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「キャッシュレス決済」が日本で普及しない理由を
専門家が解説! 一時的なポイント還元キャンペーンと
「paypay」などのコード決済の乱立が“逆効果”に!?

2019年7月3日公開(2020年7月29日更新)
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【※キャッシュレス決済(スマホ決済)サービスを比較!】
「キャッシュレス決済」おすすめ比較! 主要な「コード決済」の還元率や利用可能なコンビニを徹底比較!


現金

 筆者は、クレジットカードを80枚ほど保有しているほか、デビットカード、プリペイドカード、電子マネー、コード決済など、さまざまなキャッシュレスサービスも活用して、お得な生活を送れるように意識している。そのため、メディアからキャッシュレスに関するコメントを求められることが多い。

 そのなかで、キャッシュレスへの肯定的な意見を求めらることが多いのだが、個人的には「今後、日本でキャッシュレス決済が大幅に普及することはない」と考えている。今回は、なぜ、日本ではキャッシュレスが浸透しないのか考えていこうと思う。
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キャッシュレス先進国の韓国や中国などに比べると、
日本には“キャッシュレス化への大義名分”がない!

 まず、クレジットカードについて考えていこう。日本国内でクレジットカードが誕生したのは1960年なので、約60年の歴史がある。一般社団法人日本クレジット協会によると、国内で発行されているクレジットカードは合計2億7827万枚(2018年3月末時点)とのことなので、クレジットカードを持てる18歳以上の国民1人あたり3枚ほど保有している計算になる。
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 また、経産省が発表している「キャッシュレス・ビジョン」を見てみると、日本のキャッシュレスの現状は、その大部分がクレジットカードによる決済になっている。

 しかし、多くの人が複数枚のクレジットカードを持っていながら、キャッシュレス比率は20%ほどなので「キャッシュレスのツールはあるのに利用していない」という実態が見て取れる。

 「キャッシュレス・ビジョン」では、スウェーデン、韓国、中国などのキャッシュレス先進国がキャッシュレスを推進している理由や、取り組みについてもまとめられている。その内容は下記のとおり。

■キャッシュレス先進国のキャッシュレス比率と推進の理由、取り組み一覧
国名 キャッシュレス比率 キャッシュレス
推進の理由
取り組み
スウェーデン 48.6% ・冬期期間の現金輸送の困難さ
・強盗事件の多発
・小切手からデビットカードへの移行
・公共交通機関における現金取扱を中止
・個人間送金
・支払いサービスSwish登場
韓国 89.1% ・脱税防止 ・年間クレジットカード利用額の20%所得控除(30万円上限)
・宝くじの権利付与
・年商240万円以上の店舗へのクレジットカード取扱義務化
中国 60.0% ・偽札問題
・脱税問題
・紙幣の印刷
・流通コスト
・銀聯を設立し低い加盟店手数料を実現(最高で0.55%)
・オンラインショッピングに対する消費者不安に対応したAlipayの登場

 治安の悪さ、税収アップ、現金輸送コストの問題など、それぞれの国によってキャッシュレス推進の理由が異なっていることがわかる。

 では、なぜ日本はキャッシュレス比率40%以上を目指すのか。「キャッシュレス・ビジョン」の「なぜキャッシュレスに取組むのか」の項には、以下のような記述がある。

今後我が国は、少子高齢化や人口減少に伴う労働者人口減少の時代を迎え、国の生産性向上は喫緊の課題といえる。キャッシュレス推進は、実店舗等の無人化省力化、不透明な現金資産の見える化、流動性向上と、不透明な現金流通の抑止による税収向上につながると共に、さらには支払データの利活用による消費の利便性向上や消費の活性化等、国力強化につながる様々なメリットが期待される。

 わかりやすく言い換えよう。日本がキャッシュレスを推進する1つ目の理由は「今後、人口減で現金が利用できない無人店舗や無人レジが導入されることを考えると、キャッシュレス化が必要だから」だ。現在は外国人労働者も増えているが、完全無人店舗を実現するには、現金の取り扱いは極力ないほうがいい。「Amazon Go」のようにスマホで入室して、買い物は登録されたクレジットカードで決済されれば無人レジも可能だ。

