配当性向40%をメドに今後も増配を続ける長期保有銘柄
★★★★☆ (5段階中4 5が最高評価)
三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)は長期で「保有」とします。理由はいくつかあります。
「保有」の理由は以下の通りです。
1) 配当性向の向上が見込めること
2) 支店数や国内人員の削減によるコストカットが見込めること
3) 個人ローン強化など収益性の向上への取り組みが期待できること
4) 市場部門の含み益5000億円が対日銀へのバッファーとなること
同社は100年後も存在します。配当5%を100年持てば投資金額を大きく凌駕します。
読者の皆様は、ぜひ、長生きしてください(医療が発達するので30年後には寿命は110才ぐらいまで生きられるでしょう)。
それは保有の根拠を一つ一つ見ていきましょう。
配当性向30%→40%で投資リスクはさらに低くなる
1)配当性向
現状30%台の配当性向ですが、40%への引き上げを計画しています。これは嬉しいですね。
同社は、配当利回りも高く、配当性向も低いため、減配の可能性は、ほぼありません。株価の下値リスクが限定的で、投資リスクは低いと考えます。
配当利回りは増配によって高まります。長期のスタンスで配当収益を期待して欲しいのです。株価については一喜一憂する必要はありません。購入した後は、年2回の配当を楽しみ、保有期間中は株価が幾らかであるかは忘れてください。長期保有では株価をチェックするのは意味のないことです。
2) コストカット
1989年当時、バブル世代の大量採用がありました。新卒を1000人も採用していた頃があるのです。この1000人規模のバブル入社組が次々に出向になります。半沢直樹の世界そのものですね。
バブル入社組の退社により国内事業の固定費が段階的に下がります。およそ2024年3月までに数千人程度の国内人員の削減が見込まれます。
今後、有人店舗500店舗を2024年3月期までに35%削減します。一方的なリストラ縮小ではないところが、さすが三菱です。三井住友銀行との店舗外ATMの共同運用(相互利用)が9月からスタートします。
ATM利用の顧客の利便性を下げない努力をしています。スマホからの送金ができるように、ネットバンキング比率も大きく高める見通しです。
国内の貸出金利を引き上げるなど収益性向上を図る
3) 収益性向上への取り組み
まず、航空機ファイナンス事業を強化します。ドイツのDVBバンクから航空機ファイナンス残高7163億円の買い取り契約を秋を目処に契約を締結します。
さらにインパクトが大きな取り組みとしては、米州MUAH(米国大手地銀)の事業ポートフォリオを大転換。法人貸し出しから個人ローンへの積み上げを計ります。米国のピアグループの貸し出しの概ね20%以上が個人ローンであるのに対してMUAHの個人ローンの割合は数%にとどまっていました。この部分はまだ伸ばせると同社では見ています。
問題の採算の取れない国内貸し出しについては、低収益顧客への貸出金利の見直しを要請しています。現に、顧客370社のうち、110社が同社からの提案を受け入れました。貸出金利が引き上げられない顧客には、外貨預金や為替取引などの協力を仰ぎました。このような地道な営業努力により、同社の利ざやは中期的に改善傾向を見せるでしょう。
例えば、航空機ファイナンスでは、2%を超える利ざやですし、個人ローンは5%-15%程度の利ざやが見込めます。外貨貸し出しをバランスよく増やすためには、低コストのドル調達であるドル預金を増やしていく必要はありますが。
4) 市場部門の債券の含み益5000億円
同社の外貨建て債券ポートフォリオは他の二つのメガ、三井住友とみずほを合わせたよりも大きく、外貨債券・国内債券・株式の保有残高はおよそ60兆円に上ります。その含み益は5000億円です。日銀が仮にマイナス金利の深堀りをすれば、円債の含み益は拡大します。この含み益はこの数年間で実現益として徐々に使う計画となっています。
1)-4)の要因から、減配リスクが少ない増配基調が期待できる同社株を長期保有の適格投資先とします。
減配リスクは少ない
景気は山あり谷ありですが、同社が永遠に存続すると考えるなら、100年保有するならば、株価など、一切、見る必要はありません。減配のリスクは、ほぼゼロと考えてください。
配当を継続的に楽しんでください。
この短期の2024年までの計画では、海外の利ざやの高い事業の強化策が目立ちますが、海外のオペレーションでは同社は十分な実績を出しています。
例えば、投資銀行モルガン・スタンレーなどの成功例があります。同社のマネジメントは相手先のマネジメントとの信頼関係を長期に渡って築くことを最優先にしています。物事を根っこから考える銀行らしい銀行であり、日本で最も経営の質の高い銀行の一つではないでしょうか。
若手とマネジメントとの距離が近いのも同社の特徴です。昔、大手銀行といえば、ボードメンバー(取締役)になったら、すごろくの「上がり」状態。日経新聞読んで、部下に、「よろぴくね」と言っていれば護送船団で退任まで安泰でした。そんな「よき時代」も終わりました。
今、ボードメンバーは「調査役並みに働いています」(IR担当者)。
ということで、プロ経営者としてボードも汗をかいていらっしゃるとのこと。
頼もしい限りですね。
(DFR投資助言者 山本潤)
この連載は、10年で10倍を目指す個人のための資産運用メルマガ『山本潤の超成長株投資の真髄』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、週2回のメルマガの他、無料期間終了後には会員専用ページでさらに詳しい銘柄分析や、資産10倍を目指すポートフォリオの提案と売買アドバイスもご覧いただけます。