OPECプラスの減産合意で原油価格が再び上昇。インフレへの強い懸念
原油価格が再び株式市場の火種になりつつある。ロシアのウクライナ侵攻で一時は1バレル130ドルまで大きく上昇していたWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物価格。投機的な動きの解消と景気減速による需要減退の懸念から9月下旬には一時は80ドルを割っていたが、先週再び急騰し90ドル台を回復した。インフレの一番の攪乱要因であった原油価格が沈静化して「やれやれ」と思っていた矢先、再び重要なリスクファクターとして浮上してきた印象だ。
石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの非加盟の主要産油国でつくる「OPECプラス」が先週水曜日(10月5日)、11月に日量200万バレル減産することで合意した。減産合意の背景は当然のことながら、産油国の財政圧迫を招く原油価格の下落に歯止めをかけるためである。一方、エネルギー価格の高騰にこれまで苦しめられてきた欧米諸国の反発は大きく、この合意報道を受けて、米ホワイトハウスは「バイデン大統領は失望している」との声明を出した。「この決定はエネルギー価格上昇ですでに混乱している米国のみならず、低所得や中所得の国々に大きな悪影響をもたらす」とのコメントも出している。
2020年4月20日、原油先物価格が史上初のマイナスとなり世界に衝撃
新型コロナウイルスの流行で、原油を取り巻く経済環境が大きく揺さぶられたのはご存知のとおりである。ところで、皆さんは覚えておられるだろうか? 2020年4月20日の出来事を。
そう、この日のニューヨーク原油先物市場において原油先物価格が史上初めてマイナスになったのだ。5月物の終値が1バレルマイナス37.63ドルとなり、前日から何と55.9ドルの急落。売り手が買い手に1バレル当たり37.63ドル支払って原油を引き取ってもらうという、通常考えられない異常事態が起こった。コロナ禍による世界的な経済活動の停止で原油の需要が激減。それに加えて原油保管スペースの枯渇がその背景にあった。原油の受け渡しに使う取引所の倉庫は満杯となっており、このマイナス価格は原油の貯蔵コストを反映していた。5月物の衝撃価格の形成は、翌日が取引最終日だったこともあったが、我々はひとつの歴史的瞬間に立ち会ったと言えよう。
この事態を受けて、OPECプラスは翌月の2020年5月に世界需要の1割に当たる日量970万バレルの協調減産に踏み切った。その後は経済活動の再開とともに着実に生産を増やしてきたものの、高インフレで再び景気減速による需要減との見方が強まり、今年の9月会合で10月に日量10万バレル減産を決定、そして今年10月の会合では11月に200万バレル減産を決めた。200万バレルは世界需要の2%に該当し、2020年以来の大きな減産規模になる。
原油価格上昇が、ロシアへの経済制裁に著しくブレーキをかける懸念も
さらなる問題点がある。それは、ウクライナ侵攻を続けるロシアへの経済制裁に著しくブレーキがかかるとの懸念だ。大幅な減産を決めたことで原油価格が上昇し、G7(主要7カ国)が決定したロシア産の原油価格への上限措置が果たして機能するかどうか不透明になってきている。原油価格が上昇すれば当然、ロシアの収入増につながる。今は中国やインドが比較的安い価格でロシア産原油を購入しているが、需給が引き締まってくれば、ロシア産原油を高値でも買う動きが出てくる可能性がある。それと世界的な対立構図だ。OPECプラスにはそもそもロシアが加盟しており、中東産油国はロシアと手を組んでいるのだ。したがって、欧米と中東産油国との溝は深まっていると推測される。
今回の減産計画はかなりインパクトがある。実際、市場関係者や専門家からは世界で原油が供給不足に転じ、価格が上昇するとの見方が強まっている。現在は1日に数十万バレルの供給過剰の状態だが、「日量100万バレルの減産をおこなっても、世界的には10万バレルの供給不足」「日量200万バレルの減産をおこなえば深刻な供給不足に陥る」との見解がある。「原油先物価格は再び1バレル110ドルになる」との予想も出ている。再びインフレという火に油を注ぐことになれば、金融市場や経済への影響は甚大だ。
さて、マーケットである。前回のコラムでは『ベアマーケットラリー(下落相場の反発)に要注意』というテーマで話をした。先々週の日経平均は1216円安、先週は1179円高と非常に忙しい動きとなった。4週ぶりの反発であるが、3週間での下落2277円(28214円から25937円へ下落)に対して、先週の上昇は1179円(25937円から27116円へ上昇)となったため、ほぼ半値戻しの状況にある。
現状のインフレを甘く見てはいけない。逆業績相場への動きが今後強まる
相場が大きな下落トレンドの中で時折「ポン」と大きく反発することがあるが、ちょうどその現象が出ている。弱気相場の中の「ダマシ上げ」だ。マーケットがこれまでずっと下落しているので「おや、そろそろ底入れかな?」「あっ、やっと上昇だ。ここは積極的に買いにいかなきゃ」と錯覚しやすいのがベアマーケットラリーの特徴なので注意が必要だ。米国市場は先週金曜日(10月7日)に9月の雇用統計発表を受けてNYダウは630ドル安、ナスダックは420ポイント安と急落しており、早くも冷や水が浴びせられた形だ。現状のインフレを甘く見てはいけない。逆金融相場から逆業績相場への動きが今後強まることが予想される。
ところで、今週10月11日より入国者数の上限撤廃&国内旅行支援策が同時にスタートする。私がDFR(ダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ)で投資助言をおこなっている「勝者のポートフォリオ」でも大いに注目している分野だ。鉄道や空運など我々が重視している銘柄が良い値動きをし始めており、今後のパフォーマンスに期待したい。これまで業績が極めて悪かっただけに収益力改善が顕著になることは確実だ。テーマ株としての注目が高まっていくと予想される。
計1000名が参加したセミナーで「金融相場に向けて準備せよ」と主張
先週の水曜日にDFR、木曜日にGFS(グローバル・フィナンシャル・スクール)にて毎月恒例のオンラインセミナーを開催した。テーマは「逆金融相場から逆業績相場へ ― 覚悟はできているか?」。参加者は合計でちょうど1000名と盛況だった。平日の夜にもかかわらず、これだけの多くの方々がセミナーに参加されたのは驚きだが、マーケットへの関心の高さを表していることをひしひしと感じる。
現状のマーケットへの深い理解、今後予想される展開、ベアマーケットラリーでの注意点、そして投資戦略。今年の春先から私が予想していた通りのシナリオで進んでいるが、ここから先はむしろ「金融相場に向けて準備せよ」「ワクワクする局面がやって来る」という切り口でお話しをした。ご参加いただいた方々には、ご自身の今後の前向きな投資に生かしていただければ幸いである。次回は11月の初旬にセミナーを開催する予定なので、ご関心のある方はぜひとも参加していただきたいと思う。
●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。
※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『太田忠 勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案や銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。原則毎月第一水曜夜は、生配信セミナーを開催。
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