脱炭素地獄#6Photo:Katsumi Murouchi/gettyimages, Bim/gettyimages

企業の競争力を測る物差しが「利益」から「炭素」に変わる――。非エコな企業はビジネスの参加資格すら得られず、“脱炭素地獄”に転落する危機にある。そこでダイヤモンド編集部では、統合報告書を開示している大手企業を対象に「炭素排出量と財務データ」をミックスさせた独自ランキングを作成した。特集『脱炭素地獄』の#6では、炭素排出量の多い12業種に限定した「ワーストランキング100社」を公開する。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)

鉄鋼、電力、石油、運輸…炭素排出量が多い12業種限定
「脱炭素シフト」が難しい企業は?

 海運業界の脱炭素シフトが鮮明になってきた。日本郵船は液化天然ガス(LNG)を主燃料とする自動車運搬船を12隻も大量発注した。2025年度から28年度にかけて“連続建造”されるのだという。

 従来の重油焚き運搬船に比べて、輸送単位当たり約40%のCO2排出量の削減を見込める。すでに投入を決めていた8隻を合わせた20隻分の投資規模は2000億円弱。重油からLNGへ、自動車運搬船の「燃料転換」を急ピッチで進めているところだ。

 きっかけとなったのは、欧州で先行する自動車業界の動きだ。すでに、独フォルクスワーゲン(VW)は、自動車の海運輸送を担う取引業者の入札条件として、LNG燃料自動車運搬船の使用を求めている。早晩、グローバルな自動車メーカーがVWに追随するのは必至。荷主の要請に応える形で海運業界の脱炭素が急加速しつつある。

 企業の競争力を測る物差しが「利益」から「炭素」に変わるーー。炭素をたれ流す非エコな企業は、ビジネスの参加資格すら得られない状況が現実のものとなりつつある。

 典型的なのが米アップルの方針だ。30年までにサプライチェーンの100%において脱炭素を達成するとしていて、それに対応できないサプライヤーはアップルと取引できなくなる。

 目下のところ、日本企業に差し迫っている関門は、脱炭素リスクの開示だ。主要国の金融当局が中心となって設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に基づく気候変動リスクの情報開示が、順次義務付けられる方向で議論が進められている。来年4月には東京証券取引所が再編されるが、その“最上位”であるプライム市場の上場資格として、TCFDに準拠した情報開示が義務付けられている。

 炭素を減らす取り組み、ビジネスモデルのチェンジ、脱炭素リスクの情報開示に伴う事務的コストの増加――。脱炭素が企業に大きな負荷を強いることは間違いない。

 そこでダイヤモンド編集部では、統合報告書を開示している大手上場企業を対象に「炭素排出量と財務データ」をミックスさせた独自指標を設定し、ランキングを作成した。

 本稿では、対象を炭素排出量の多い12業種に限定し、脱炭素による“脱落危険度”が高いランキング【ワースト100】を大公開する。言い換えれば、脱炭素シフトに「ついて行けない」危険性が高い企業ランキングだ。

 果たして、ANAホールディングス(ANA)や三菱ケミカルホールディングス(三菱ケミカル)は何位にランクインしたのか。

●ランキング対象:炭素排出量の多い12業種
電気・ガス、石油・石炭製品、鉄鋼、非鉄金属、鉱業、海運、空運、陸運、化学、パルプ・紙、ガラス・土石製品、ゴム製品