「勝者のゲーム」と資産運用入門

OPECプラスの原油減産合意が波紋!原油価格再上昇でインフレへの強い懸念。ロシアへの経済制裁ブレーキもマーケットに暗雲太田忠の勝者のポートフォリオ 第53回

2022年10月12日公開(2022年10月12日更新)
太田 忠
facebook-share
x-icon
このエントリーをはてなブックマークに追加
RSS最新記事

OPECプラスの減産合意で原油価格が再び上昇。インフレへの強い懸念

 原油価格が再び株式市場の火種になりつつある。ロシアのウクライナ侵攻で一時は1バレル130ドルまで大きく上昇していたWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物価格。投機的な動きの解消と景気減速による需要減退の懸念から9月下旬には一時は80ドルを割っていたが、先週再び急騰し90ドル台を回復した。インフレの一番の攪乱要因であった原油価格が沈静化して「やれやれ」と思っていた矢先、再び重要なリスクファクターとして浮上してきた印象だ。

 石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの非加盟の主要産油国でつくる「OPECプラス」が先週水曜日(10月5日)、11月に日量200万バレル減産することで合意した。減産合意の背景は当然のことながら、産油国の財政圧迫を招く原油価格の下落に歯止めをかけるためである。一方、エネルギー価格の高騰にこれまで苦しめられてきた欧米諸国の反発は大きく、この合意報道を受けて、米ホワイトハウスは「バイデン大統領は失望している」との声明を出した。「この決定はエネルギー価格上昇ですでに混乱している米国のみならず、低所得や中所得の国々に大きな悪影響をもたらす」とのコメントも出している。

2020年4月20日、原油先物価格が史上初のマイナスとなり世界に衝撃

 新型コロナウイルスの流行で、原油を取り巻く経済環境が大きく揺さぶられたのはご存知のとおりである。ところで、皆さんは覚えておられるだろうか? 2020年4月20日の出来事を。

 そう、この日のニューヨーク原油先物市場において原油先物価格が史上初めてマイナスになったのだ。5月物の終値が1バレルマイナス37.63ドルとなり、前日から何と55.9ドルの急落。売り手が買い手に1バレル当たり37.63ドル支払って原油を引き取ってもらうという、通常考えられない異常事態が起こった。コロナ禍による世界的な経済活動の停止で原油の需要が激減。それに加えて原油保管スペースの枯渇がその背景にあった。原油の受け渡しに使う取引所の倉庫は満杯となっており、このマイナス価格は原油の貯蔵コストを反映していた。5月物の衝撃価格の形成は、翌日が取引最終日だったこともあったが、我々はひとつの歴史的瞬間に立ち会ったと言えよう。

 この事態を受けて、OPECプラスは翌月の2020年5月に世界需要の1割に当たる日量970万バレルの協調減産に踏み切った。その後は経済活動の再開とともに着実に生産を増やしてきたものの、高インフレで再び景気減速による需要減との見方が強まり、今年の9月会合で10月に日量10万バレル減産を決定、そして今年10月の会合では11月に200万バレル減産を決めた。200万バレルは世界需要の2%に該当し、2020年以来の大きな減産規模になる。

原油価格上昇が、ロシアへの経済制裁に著しくブレーキをかける懸念も

 さらなる問題点がある。それは、ウクライナ侵攻を続けるロシアへの経済制裁に著しくブレーキがかかるとの懸念だ。大幅な減産を決めたことで原油価格が上昇し、G7(主要7カ国)が決定したロシア産の原油価格への上限措置が果たして機能するかどうか不透明になってきている。原油価格が上昇すれば当然、ロシアの収入増につながる。今は中国やインドが比較的安い価格でロシア産原油を購入しているが、需給が引き締まってくれば、ロシア産原油を高値でも買う動きが出てくる可能性がある。それと世界的な対立構図だ。OPECプラスにはそもそもロシアが加盟しており、中東産油国はロシアと手を組んでいるのだ。したがって、欧米と中東産油国との溝は深まっていると推測される。

