株主優待や配当金狙いで権利取得最終日に株を買い権利を確定してから、配当落ちで値段が下がる前に売り払う。配当や優待がもらえて、しかも値上がり益も手に入るという結構オイしい短期投資。日本株の場合、わりと有効な場合が多いが、「ことJリート(日本版不動産投資信託)に関してはリスクが高い」と、関大介さん。Jリート研究の第一人者にして、専門サイト「JAPAN-REIT.COM」の代表者だ。なぜなのか? この7月26日に権利確定する銘柄を題材にして説明してもらった。
Jリート市況はやや弱含みだが円高一服なら投資を検討も
まず最初に市況についてですが、Jリート市場の価格は足踏み状態となっています。
Jリート市況を測る指標である東証リート指数は、6月4日の直近最安値883.38ポイントから7月2日の970.86ポイントまで10%近く上昇しましたが、その後はやや下落傾向になっています。
6月の短期的な上昇による利益確定の売りだけではなく、為替が円高方向に振れていることで外国人投資家の為替差益を背景にした売りも加わりやすい状況です。
欧州債務問題だけではなく、不透明感が強まる米国景気に対する懸念もあり、Jリート市場の価格は、当面やや弱含む展開に終始しそうです。
ただし、いままでの連載で記載してきた通りここ3年間の東証REIT指数が900ポイントから1000ポイント程度のボックス圏で推移していることからみれば、円高のさらなる進展はないと考える投資家にとっては投資を検討してもいい時期とも考えられます。
さて、次ページでは本題に入ります。なぜ、日本株投資では有効となる場合が多い配当/優待狙いの短期投資法が、Jリートでは高リスクになるのか、そちらをご説明します。
Jリートは2つの点で普通の株式とは異なる
Jリートは一般の上場企業とは異なる以下の二点の特徴があります。
(1)大半の銘柄が年2回決算である(欄外注1)。
(2)銘柄によって決算期が異なるため、毎月決算月となる銘柄が存在する。
これから投資を検討される投資家の中には、1月・7月決算の銘柄に触手が動くかもしれません。
1月・7月決算の銘柄は今月26日が権利付最終取引日になりので、僅か数日の保有で図表1の分配金を受け取ることができる(欄外注2)ためです。
ただし、Jリートはいわゆる「配当銘柄」であるため、権利落ちの影響は価格面に強く影響を及ぼします。理論的には、権利落ちによって分配金分は価格が下落することになるのです。
そして、下記の図表2は、特定の期間の影響を避けるため、1月・7月決算の銘柄が過去2年間、権利確定月前から権利確定月にかけてどのような値動きを示しているのかを示したグラフです。詳細は図表2の但し書きをご参照ください。
注1:ジャパン・ホテル・リート投資法人、証券コード8985のみ年1回決算。
注2:予想分配金であり、決算確定までに変動する可能性がある。
権利最終日に買ったのでは高値づかみになりやすい
前ページの図表2から見ると、Jリート投資では、以下のような値動きが顕著となります。
(1)権利確定日である月末から4営業日前から権利落ちとなる3営業日前にかけて価格が下落する(いわゆる分配落ちの影響)。
(2)権利確定月の前月末から当月の初旬にかけて(最も高値となっているのは19営業日前)価格は上昇する傾向がある(欄外注3)。
つまり、このような点から権利月が近い銘柄に投資する場合には少なくても2カ月月程度の期間が必要になることが分かります。
一方で決算月の銘柄に毎月乗り換えする投資方法では、決算月初旬の高値で投資してしまう確率が高いということになります。
つまりJリート投資の場合は、短期的な投資で分配金を狙うと高値掴みになりやすいのです。
また、Jリートは通常、決算月前後に増資を公表します。この場合には、分配落ちだけではなく増資による需給悪化を嫌って価格下落を引き起こす場合もあります。この点でもJリートは短期的な分配金狙いの投資には向いていないと言えるでしょう。
注3:市況の動向によっては異なる傾向を示す場合がある。
特別研究員:Jリート研究の第一人者 関 大介
早稲田大学法学部卒業。不動産会社財務部、外資系生命保険会社経理部、シンクタンクを経て2007年2月に不動産証券化コンサルティング及び情報提供を行うアイビー総研(http://www.ibrc.jp/)を設立し、代表取締役に就任。前職では、Jリート市場創設前となる2001年2月から不動産証券化に関するポータルサイトを5年間運営。2006年5月よりJリート情報に特化した「JAPAN-REIT.COM」の運営を開始し、現在は運営事務局の責任者を兼任。『J-REIT格付けデータブック』(秀和システム社)などの著作がある。
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