 ただし、日本は自販機でも現金の数え間違いがない。そのため、現金を使えるタイプの無人店舗が登場する可能性のほうが高いのではないだろうか。

 2つ目の理由は「税収アップ」。現金払いでは脱税を捕捉しにくいため、キャッシュレスにすることでお金の流れを政府が把握し、税収アップにつなげたいということだ。こちらは韓国でうまくいっているので、日本も同じ効果を望んでいるのだろう。政府がキャッシュレス化を推進する一番大きな理由はこれなのではないか、と個人的には感じている。

 そして3つ目の理由は「ビッグデータを使ったサービスの提供ができるようになり、経済の活性化につながる」とのこと。キャッシュレスが進むと、事業者側が消費者の消費活動やお金の流れを把握できるようになる。たとえば、クレジットカードなどの利用実績から貸し付けによる貸し倒れのリスクを分析して、そのリスクが低いと判断されれば後払いサービスを使えるようになる、といったことが考えられる。ただし、「Tカード」に紐付けられている情報を警察に無断で提供したことが問題になるような現状なので、決済データをサービスに反映させるのもなかなか難しそうだ。
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 上記の3つの理由を見て「やっぱりキャッシュレスは必要」と感じる人はどれほどいるだろうか。そもそも「2027年6月までにキャッシュレス比率40%」を目指す理由も不明だ。40~60%という他国のキャッシュレス比率を見て、日本も追随しようとするのは、子供が「みんなも〇〇を持ってるから僕にも買って」とダダをこねているのと同じように思える。

実は、若者のほうがキャッシュレス化を望んでいないことが判明!

 たしかに、キャッシュレスは便利でお得だ。筆者も積極的に利用しており、最近は、現金を持ち歩かなくても生活できる。しかし、「1週間、キャッシュレスで生活する」と「1週間、現金で生活する」という企画があったら、日本においては言うまでもなく後者のほうが簡単だ。そのくらい日本では現金が強い。

 日本の紙幣は偽造が難しく、さらに2024年には新紙幣が誕生する。また、中国のように広大な国土だと現金輸送のコストもかかるが、日本では現在も全国に現金輸送車が現金を届けており、現金輸送車が襲われる確率も低い。さらに、どこにでもコンビニATMがあってお金を引き出せるだけでなく、最近ではキャッシュアウトサービスも開始され、スーパーのレジや駅の券売機で現金を引き出すことさえできてしまう。しかも、日本は治安もいいので、ATMで出金したとしても強盗に遭うことはほとんどない。
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 このように、現状は現金だけで生活しても困ることがないので、わざわざキャッシュレス化を進める必要がない。

 「キャッシュレス・ビジョン」には「キャッシュレス支払いが普及しにくい背景」についても分析されており、大部分は上記と同じ内容だった。

 さらに、「キャッシュレス・ビジョン」の「キャッシュレス支払にまつわる各種不安」の項では、キャッシュレス社会への期待と不安について、一般消費者のアンケート結果がある。

 そのアンケートによると、「キャッシュレス社会になったほうがいい」と考える男性は58.7%だったが、女性は38.5%にとどまっている。さらに、合計でも半数以上が「キャッシュレス社会にならないほうがいい」と回答している。

 その理由の多くが「浪費しそうだから」や「お金の感覚が麻痺しそうだから」という意見だ。半数以上の一般消費者が望んでいないのであれば、無理やりキャッシュレス化を進める必要性が見当たらない。

 男女とも、年齢が上がるほどキャッシュレス化に抵抗する人が増えるイメージがあるが、実はそうでもない。むしろ、若年層のほうが「キャッシュレス社会にならない方がよい」と答えた人の割合が高いのだ。

 筆者も、てっきり若い人のほうがキャッシュレスへの抵抗が少ない印象だったが、実際は逆。そのため、現在の若者の年齢が上がったところで、キャッシュレスを望む比率が大きく上がることも考えにくい。

キャッシュレス化を進めるためには、強硬手段を取るしかない?

