超成長株投資で資産10倍計画!

コロナ禍で業績絶好調のトヨタ自動車(7203)。しかし、EV戦略やMaaSへの転換で「視界不良」。米テスラや中国「NIO」に学び、未来に投資せよ山本潤の超成長株投資の真髄 第106回

2021年3月24日公開(2022年3月29日更新)
山本 潤
facebook-share
x-icon
このエントリーをはてなブックマークに追加
RSS最新記事

物足りないトヨタ自動車のEV戦略

 コロナ禍にもかかわらず、今年2月に2度目の上方修正を行うなど業績絶好調のトヨタ自動車(7203)。またトヨタグループとしても2020年の世界販売台数は約952万台で世界1位に返り咲きました。目下好調ですが、EV戦略では崖っぷちに立たされています。日本企業を応援したい私には残念ですが、このままでは世界のEV競争に敗れ去るでしょう。頑張って欲しいですが、未来が見えません。2030年にグローバルで電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)で100万台販売することを目指していますが、世界のスタンダードから見れば「ゼロ回答」に等しく、やる気があるように見えないのです。

 同社が国と一体になって水素で走るFCVを推進していることも理解していますが、世界のデファクトスタンダードを握ることはまずないでしょう。水素は貯蔵や高出力に向いているため、一部の産業用途で普及する可能性は大いにあり得ますが、次世代自動車における世界の趨勢は違います。

次世代自動車の本命は、安価な蓄電池と自然エネルギーを活用したEV

 次世代自動車の本命は、安価な蓄電池と自然エネルギーを活用したEVでしょう。この組み合わせが普及すれば、10兆円以上の原油や天然ガスを輸入しないで済む可能性もあり、資源輸入国の日本にとっても喜ばしいことです。蓄電池と太陽光発電の組み合わせで、電力網に接続せずに家庭用の電気を賄えるオフ・ザ・グリットも可能です。国も支援すべく補助金を出しています。産業用途でもオムロン(6645)などが先導し、工場で使う電気を丸ごと太陽光発電、パワーコンディショナー、蓄電池で面倒を見る事例が増えています。 

 日本メーカーのEVが苦戦している理由は、二次電池のコスト競争力が劣ることです。例えば、中国製の二次電池は日本製の約半値です。二次電池のコストが、EVの競争力の源泉です。なぜなら、EVのコストを決めるのは二次電池だからです。コスト競争力の高い二次電池がない段階で「敗北」が濃厚です。トヨタ自動車は全個体電池など高性能な電池を作れば戦えると考えている節がありますが、そうはならないと思います。二次電池への考え方の違いが、決定的に不利な状況をもたらすでしょう。

MaaSの株式バリエーションが著しく高い理由

 ESG時代に活躍できる製造業のビジネスモデルは、製品の売り切りモデルから、サービスを提供するモデルになるでしょう。こうしたサービスを提供するビジネスモデルをPaaS(Product as a Service)といいます。自動車は移動に使うサービスですから、MaaS(Mobility as a Service)と呼ばれています。

 世間には運転自体が楽しみという方もいますが、ESG時代では少数派となるでしょう。若者が自動車に乗らなくなった理由に、自らのエゴのためにCO2をまき散らすことへの嫌悪感や罪悪感があるのではないでしょうか。これからは「ファン・トゥ・ドライブ」ならぬ、「ファン・トゥ・ライディング/ジョギング/ウォーク」なのです。移動は生活に必要だから行う。ただし、その際、CO2を極力排出しないというのが原則で、世界中のどの国やどの地域においても等しいです。

 MaaSと売り切りモデルの株式評価を比較すると、MaaSの方が著しく高いでしょう。理由は簡単です。サービスの利用に応じて課金するストックビジネスだからです。収益変動が少なく、資本コストも低く、積み上げ型のビジネスモデルなので着実な成長が期待できます。

 MaaSでは1台の車の稼働率が大きく向上します。稼働率が高まると、無駄な製造が減ります。メンテナンスを丁寧に行えば投資収益率は格段に高まるでしょう。売り切りモデルのように新車を次々と開発する必要もありません。その結果、投資額は減り、テレビCMなどの広告宣伝費も削減できます。自動運転時代には鉄道各社とガチンコで勝負をする産業に生まれ変わるのです。

