日本株底上げに欠かせないESGを理解する
前回のコラムでは、日本株がさらに底上げされる条件としてESGへの取り組みが欠かせず、投資家も受け身な姿勢ではなく、企業と対話して変革を求めていく積極的な姿勢が大切だと解説しました。
今回からESGを掘り下げて考えたいと思います。ESGのうち、Eはエンバイロンメント(環境)、Sはソーシャル(社会)、Gはガバナンス(企業統治)です。まずは地球温暖化が深刻化する中、Eのテーマを取り上げます。今後一層求められるCO2削減について考えたいと思います。
大量消費・大量廃棄文化が招くエコ意識が低い日本
身近な問題を取り上げます。私は過去に天気予報が雨なのに傘を持たず外出し、雨が降り出してコンビニに寄ってビニール傘を買ったことがあります。雨が止むと、ビニール傘を置き忘れてしまうこともあります。その場合も往復する手間や費用を考えると保管所まで取りに行かないことも多かったです。その結果、大量のビニール傘が処分されるのです。ビニール傘の年間販売本数は0.8億本と言われ、そのうちどれだけが廃棄処分されるか分かりませんが、私の環境意識が低かったと反省しました。
日本と世界のエコ意識の違いは折り畳み傘を使う比率にも表れています。日本は2割と少ないのに対し、世界では6割と多く、日本よりずっとエコです。傘の一人当たりの所有本数も日本が平均3~4本に対し、世界は平均2~3本と少ないことが分かります。
ビニール傘に使われている樹脂はポリエチレンが多いですが、塩化ビニル、非結晶ポリオレフィン(APO)、エチレンビニルアセテート(EVA)などもあります。骨とビニールを強力な接着剤でつけていることもあり、人手による分解が難しく費用も高いため、多くのビニール傘は埋め立て処分されます。廃棄物は燃やして体積を縮小させるため、焼却場が必要で、焼却で大量の二酸化炭素(年間5万トン=樹木350万本分)が放出されてしまうのです。傘一本の焼却で700g程度のCO2が排出されるのです。
問題の根底にあるのは、わが国に根付いた大量消費・大量廃棄の文化だと思います。雨の日に店舗に入るときは雫で店内が濡れないよう、多くの店舗がビニールカバーを入り口に設置しています。なんと19億枚のビニール袋が年間で消費されているようです。便利だから、安いからと言って、ビニール傘やビニールカバーを大量に消費し、大量に破棄する。そうなると資源は無駄になって燃やされ二酸化炭素を大量に排出し、新たな雇用も創出できないのです。
世界の最先端を走るリサイクル社会だった江戸時代
そんな日本も江戸時代は世界の先端を走るリサイクル社会でした。一例が傘職人です。傘の張り替えなどの修理も立派な職業でした。庶民に人気があった番傘は木材(竹などの天然素材)と植物性の油を塗った和紙で作られました。破れても紙を張り替えたり、油を塗り替えたりして繰り返し使用しました。エコです。傘に屋号を描くなどして個性を競いました。風流だと思いませんか。
習慣を変えると、新たなエコロジー関連の職業が生まれるわけです。モノを大切にするようになれば、修理屋という仕事が生まれます。使い捨てをやめると、多くの修理屋さんが必要になります。モノへの愛着が生まれ、環境負荷が軽減され、地球も救われるのです。
我々が良い傘を所望すると、職人が手作りの傘を作ってくれ、修理もしてくれる。良い製品なら中古市場で流通されてリユースもできる。大切に使えば、次世代へ引き継ぐことも可能です。傘1つをとっても、ビニール傘のポイ捨て社会より、職人が丹精を込めて作った傘を長く使う方が持続可能な社会と言えるのではないでしょうか。
探せばあるESGに熱心な日本の上場企業
最近はDIYで「傘職人」という修理グッズが販売されているようです。傘の骨が折れても自分で直したり、青山商事(8219)が営んでいる「ミスターミニット」などの修理店に持ち込んで修理ができるようです。
私ならば、置き忘れをしないよう常時携帯でき、丈夫で長持ちし、持ち込めば修理をしてくれる店舗があり、 日本の雇用創出にも貢献できるような折り畳み傘があれば最高だと思います。そんな傘があるかどうかをネットで検索すると、「男前研究所」というサイトで「折りたたみ傘の本命発見!頭ひとつ抜けた優秀アンブレラ6選」というコラムを発見し、既成概念に囚われないユニークな傘が6つ紹介されています。
欧米企業の傘が多い中、日本の上場企業が手がける折り畳み傘もありました。アウトドア総合メーカーのスノーピーク(7816)が手がける「アンブレラUL」です。特徴は、折りたたみ時は長さ22cmというコンパクトなサイズで、持っていることを忘れてしまう軽量さ(150g)を実現していることです。
傘のシェアリングサービスもあります。「アイカサ」というサービスで、例えば、横浜の関内地区に100のスポットを設置し、70円で終日利用できます。環境省が提唱している温暖化防止につながる「スーパーマーケット25」の行動指針によると、レジ袋1枚で33gのCO2の発生抑制、ペットボトルは23gのCO2の発生抑制になります。石油を掘らない。モノを燃やさない。そう考えるとCO2排出は削減できるでしょう。シェアリングサービスやリユースビジネスはこれから伸びるでしょう。
ちなみに買い推奨ではありませんが、下記にリユース関連銘柄の一例を挙げます。このようにリユース一つをとっても様々な銘柄があります。まずは、自ら気になる環境問題を考え、それを解決するサービスや製品を手がける上場企業を探してみてはいかがでしょうか。
・古着リユース 2681 ゲオホールディングス、3093 トレジャー・ファクトリー
・ブランド品のリユース 2780 コメ兵ホールディングス
・太陽光パネルのリユース 6255 エヌ・ピー・シー
・白衣のリユース 7447 ナガイレーベン
・無店舗型ネットリユース 7685 BuySell Technologies
・美術品などのリユース 9270 バリュエンスホールディングス
(DFR投資助言者 山本潤)
この連載は、10年で資産10倍を目指す個人のための資産運用メルマガ『山本潤の超成長株投資の真髄』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、週2回のメルマガの他、無料期間終了後には会員専用ページでさらに詳しい銘柄分析や、資産10倍を目指すポートフォリオの提案と売買アドバイスもご覧いただけます。