「年々入局者が減って、
今年はとうとうゼロ」

──現行の専門医制度の影響は?

A医師 年々入局者が減って、今年はとうとうゼロでした。

B医師 うちもです(笑)。

A医師 とにかく今の内科の専門医プログラムは、臨床で大変というのではなく、J-OSLER(専攻医登録システム)の登録作業がとにかく面倒なんですよ。

 初期研修医から見た内科の専攻医の仕事って、J-OSLERの登録でひたすらパソコンたたいてるというイメージなんじゃないですか。

 例えば吐血や喀血を止血(経カテーテル止血術)するような花形の手技で、かっこいい先輩の姿を印象付けることができればいいんですが、夕方から夜の0時ごろまでパソコン作業ですから、そちらの方がインパクトは大きい。

 市中病院よりも給料安い上に、「内科ってパソコン作業が主な仕事なの?」と思われたら、誰も大学病院の内科になんか入局しませんよね。

──C先生、内科の後輩たちが悲鳴を上げています。

C医師 臨床を学ぶよりJ-OSLERに時間が割かれる現状は本末転倒で、何とかして滅ぼさないといけないですね(笑)。さりとて、直ちにJ-OSLERをなくす方法もないので、有名無実化する方法を考えているところです。

自宅待機のオンコールは
「自己研さん」で手当なし

──働き方改革は進んでいますか。

A医師 今は当直(通常の勤務時間外にシフト制で働く勤務形態)が週1~2回ですが、今後は月4回程度に減らすと、大学側は言っていますね。頭数増えていないのに(笑)。

B医師 うちは2人体制だったのを、1人当直、1人オンコール(急変など緊急時に備えて、自宅で待機する勤務形態)にして当直回数を減らす、と言われましたね。

──オンコール手当はあるの?

B医師 そこは自己研さんですかね(笑)。

──外科はなかなか働き方改革は難しそうですが、D先生の大学はいかがですか。当直は月何回?

D医師 月3回程度でしょうか。当直手当は1回1万円程度で、当直明けは、基本的に午前で帰宅はできます。とはいえ、結局オンコールで呼ばれるんですよ。

 働き方改革で、ある程度当直が広く対応することになったにもかかわらず、担当患者なら即主治医を呼ぶスタッフがいるので、結局オンコールで毎回呼ばれて、病院に泊まる羽目になるわけです。

 オンコール代は当直手当より安いので、大学が少し得しているだけな気がしますね……。

──結局、人がいないから、大学だと働き方改革も形骸化しちゃうわけですね。

C医師 今の医療アクセス、24時間365日応需可能な体制を保ちながら、大学が果たすべき「臨床」「教育」「研究」の建前を保持しつつ、働き方改革に挑むことは到底無理なわけです。

 何かを諦める必要があるのに、誰もそれを大っぴらに言えない。なぜなら、誰が世間に対して「無理」と言うのか、組織内ではチキンレースで、それを正直に言った人間が失脚するのは目に見えているからです。

 だから大学にとって働き方改革はある種「詰み」なんですよ。