行政訴訟は最高裁に上告も
判決を待たずに進級決定?

 杉浦は、訴訟の場であれば処分の中身を論じ合えると考えた。しかし、大学側が議論の場に立つことはなかった。

 22年8月19日、杉浦側は留年(降年)処分の取り消し、および判決が出るまで留年させないことを求める行政訴訟を東京地方裁判所に起こした。その翌月、東京地裁は口頭弁論を経ずに訴えを却下した。単位認定は大学内部の教育上の措置であって司法審査の対象にならないとし、留年は処分ではなく、単位不認定の結果であるとした。つまり処分は存在せず、訴えは不適法であると退けたのである。大学側の主張を採用したような内容だった。

 杉浦側は控訴し、控訴後に単位不認定処分の取り消しを追加した。翌23年1月、東京高等裁判所は審理を求めて東京地裁の判決を取り消し、差し戻した。が、翌2月に東京地裁は再び訴えを却下。杉浦側は控訴したが、4月に東京高裁が訴えを却下したので、最高裁判所に上告した。

 その間にも刻々と時は過ぎた。6月中旬現在、間もなく今年度に受講した基礎生命科学実験の単位認定の結果が届く。認定されれば、判決を待たずに3年生へ来年進級することが決まる。行政訴訟は門前払いのまま、留年処分や単位不認定の中身を議論することなく終了することになりそうだ。留年処分は不当であり、留年処分のない地位であることを確認する民事訴訟も東京地裁に起こしているが、こちらも同様だ。