コンプライアンスに問題がある日産は評価に値しない
----- (5段階中 ☆なし -投資不適格-)
2018年11月29日に日産自動車(7201)について書きました。
参考:日産自動車(7201)の株価は直近15年は上昇せず。就任後5年は救世主、その後は有利子負債が3倍に! ゴーン退任で減配リスクも浮上!
その時、減配リスクがあると指摘しましたが、その後、本決算で前期57円から40円への大きな減配となりました(私の見通しがズバリ当たったのです...)。
しかし、事態はより深刻。足元業績が急降下。来期はさらなる減配になりそうです。
そして先週、上場企業としてあってはならない出来事がありました。
決算発表前にメディアに情報が漏洩するという大問題
7月24日の日経新聞の報道により、同社の1Qの利益が9割減になることが報じられました。決算発表を翌日に控えていましたので、明らかなフライングとなってしまいました。
決算発表の数字が事前に特定のマスコミに流れることは企業のガバナンス上、問題があります。
特定のマスコミにインサイダー情報をリークする会社とみなされ、日産にとって百害あって一利なしです。
インサイダー情報がダダ漏れの企業に投資をすることがファンドマネジャーにはできないからです。同社株を買って、痛くもない腹を探れられることになりかねません。自然と、こうした企業への投資は敬遠するようになります。企業統治が機能していないとみなされるからです。投資家の「ブラックリスト」に日産は載ってしまったというわけです。
利益率わずか0.1%という赤字すれすれへの落ち込み
7月25日に発表された第一四半期決算は、営業益がわずか16億円で利益率は0.1%となってしまいました。赤字すれすれまで落ち込んでしまったのです。合わせて人員整理計画を発表しました。
構造改革の内容は以下の通りです。
1) 2022年までにグローバル生産体制10%削減
2) そのため12500人の人員削減
人を削減するにも費用がかかります。配当は残念ながら来期も減るでしょう。
こうなったのは誰の責任かは難しいところですが、投資家の中にはゴーンさんだったらここまで箍が緩んではいなかったのではと思う方もいらっしゃると思います。
私は業績の悪化が短期の要因とは思えないのです。むしろ、長年の不摂生がここにきて顕在化したのでしょう。そうなると業績悪化の遠因はゴーンさんにもあると言えるでしょう。日産は、米国などで規模を追いかけ、他の日系メーカよりも安売りをしていました。販売報奨金が他社よりも随分と高い状態が慢性化していたのです。
多額の報奨金を使って販売することで、ブランド価値は毀損しますし、中古価格も下がります。報奨金を適正化すれば一人負けを招くことは、ほとんどのアナリストはわかっていました。
安売りは生活習慣病のようなものですから、後々、ボディブローのように効いてしまうのです。ですから簡単には立ち直ることができないはずです。
EVを強化してきたがテスラに勝てない
日産は早くから電気自動車(=EV)の時代を予想し、EV製品開発を強化してきました。その代表作がリーフです。
2010年の発売以来、2019年までグローバルでは40万台を累計で販売しましたが、米国テスラモーターよりも時価総額では低い評価となってしまいました。テスラはこの半年だけで10万台近く販売しています。日産リーフは2018年欧州で4万台を売っているのですが、EV主役の座はテスラなのです。
高級車としてテスラが企業規模の割には高い評価を得ているのは、EVとしての設計の違いが顕著だからです。
まず、テスラは二次電池を何千本も搭載するという斬新な発想で勝負をしました。個々に充電することで充電時間を短縮したのです。テスラの場合、充電5分で120kmの走行が可能になります。その辺りがリーフがキャッチアップしなければならない差です。
リーフのように大型電池を使うと、充電に時間がかかるという問題があるのです。商品設計上のテスラの工夫に比べてリーフはこれといった特徴がありません。
どの自動車メーカーにとっても、EVのように原価が高く儲からない製品に経営資源をシフトすると収益が減ります。EV戦略は難しいのです。
ただそれ以上に日産が挽回できない最大の理由はガバナンスにあります。決算情報というインサイダー情報が特定マスコミへ優先して流れた事実は消せません。このことで日産は投資家の「ブラックリスト」に載ってしまったからです。
(DFR投資助言者 山本潤)
この連載は、10年で10倍を目指す個人のための資産運用メルマガ『山本潤の超成長株投資の真髄』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、週2回のメルマガの他、無料期間終了後には会員専用ページでさらに詳しい銘柄分析や、資産10倍を目指すポートフォリオの提案と売買アドバイスもご覧いただけます。