「勝者のゲーム」と資産運用入門

イングランド銀行の突然の「国債購入」に市場は混乱!
ベアマーケットラリー(下落相場の反発)に要注意。
金利上昇に伴う下落相場は当面続き、油断は禁物太田忠の勝者のポートフォリオ 第52回

2022年10月4日公開(2022年10月8日更新)
太田 忠
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英中央銀行が国債売却を決めた後、一転して無制限購入に踏み切った理由

 突然の出来事だった。先週水曜日(9月28日)の19時頃、英国の中央銀行であるイングランド銀行が「英国債を購入する」と発表。電撃的な買いに踏み切り、世界中をあっと言わせた。英30年債は数時間のうちに5%強の金利水準から3%台後半へと急落。通常では考えられない動きである。

 今回の買い入れのポイントは「残存期間20年超の銘柄を対象に、10月14日までの間、購入を無制限に実施し、損失が出た場合は財務省が補填し、市場機能が落ち着けば終了」というものである。同時に、先々週に決定していた国債売却は10月31日まで先送りされた。

 それは英国の債券市場に機能不全の恐れが出てきたからである。喫緊に金融安定を図る必要があった。もちろん昨今のグローバルな金利上昇の影響もあるが、英国独自の理由がある。英国の年金基金が破綻する可能性が出てきたため、それを阻止しなければならないという深刻な事態を抱えていたのだ。詳細は省略するが、年金基金が低金利を前提に国債を運用していたが、「金利急騰&国債価格急落」で大きなピンチを迎えていた。一部の報道では「買い入れ措置がなければ超長期債の利回りは7~8%まで上昇した可能性がある」と伝えている。

英中銀の措置に相場は一旦反発したが、米株の下落止まらず最安値を更新

 なぜイングランド銀行は常識では考えられない矛盾した行動に出たのか? それは先週のコラムで触れた英国のトリプル安(株安、債券安、通貨安)に要因がある。新しく誕生したトラス政権が大規模減税策と同時に国債の増発計画を打ち出した。これにより財政や債券需給の悪化懸念が強まり、先々週の金曜日に金利が急上昇して債券価格は急落、英ポンドは対ドルで37年ぶりの安値を付け、英国株も下げて、普段めったに見られない「トリプル安」になった。「これは世界の金融市場にとって不吉な予兆だ」と私は述べた。

 この緊急措置により金利は急低下した。この日の欧米の株式市場は軒並み下げて始まっていたが、突然の出来事をきっかけに大きく反騰。NYダウは548ドル高となった。しかしながら、もともとの難題である高インフレ&景気悪化という問題は何も解決していない。イングランド銀行の国債買い入れは金融政策の変更ではなく、あくまでも時限的な金融安定策だ。インフレが収まらなければ、更なる大幅利上げを続けなければならない。英国における金利の上昇圧力は止まらない形だ。案の定、翌日木曜日の株式市場は下落し、NYダウは458ドル安と「行って来い」の状況となり、金曜日はさらに500ドル安と水面下に沈んだ。米国市場はNYダウ、S&P500、ナスダックの主要三指数が揃って年初来安値を更新した。

ベアマーケットラリーには要注意。株価が反発しても積極的な買いは禁物

 さて、今回のテーマは「ベアマーケットラリーには要注意」である。相場が大きな下落トレンドの中で時折「ポン」と大きく反発することがあるが、これこそがベアマーケットラリー。すなわち、弱気相場の中のちょっとしたイケイケ局面、いわゆる「ダマシ上げ」である。マーケットがこれまでずっと下落しているので「おや、そろそろ底入れかな?」「あっ、やっと上昇だ。ここは積極的に買いにいかなきゃ」と錯覚しやすいのがベアマーケットラリーである。

 マーケットと付き合うにあたって重要なことがある。それは「過去の教訓に学べ」だ。例えば、2000年からのインターネットバブル崩壊の下落相場ではベアマーケットラリーは6回、そして2008年からのリーマンショックでは5回のラリーがあった。悪材料出尽くしが終わるまで、悲観が極まり投げ売りが殺到するまで下落は続くので、このようなラリーには要注意だ。大局を見誤らないことが大事である。

 すでに今回の下落相場でベアマーケットラリーを我々は経験しているが、金利上昇相場の終着点はまだ見えず、しかも今回のイングランド銀行のような新たな予期せぬ不透明性が出ている。今後再びラリーが出現しても、「まだまだ慎重に」である。前回のコラムで「逆金融相場から逆業績相場への動きが強まる」と述べたが、今後その流れが強まりそうな気配がムンムンしている。皆さんの運用はどのようにされているだろうか?

運用開始1周年の「勝者のポートフォリオ」はベンチマークを大きく凌駕

 私がDFR(ダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ)で投資助言をおこなっている「勝者のポートフォリオ」は9月末で運用を開始してから丸1年が経過した。モデルポートフォリオ形式で実践的な資産運用を個人投資家向けにアドバイスするものだ。おかげさまで、一貫した下落相場の中にあってベンチマークを大きくアウトパフォーム。2022年の年初来では-1.6%(Topix-7.8%、日経平均-9.9%、マザーズ-29.6%)、1年間の累計では-2.6%(Topix-9.6%、日経平均-11.9%、マザーズ-38.3%)となった。

 すでに「逆金融相場&逆業績相場」の備えはできており、来るべき「金融相場」でさらなる飛躍をするための準備を今から着々とおこなっている。毎月第1水曜日の20時から定例のWebセミナーを開催している。会員限定(メルマガ「勝者のポートフォリオ」)のセミナーだが、10日間の無料お試し期間中も参加できるのでご関心のある方はぜひ一度覗いてみて欲しい。回を追うごとに参加者が急増しており、難しいマーケットへの関心の高さを実感している。今後の予想されるマーケットで具体的にどう戦っていくのかについて、毎回詳しく解説しているので十分にご参考にしていただけると思う。

英国の金融政策が世界的な市場のクラッシュの引き金となる可能性も

 最後にトラス政権について触れてみたい。トラス首相は先週木曜日の英BBCラジオで「大規模減税と国債増発を柱とする経済対策は正しい計画だ」と訴えた。国内外から大きな批判を受けても、対策の骨格を変えない姿勢を示している。これは金融市場にとっては危ないことだ。もし世界的な大きなクラッシュを引き起こすとすれば、今回は英国が元凶になる可能性がある。

 それから目につくのが、欧州でイタリアの国債利回りが急騰していることだ。金融引き締めとポピュリズム(大衆迎合主義)色の濃い極右派政権の誕生で、イタリアの財政問題が再び目につくようになった。メローニ党首がイタリア初の女性首相に誕生する可能性がある。

 過去の市場の急変時には中銀が金融緩和に乗り出し支えてきたが、今回は中銀の支援は期待しにくい。インフレの痛みを和らげるための財政出動がもう一段のインフレ要因になるという可能性をはらんでいる点も市場の警戒を強めている。

●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。

※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『太田忠 勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。原則毎月第一水曜夜は、生配信セミナーを開催。

 

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