 また、キャッシュレスの決済手段が多すぎるのも問題だ。特に最近は「○○ペイ」などのコード決済サービスが増えている。

 ちなみに、コード決済サービスとは、スマートフォン用のアプリにクレジットカードや銀行口座を紐付け、そのアプリに表示されたバーコード・QRコードをレジでスキャンしたり、店頭で提示されたQRコードを読み込んだりすると、支払いが完了するサービスのことだ。
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 現在は「PayPay」「楽天ペイ」「Origami Pay」「LINE Pay」「d払い」「au PAY」「ゆうちょPay」「はまPay」「YOKA! Pay」「メルペイ」「Amazon Pay」などがあるが、今後も「ファミペイ」「Bank Pay」などが誕生する予定となっており、コード決済サービスの数は増加中だ。

 コンビニなどの店頭の案内には、コード決済のロゴに加えて、「Visa」「Mastercard」「JCB」「American Express」「Diners Club」などの国際ブランドのロゴや、「Suica」「PASMO」「Kitaca」などの交通系ICカード、「nanaco」「WAON」「iD」「QUICPay」などの電子マネー、「J-Debit」や「JCB Premo」のロゴが掲載されている。
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 選択肢が多いのは結構だが、多ければ多いだけ迷いも出てくる。そうなると、結局「よくわからないから使い慣れた現金を使う」という習慣から抜け出しにくくなる。

 それでも強制的にキャッシュレス化を進めるのなら、現金派が困るような状況を作るのが近道だと筆者は考える。

 たとえば、5000円札以上の紙幣を廃止したらどうだろうか。すでに2000円札は、ほぼ市場から消えていることを考えても、紙幣の回収は可能だろう。5000円札以上の紙幣が流通しなくなれば不便になって、現金派でもクレジットカードなどを使うようになるだろう。

 また、ATMの出金手数料を引き上げたり、ATMやキャッシュアウトを廃止したりなど、どこでも現金を簡単に引き出せる状況をなくせば、キャッシュレス化は進むはず。

 さらに、プロ野球の東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地「楽天生命パーク宮城」のように、”現金お断り”の環境を増やすのもひとつの手だ。

 しかし、政府も企業も、ここまで思い切った方法は取れないだろう。

 だからこそ「PayPay」「LINE Pay」「d払い」といったコード決済サービスは、20%還元などのお得なキャンペーンを実施することで、利用者を拡大しようとしている。しかし、どう考えても長続きするようなキャンペーンではなく、キャンペーン終了後もユーザーがそのまま継続して利用し続ける保証はない。

 とはいえ、訪日外国人はクレジットカードなどをよく利用するので、2019年のラグビーワールドカップや2020年の東京五輪でキャッシュレス対応店舗は大幅に増えるはずだ。

 しかし、クレジットカードやコード決済を利用できる店舗が増えたとしても、その後、日本人がキャッシュレスを積極的に利用するかどうかは別問題となる。

 消費増税後は、キャッシュレスで決済すると2~5%分がポイントで還元される予定だが、それも増税後の数カ月間だけで期間が中途半端だ。さらに、ポイント還元キャンペーン後は、加盟店手数料がアップする可能性もある。加盟店手数料がアップすれば、結局、キャッシュレス決済を終了する加盟店も出てくるだろう。

 キャッシュレスが推進されれば、政府やキャッシュレス事業者にとってはメリットはあるが、消費者側へのメリットが提示できていない。メリットがなければ、消費者は簡単に習慣を変えられない。前述のとおり、現金派が困るような状況を作ればいいが、それも難しい。

「キャッシュレス・ビジョン」のまとめでは「将来的にキャッシュレス比率80%」と高い目標を設定しているが、以上の理由から、個人的には2025年時点で30%を達成するのも難しいのではないかと考えている。

 以上、今回は、日本でキャッシュレス化が普及しない理由について解説した。

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