
金融審議会の報告はおかしくない
まず、2000万円の蓄えが必要となる前提についてみてみましょう。退職後の夫婦の家計状況が前提になっています。夫65才以上、妻60才以上の無職世帯の家計は、収入が年金中心で月21万円程度。一方で支出は月26万円程度ですから、およそ5万円が不足します。持ち家かどうか、あるいは、健康状態などによっても個人差がかなりあります。贅沢せずに夫婦で26万円でなんとか暮らせるという前提は議論の余地がありますが今回は、不足とされる毎月の5万円を株式運用の力で解決できないかという視点でコラムを書きました。
年間60万円の不足が30年続くため単純に1800万円が足りないことになります。医学の発達で95才まで生きるという前提が現実的になっている今、35年を前提にすれば2000万円あっても足りないということになります。
2000万円は切り崩す前提。配当があればほぼ減らない!
2000万円を30-35年で切り崩してゼロになる時が死ぬ時であるという前提なのですが、株式運用をすれば配当収入がいただけます。
株式投資というものは、一度、購入してしまえば、企業が永続的ですので、基本的に、購入後のメンテナンスなどのキャッシュアウトは必要が全くありません。企業が続く限りインカムゲインは永続的に入ってきます。
長期で考えると受け取り配当が元本を大きく超えるわけですから、株式投資はした方がよいでしょう。現実離れしているわけではなく、今20才の方が80年生きるのであれば、5%の配当の80年分、元本の何倍もの配当が得られます。子孫に相続すれば子孫にも配当が入ってきます。キャッシュアウトが必要なく、死ぬまで、あるいは死んでからも子孫が配当をもらい続けるだけです。
高配当ポートフォリオ戦略が最良
不足分の毎月5万円を株式運用の配当で補ってみましょう。いくらの元本が必要でしょうか。
仮に5%の利回りの株式を10-20銘柄のバスケットで組めば1200万円の蓄えであっても、年間配当で60万円の収入が期待できます。しかも、この前提では、金融庁の報告書にあるように、資産を切り崩す心配もありません。配当だけしか消費しないのですから。元本部分は株価の変動はありますが、保有株数は一定です。
高配当銘柄群への投資が可能であれば、2000万円ではなくて1200万円でも十分である、ということになります。
この議論は現実的です。何故ならば、現状のマーケットでも配当利回り5%以上の銘柄は80銘柄程度あります。あるいは、J-REITなどでは5%を上回る利回りは珍しくありません。
5%という利回り水準、あるいは配当の水準が30年後もあるかどうかは確約できません。しかし、成熟化する経済においては配当性向(年間利益に対する配当の割合)も上昇していくと考えるのが自然です。
このような高い配当銘柄やRIET銘柄で構成されるポートフォリオで年間60万円を得るために1200万円の蓄えを作ればよいということになります。
そうなれば、2000万円を30年切り崩して最後にゼロになるよりも、1200万円の蓄えを個別株と個別J-REITに投資をして利回り5%の高配当ポートフォリオで回せば死ぬときにも財産が残ります。この高配当ポートフォリオ戦略を採用するのがよいだろうと思います。2000万円も必要ではなく、1200万円程度を蓄えることでよかろうと思うのです(具体的な銘柄はメルマガで配信します)。
銘柄のポートフォリオの平均利回りは5.8%です。1000万円を4銘柄均等に投資すれば不足額を補うことができます。配当利回りは投資家側で再投資することで株数が増えていくわけです。配当を消費しないで、再投資すれば株数が毎年増えていきます。
ちなみに、30年間再投資を続ければ、株数は少なくとも5倍以上になります。
一方、企業側で再投資をするため、事業活動が維持されます。
株価の値上がりはどの程度期待できるのでしょうか。いくら成熟色の強い上記4銘柄とは言え、日本企業の過去30年の配当成長率の平均値が6%もあることを考えると、30年で5-6倍の株価になっているでしょう。
ちなみに、現在、私の選んだ4銘柄の配当成長率は5%、3%、7%、10%で、ポートフォリオの配当成長率は6%以上です。
このポートフォリオで30年待てば、価値は1.06の30乗となり、5.7倍になる計算です。
配当成長率とはキャピタルゲインの期待値でもあります。配当成長率はROEと1から配当性向を引いたものをかけたものです(配当成長率=ROE(1-配当性向))。
見通しとしては、30年でキャピタルゲイン6倍が期待できます。配当6%の再投資で株数がやはり6倍になるので、インカムゲインとキャピタルゲインと合わせて30倍以上になるでしょう。
30年で元手の30倍が期待できるのです。すると今、手持ちの30-40万円が1000万円になるのが30年後、という見通しです。リスクもありますから、とりあえず元手100万円を用意をして、NISAか何かで再投資を繰り返していけば、達成可能です。無理ではないのです。
長期で投資をデザインするとそれほど深刻ではないですね。株式投資をポートフォリオレベルで配当の高いものに長期で再投資をしていく手法を紹介しました。
個人投資家の皆様がよくやっている回転売買で株価を気にするやり方ではダメです。集中投資もリスクが高いのでオススメしません。
ポートフォリオ運用でも10年で資産10倍を目指せる
1) ポートフォリオで運用するとリターンを下げないでリスクだけを下げることができる。個別株の集中投資ではリスクは下がりません。ポートフォリオを内需外需バランスよく組む必要があります。
例えば、円安になれば、輸出企業はメリットを受け、輸入企業はデメリットを受けます。円高になれば逆です。為替のリスクが消滅するのです。ポートフォリオで運用するとリスクが下がる背景です。銘柄を10銘柄にバランスよく分散すればリスクとリターンの関係はかなり良化します。
2) 長期で投資すればするほどリターンとリスクの比率は良化します。
リスクが時間に比例しないためです。前述の通りです。
毎月、積み立てるのではなく、現在の200万円を年率6%のキャピタルゲインをあてにして運用すれば、30年で1140万円となります(年複利ベース)。そして、この前提はキャピタルゲインだけで配当の再投資は考慮されていません。
30年の期間があれば、成長株ポートフォリオであれば、10年で10倍を目指すことができます。
20年で100倍です。30年では1000倍です。今の1万円が30年後に1000万円になる計算です。
今、200万円がある方は、現物ポートフォリオで30年運用すれば、信用取引をしないことで、また、集中投資をしないことで、およそ1200万円に到達します。そして、引退後は、より利回りの高い銘柄にシフトすることで、年金の不足額を補うことができるでしょう。
マネー雑誌や経済誌では、信用や株価の上下動を取り上げて、過度な集中取引や信用取引を紹介していますが、投資とはリスクを下げてリターンを維持するものですから、長期でデザインし、ポートフォリオをバランスよくすること以外の手法はなかなかないのです。いくら損切りをしてもリターンは向上しません。集中投資で失敗すれば元も子もないのです。
この連載は、10年で10倍を目指す個人のための資産運用メルマガ『山本潤の超成長株投資の真髄』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、週2回のメルマガの他、無料期間終了後には会員専用ページでさらに詳しい銘柄分析や、今回ご紹介した高配当株ポートフォリオや資産10倍を目指すポートフォリオの提案と売買アドバイスもご覧いただけます。