MaaSの取り組みで先行する中国の「NIO」

 MaaSへの取り組みでは、「中国のテスラ」と呼ばれるNIOが先行しています。同社は、2017年に交換式電池を採用したEV「ES8」を発売し、2020年に電池パックをサブスクリプション(定額課金)で使うサービスを開始しました。月額980元(1元=16円換算で1万6000円)から利用できるのです。

 MaaSで大事なのは、電池の性能ではありません。電池は販売するものではなく、電力を供給するサービスなのです。ホンダ(7267)や日産自動車(7201)はそのことに気づいています。日産自動車はリーフの電池をサービスとして捉えようとしています。つまり、ダメになった電池を少し良くしてチョイ乗り用途EVに提供したり、半分程度に戻してそれなりの距離を乗るEVに提供したり、新品同様まで回復させて長距離用途のEVに提供したりする。電池は貸し出すものであると腹を括る必要があるのです。そのことがわかっているのがNIOなどのEVサービサーです。

世界最大の販売台数を誇る同社にMaaSがないのは残念

 トヨタ自動車は夢の中にいるのかもしれません。常識的に考えて、水素のように軽いものを遠くに運ぶことは合理的ではないと思います。空気を運ぶよりも割りに合わない。圧縮して液化して運ぶには圧縮装置が必要で、保管容器も高価です。電気分解して作るため電気も必要です。本末転倒です。

 日本の自動車業界はEVに対して攻撃的なスタンスです。火力発電の電気を充電しているから、EVは環境負荷が高いという論理です。一昔前の日本なら賛同する方も多くいましたが、今や少数派になりつつあります。太陽光につないで充電する方式を世界中で推進しているのですから。

 日本の電力業界も過渡期にあるのでしょう。電力不足が深刻だから、火力や原子力発電なしには供給がままならないと心配する人が多数いますが、それは今だけを見ているからです。しかし、将来を見る人はそんなことは言いません。なぜなら、太陽光や風力発電コストは年々安くなることが分かるからです。蓄電池もどんどん安くなっています。

 トヨタ自動車が考えているのは電池の標準化です。標準化して安く作りたい。しかし、ビジネスモデルは売り切りモデルのままです。スマートシティを構築して実証実験を行いながら検討する。MaaSや自動運転の実現には法制度の整備など様々な障壁があるから、急ぐ必要はないと考えているように見受けられます。

 そんな気概で世界をリードできるのでしょうか。世界にはMaaSをリードする企業が山ほどあり、投資家はそういう企業に夢を託します。昨年12月に販売を開始したピュアEV「C+pod(シーポッド)」にもガッカリしました。軽自動車よりも性能が低いチョイ乗りEVを高い価格で販売し、電池の回収もしない。世界最大の販売台数を誇る同社にMaaSのビジネスモデルがないのは、なんとも情けないと思います。

競合の「反面教師」になりつつあるトヨタ自動車

 日本電産(6594)の永守重信会長兼CEOは将来、自動車の価格は30万円になると言います。それは違うのです。もうすでに30万円でできるのです。全ての国民が時速100キロで移動したいわけではなく、多くの人は十分な速度で安全に移動したいのです。そうしたニーズは無視され続けてきた。なぜ半導体がこれだけ安くなり、樹脂も鉄板も薄くできるようになったのに軽自動車が100万円以上もするのか。なぜ、新車に固執してプロダクト寿命の最後まで面倒を見ないのか。なぜ、大量の宣伝費用を使ったり、販売店に多額の報奨金を払ったりするのか。変だ。おかしい。そう思ったのがテスラです。

 テスラは、トヨタの逆をやれば勝てると考えたのでしょう。テレビCMなどはしない。系列の販売店を持たず、報奨金なども出さない。その代わりに安く作ろうと努力する。実際、前より安い値段で新モデルを投入している。

 日本の自動車メーカーが今やるべきことは思考の再構築です。ビュンビュンと高速で走る危ない車はいらない。安全で緩やかに走ればいい。宣伝も営業も検査もほどほどでよく、自動車の出来が多少悪くても修理すればいい。多くの顧客はただ移動したいのです。ドライブが楽しいと思っている人ばかりではない。未来の子供は高速道路を走る内燃機関車を見て、大量のCO2排出に胸を痛めているかもしれない。ハイブリッド車ですらCO2をまき散らす悪しき存在と考える若者は今後も増えるでしょう。そうした差し迫った未来に日本の自動車メーカーは思いを馳せ、危機感を持ってほしいです。

(DFR投資助言者 山本潤)