 今回の減産計画はかなりインパクトがある。実際、市場関係者や専門家からは世界で原油が供給不足に転じ、価格が上昇するとの見方が強まっている。現在は1日に数十万バレルの供給過剰の状態だが、「日量100万バレルの減産をおこなっても、世界的には10万バレルの供給不足」「日量200万バレルの減産をおこなえば深刻な供給不足に陥る」との見解がある。「原油先物価格は再び1バレル110ドルになる」との予想も出ている。再びインフレという火に油を注ぐことになれば、金融市場や経済への影響は甚大だ。

 さて、マーケットである。前回のコラムでは『ベアマーケットラリー(下落相場の反発)に要注意』というテーマで話をした。先々週の日経平均は1216円安、先週は1179円高と非常に忙しい動きとなった。4週ぶりの反発であるが、3週間での下落2277円(28214円から25937円へ下落)に対して、先週の上昇は1179円(25937円から27116円へ上昇)となったため、ほぼ半値戻しの状況にある。

現状のインフレを甘く見てはいけない。逆業績相場への動きが今後強まる

 相場が大きな下落トレンドの中で時折「ポン」と大きく反発することがあるが、ちょうどその現象が出ている。弱気相場の中の「ダマシ上げ」だ。マーケットがこれまでずっと下落しているので「おや、そろそろ底入れかな?」「あっ、やっと上昇だ。ここは積極的に買いにいかなきゃ」と錯覚しやすいのがベアマーケットラリーの特徴なので注意が必要だ。米国市場は先週金曜日(10月7日)に9月の雇用統計発表を受けてNYダウは630ドル安、ナスダックは420ポイント安と急落しており、早くも冷や水が浴びせられた形だ。現状のインフレを甘く見てはいけない。逆金融相場から逆業績相場への動きが今後強まることが予想される。

 ところで、今週10月11日より入国者数の上限撤廃&国内旅行支援策が同時にスタートする。私がDFR(ダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ)で投資助言をおこなっている「勝者のポートフォリオ」でも大いに注目している分野だ。鉄道や空運など我々が重視している銘柄が良い値動きをし始めており、今後のパフォーマンスに期待したい。これまで業績が極めて悪かっただけに収益力改善が顕著になることは確実だ。テーマ株としての注目が高まっていくと予想される。

計1000名が参加したセミナーで「金融相場に向けて準備せよ」と主張

 先週の水曜日にDFR、木曜日にGFS(グローバル・フィナンシャル・スクール)にて毎月恒例のオンラインセミナーを開催した。テーマは「逆金融相場から逆業績相場へ ― 覚悟はできているか?」。参加者は合計でちょうど1000名と盛況だった。平日の夜にもかかわらず、これだけの多くの方々がセミナーに参加されたのは驚きだが、マーケットへの関心の高さを表していることをひしひしと感じる。

 現状のマーケットへの深い理解、今後予想される展開、ベアマーケットラリーでの注意点、そして投資戦略。今年の春先から私が予想していた通りのシナリオで進んでいるが、ここから先はむしろ「金融相場に向けて準備せよ」「ワクワクする局面がやって来る」という切り口でお話しをした。ご参加いただいた方々には、ご自身の今後の前向きな投資に生かしていただければ幸いである。次回は11月の初旬にセミナーを開催する予定なので、ご関心のある方はぜひとも参加していただきたいと思う。

●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。

※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『太田忠 勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。原則毎月第一水曜夜は、生配信セミナーを開催。

 

国内外で6年連続アナリストランキング1位を獲得した、
トップアナリスト&ファンドマネジャーが
個人投資家だからこそ勝てる

「勝者のポートフォリオ」を提示する、
資産運用メルマガ&サロンが登場!

老後を不安なく過ごすための資産を自助努力で作らざるを得ない時代には資産運用の知識は不可欠。「勝者のポートフォリオ」は、投資の考え方とポートフォリオの提案を行なうメルマガ&会員サービス週1回程度のメルマガ配信+ポートフォリオ提案とQ&Aも。登録後10日間は無料!

