米長期金利が5.00%を突破。2007年7月以来16年3カ月ぶりの高水準
先週木曜日の米国債券市場。長期金利の指標となる10年物国債利回りが一段と上昇し、2007年7月以来16年3カ月ぶりに5.00%を突破した。同日開かれた米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の講演を受け、金融引き締めが長期化するとの見方が強まったためだ。直近3カ月間の上昇幅は1.3%に達し、急ピッチの上昇をみせている。
パウエル議長の発言内容は「強い経済成長や労働需給が続けば、さらなる金融引き締めが正当化される」「現状の金融政策は引き締め過ぎではない」「今後、慎重に金融政策の検討を続ける」であり、従来の発言を踏襲した形だ。11月の追加利上げの可能性は薄らいだと思わせる内容だったが、FRBが政策金利を長期にわたって高水準に据え置くとの見方が改めて広がった。
米バイデン政権の政治運営も長期金利上昇の一因に
今年の夏以降の長期金利上昇の要因として米国債の格下げ、政府閉鎖を巡る米議会の混乱や下院議長の解任などの政治運営も影響している部分がある。バイデン政権の積極的な財政支出政策で財政赤字が膨らみ、それを穴埋めするための国債発行が増えていることも国債需給の悪化につながっている。国債売りが続き、金利上昇を招いているのだ。
前回のコラムにおいて「株式市場の方向を決めるのは、景気ではなく金利だ」という話をした。米国の株式市場はもちろん金利の影響を受けているが、日本の株式市場はさらに振り回されているとの印象を受ける。日経平均株価は3週前が863円安、2週前が1321円高、そして先週は1056円安となった。非常に激しいボラティリティである。これは米長期金利が4.88%→4.55%→5.00%という大きな変化に晒されたからだ。
中央銀行が行う金融政策が株式市場に強い影響を与える
「株式投資をしている人たちには妙な先入観がある」と私は言った。「景気が良くなると株式市場は上昇」「景気が悪くなると株式市場は下落」との思い込みだ。しかしながら、株式市場の方向性を決めるのは景気ではなく金利である。新聞や雑誌などのマーケット解説の記事を読むと「景気減速懸念が強まり、株式市場は売られた」などのコメントをしばしば目にするが、これは間違いだ。正しくは、まず景気の動きがあって、それに対してFRBなどの中央銀行がどのような金融政策を打ち、株式市場に影響を与えるのか。この一連の流れを押さえておくことが重要だ。
金利水準は金融政策そのものである。経済やインフレが過熱すると金利を引き上げて、好ましくない状態を是正しようとする。これにより株式市場は売られる。一方、景気が悪化すれば経済コストを下げるために金利を引き下げて経済活性化を目指す。これにより株式市場は買われる。前々回のコラム『株式? 債券? 今買うならどっち?』でやや突っ込んだ話をしたのを覚えているだろうか? 株式の益回りと債券の利回りの差であるイールド・スプレッドのことだ。通常は株式の益回りが債券の利回りを上回りイールド・スプレッドが開いて「株は割安、国債は割高」の状況(株式市場は買われる)にあるが、今はイールド・スプレッドが著しく縮小して「株は割高、国債は割安」という事態(株式市場は売られる)が起こっている。
今の市場動向は単純明快。「景気減速が強まれば、株式市場は買われる」
今の株式市場はある意味、非常に単純明快な状況にある。「景気が強すぎるから、容易に金利を引き下げられず、株式市場に逆風」なのが現実だ。なので「景気が鈍化すれば、金利を引き下げやすくなり、株式市場に追い風」となる。したがって、「景気減速懸念が強まり、株式市場は買われる」というロジックになる。「景気減速懸念が強まり、株式市場は売られる」ではないのだ。このあたりが理解できていないと、今の株式市場のことが分からなくなる。
「FRBが政策金利を長期にわたって高水準に据え置く」としても、今からどんどん政策金利を上げるわけではない。インフレ率の代表的指標である消費者物価指数(CPI)はピーク時に9%台まで上昇していたが、今や3%台まで下がっている。これはやはり、金融引き締め策が効いていることを示している。ということは、もう少し時間を置いて過熱する景気にも影響が及ぶと見るのが妥当だ。逆に、金融引き締め策により景気減速や企業業績悪化が出てくれば、今度は金融緩和へ舵が取られる。すなわち金利引き下げである。
相場は着実に良い方向に。感情的に売買せず、泰然自若の姿勢で構えよ
9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)においてドットチャート(FOMC参加者による各年度末の政策金利見通し)が変更されたのはご存知の通りだ。来年の2024年の利下げ回数が従来予定の4回から2回に引き下げられ、「利下げペース鈍化」「金融緩和に消極的」との姿勢が示された。だが、これは現在の逆業績相場から金融相場への扉を開くイベントになる。したがって、株式市場は今後着実に良い方向に向かうのだ。
それを知らずに目先の株式市場の上げ下げに気を取られて、大きく下落する日に「まだまだ下がるかも知れない」と怖くなって株を売り、逆にドカンと上昇する日に「しまった、買い直さなきゃ」と株を買い、そして翌日に急落して「何なんだ、このマーケットは。ふざけている!」と感情任せのトレードをしている個人投資家がたくさん見かけるが、売買の回数が多くなればなるほど「お金を失う」投資家になる。目先にとらわれてはいけない。今はデンと構えて泰然自若の姿勢が重要である。
海外投資家は日本株に強気。「勝者のポートフォリオ」を活用し波に乗れ
ところで、今春から日本の株式市場を牽引している海外投資家たち。バンク・オブ・アメリカが実施した10月の機関投資家調査において、日本株への投資配分が5年ぶりの「強気」水準になっている。また10月第1週は5262億円の現物株を買い越し、第2週も4557億円の買い越しとなった。「小型グロースが急落して含み損だらけだ」と日本の個人投資家たちは嘆いているかもしれないが、それは投資タイミングとマーケット環境が合致していないからであり、金融相場になれば様変わりする。そういうことが分かっていれば、もう少し落ち着いた対応ができるのではないかと私は思う。
さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言をおこなっている「勝者のポートフォリオ」。2021年10月にスタートしてから早くも3年目を迎えた。2023年9月末までの累計パフォーマンスは+28.5%(TOPIX+20.5%、日経平均+12.9%、マザーズ-35.0%:同期間の配当込みベース)と市場に対して大きく勝ち越しており、おかげさまで会員数も急増している。「テンバガー(10倍株)」についてのスペシャル講義もスタートし9本の講義動画を公開中。来たるべき「金融相場」に向けて着々と準備を進めている。資産運用で大きく躍進されたい方々の積極的なご参加をお待ちしております。
●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。
※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『太田忠 勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案や銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。原則毎月第一水曜夜は、生配信セミナーを開催。
国内外で6年連続アナリストランキング1位を獲得した、
トップアナリスト&ファンドマネジャーが
個人投資家だからこそ勝てる
「勝者のポートフォリオ」を提示する、
資産運用メルマガ&サロンが登場!
老後を不安なく過ごすための資産を自助努力で作らざるを得ない時代には資産運用の知識は不可欠。「勝者のポートフォリオ」は、投資の考え方とポートフォリオの提案を行なうメルマガ&会員サービス。週1回程度のメルマガ配信+ポートフォリオ提案とQ&Aも。登録後10日間は無料!