この連載は、10年で資産10倍を目指す個人のための資産運用メルマガ『山本潤の超成長株投資の真髄』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、週2回のメルマガの他、無料期間終了後には会員専用ページでさらに詳しい銘柄分析や、資産10倍を目指すポートフォリオの提案と売買アドバイスもご覧いただけます。

トヨタ自動車(7203)/日足・6カ月(出典:SBI証券公式サイト)


ダイヤモンド・ザイのお得な定期購読はこちら!
ダイヤモンド・ザイのウェブ会員登録はコチラから 最短翌日!口座開設が早い証券会社は? おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き
ZAiオンライン アクセスランキング
1カ月
1週間
24時間
楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
マネックス証券の公式サイトはこちら 楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

最強日本株
第1四半期絶好調株
ふるさと納税

10月号8月21日発売
定価950円(税込)
◆購入はコチラ!

楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!Amazonで購入される方はこちら!

[2025年夏の最強日本株]
◎巻頭特集
人気20銘柄の最新判断も!
初速がスゴイ!第1四半期絶好調株
●2025年後半の主役はコレ!快進撃の人気株
●配当&値上がりの両狙い!即買い高配当株
●業績好転で上昇に弾み!急騰狙いの逆襲株

◎第1特集
高利回りも大化けも!
買いの105銘柄を一挙紹介
2025年夏の最強日本株
●買い時は9~10月!日経平均は4万8000円
●強気派VS弱気派の戦い方
●安心して持てる人気株!大型優良株

1位:ソニーグループ 2位:NEC
●配当利回り4%以上がズラリ!高配当株
1位:伊藤ハム米久HD 2位:INPEX
●優待+αが狙える!株主優待株
1位:サイバーエージェント 2位:ラウンドワン
●お手ごろ価格で買え分散も!10万円未満株
1位:ソフトバンク 2位:野村不動産HD
●まだ上がっていない割安株!出遅れ株
1位:SRE HD 2位:ウエストHD
●大化け期待の中小型株!新興市場株
1位:Aiロボティクス 2位:タイミー
●リスクをとって資産増を狙え!1年で2倍株
1位:インティメート・マージャー

◎第2特集
サボったら家族がこんなに困る!
投資家のための終活大全

●「口座情報の共有」が第一歩!財産の一覧表を作ろう
●信用取引やFXは特に注意!株の相続の基本を知ろう

●子どものいない夫婦は要注意!30代でも遺言書は必要!?

◎第3特集
☆☆☆の数を見るだけでOK!
NISAで売れてる投資信託をズバ斬り!
投信格付240

●見直し!NISAで買う投資信託の選び方
●NISAで最安投信!インデックス型
●大きな利益を狙う!アクティブ型
●リスクを抑えられる!バランス型

【別冊付録】
ポイント還元終了の駆け込み直前!
ふるさと納税45品

●ポイント還元が終わる前におトクなサイトで寄附を!
●10月以降はどのサイトで寄附する?
●肉/魚介類/果物野菜/お菓子/日用品

◎連載も充実
​●NEWS:「ホームラン級の爆騰も⁉ 大谷翔平スポンサー株本命3選」 
●次の1カ月何が起きる?プロが今の株式相場のポイントを解説!
「米国の値下げ狙いで再び4万円台が定着か」
●ZAi編集部の新人・ザイゼンがチャレンジ!目指せ!お金名人
「車は買う? 借りる?」
●10倍株を探せ!IPO株研究所2025年7月編
「初値4倍超の銘柄も! ただし過熱感に注意」
●17億円トレーダー・ジュンのFX成り上がり戦略
「セル・ザ・ファクトには要注意!」
●連載・おカネの本音 レンタルなんもしない人さん
「令和の新しい生存戦略。“なんもしない”で家族と生活していく!」
●マンガ恋する株式相場「100g175万円! 恋のゴールドラッシュ」
●マンガ「デメリットの回避策も! 事実婚のお金事情」


>>「最新号蔵出し記事」はこちら!


「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!


>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

「キャッシュレス決済」おすすめ比較 太田忠の日本株「中・小型株」アナリスト&ファンドマネジャーとして活躍。「勝つ」ための日本株ポートフォリオの作り方を提案する株式メルマガ&サロン

ダイヤモンド不動産研究所のお役立ち情報

ザイFX!のお役立ち情報

ダイヤモンドZAiオンラインαのお役立ち情報