111年111本 厳選記事でたどる激動の日本経済史【111年111本戦後復興編 2】Photo:PIXTA

1913年に(大正2)に創刊した「ダイヤモンド」は、2024年に111周年を迎えた。そこで、大正~令和の日本経済を映し出す1年1本の厳選記事と、その解説で激動の日本経済史をたどる「111年111本」企画をお届けする。第7回は戦後復興期、1950~55年までの6年間だ。(ダイヤモンド編集部論説委員 深澤 献)

【38】1950年
朝鮮戦争勃発で
特需景気が到来

 1950年6月、北朝鮮の朝鮮人民軍が韓国側に侵攻し、朝鮮戦争が勃発する。直後の7月11日号では「朝鮮事変でどう変わる」という大特集が組まれた。

 振り返れば本誌は、第1次世界大戦、日中戦争、第2次世界大戦と、戦争が始まるたびに景気への影響、それもプラスの効果についての期待を誌面で論じてきた。多大な犠牲を被った敗戦からわずか5年しか経っていないというのに、今回も海を隔てた隣国で始まった戦争が日本経済にどんな影響を及ぼすか、ほぼ一冊まるごとの紙幅を割いている。

 とはいえ、この時点では景気に対する見方は慎重である。巻頭の総説ではこう述べている。

1950年7月11日号「朝鮮事変でどう変わる」1950年7月11日号「朝鮮事変でどう変わる」
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『戦争景気の迷妄は絶対禁物
 朝鮮事変、即第三次大戦の勃発とみて、戦争景気の出現を夢みるものもある。
 だが現実はあまりにも苛酷である。なるほど極東情勢の緊迫化は、米国の対日援助を積極化するであろう。軍事兵站基地としての日本重化学工業はある程度、息を吹き返すかも知れない。だが、これをもって、日本経済に好況が見舞ってくるほどの力はない。むしろ貿易への障害は倍加される。国民生活への圧迫は熾烈化する。重化学工業とて整理淘汰は強要されよう。ドッジ・ラインの方向転換は考えられない。わが国の景気は既定のコースを歩みつづける外はない。かく考えると戦争景気の迷妄を抱くは禁物である。戦争は儲からぬものと銘記すべきだ』

 第1次大戦では大戦景気に沸いた日本だが、第2次大戦では敗戦により壊滅的な打撃を受けた。その経験と反省から「戦争は儲からぬもの」と、浮かれ騒ぎにくぎを刺しているのだ。