太田忠の勝者のポートフォリオ

10日間無料 詳細はこちら※外部サイトに移動します


一番売れてる月刊マネー誌『ダイヤモンド・ザイ』の“決算入門講座”が開講!詳しくはこちら!
ダイヤモンド・ザイのウェブ会員登録はコチラから 最短翌日!口座開設が早い証券会社は? おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き
ZAiオンライン アクセスランキング
1カ月
1週間
24時間
moomoo証券は「米国株」投資におすすめの証券会社! 楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
moomoo証券は「米国株」投資におすすめの証券会社! マネックス証券の公式サイトはこちら 楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

株主優待
人気株500激辛診断
最新理論株価

11月号9月20日発売
定価990円(税込)
◆購入はコチラ!

楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!Amazonで購入される方はこちら!

[株主優待/人気株500激辛診断]
◎巻頭特集
優待の達人へのアンケートでランキング!
目的別株主優待カタログ88
●桐谷さんは優待新設ラッシュをどうみる?&
実際に買った優待新設株35銘柄

●2大優待賢人ようこりん&桐谷さんが語る
暮らしも投資もトクする株主優待の魅力」
●ようこりんが大盤振る舞い!
株主優待BIGプレゼント
<家計応援優待>食品/日用品/買い物
●<プチ贅沢優待>グルメ/レジャー・エンタメ/リッチ雑貨

◎第1特集
買っていい高配当株は98銘柄!
<2025年秋>
人気の株500+Jリート14激辛診断
●儲かる株の見つけ方[1]旬の3大テーマ
業績の初速好調で上ブレ期待/株価出遅れで上昇余地大/値上げが順調などインフレに強い
●儲かる株の見つけ方[2]5大ランキング
第1四半期の進捗率が高い/アナリストが強気/配当利回りが高い/初心者必見の少額で買える/理論株価より割安
●2025年秋のイチオシ株
10万円株/高配当株/株主優待株/Jリート
●気になる人気株
大型株393/新興株86/Jリート10

◎第2特集
関税の影響は?AIってどこまで浸透?
人気の米国株150激辛診断[2025年10-12月]

●米国在住プロのリアルレポート
●GAFAM+αの8銘柄を定点観測

●買いの注目優良株&高配当株
●人気の124銘柄の買い売り診断
ナスダック49/ニューヨーク証券取引所
●株価10倍を狙う!米国IPO株

◎第3特集
大幅上昇を狙う!
未来を変える革新的な企業を買う投資信託

●テーマ型投信に投資するメリットと注意点
●最新テクノロジーはすべての土台!半導体/AI

●次世代を担う最有力テーマ!宇宙/ロボット
●いま勢いのあるテーマに乗る!暗号資産/エンタメ/サイバーセキュリティ

【別冊付録】
増益予想で割安な株は1501銘柄
上場全3889社の最新理論株価

◎連載も充実
​●読者参加型企画・1カ月で上がる株を当てろ!
「エア・ウォーターが1番!任天堂は利益確定売りで失速」
●ZAiのザイゼンがチャレンジ!目指せ!お金名人Vol.14
「後払い決済のトラブルに注意」
●17億円トレーダー・ジュンのFX成り上がり戦略Vol.09
「大相場を生む『要人発言』」
●おカネの本音!VOL.39 小川コータさん
「マイクロソフトにフリック入力を売却した発明家の稼ぐ思考法」
●株入門マンガ恋する株式相場!VOL.107
「添い遂げる!? 生成AIと米国企業」
●マンガどこから来てどこへ行くのか日本国
「大幅値上げは不可避!日本の水インフラは深刻な危機」
●人気毎月分配型100本の「分配金」データ!
「株価上昇や円安で利回り10%超が16本と急増!」


>>「最新号蔵出し記事」はこちら!


「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!


>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

「キャッシュレス決済」おすすめ比較 太田忠の日本株「中・小型株」アナリスト&ファンドマネジャーとして活躍。「勝つ」ための日本株ポートフォリオの作り方を提案する株式メルマガ&サロン

ダイヤモンド不動産研究所のお役立ち情報

ザイFX!のお役立ち情報

ダイヤモンドZAiオンラインαのお役立ち情報