3週連続で下落が続いた株式市場。米長期金利は一時4.88%まで急騰
3週連続で株式市場は下落、もうこんな生活イヤ!―。
先週も日米市場ともに下落する展開となった。下落の根底には金利上昇継続という背景がある。米国の長期金利は一時4.88%と2007年10月以来16年ぶりの高水準、そして日本の長期金利も0.800%と2013年9月以来10年ぶりの水準となっている。金利上昇による株式の割安感低下で「株よりも債券」との見方が株売りに繋がっている。それに加えて、日本市場では年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を中心としたリバランス売りが大きな痛手となった。
資産運用を学び始める頃、必ずといっていいほど「株に投資をする方がいいか、債券に投資をする方がいいかどちらでしょう?」という情報を目にする人は多いと思う。「やっぱりリターンで比べたら、断然、債券より株だよね!」と判断するのが常識的な結論だが、実は今、その常識論が揺らいでいるのだ。特に、米国株に投資をしている人たちは「あなたの株式投資、本当に大丈夫ですか?」という疑問を日々投げかけられている状況にある。
米短期金利はほぼゼロから約5%上昇。高金利から債券投資の魅力高まる?
ご存知のように、米国では2022年3月29日に2年物の国債利回りが10年債を上回る「逆イールド」が発生した。通常はありえない長短金利の逆転現象とされる逆イールドは「景気後退のシグナル」とされており、米連邦準備理事会(FRB)が今後金融引き締めに動くことで景気が冷え込むという展開を投資家がいち早く織り込む動きをみせたのが昨年の3月だった。あれから一貫して2年金利が10年金利を上回る状況が続いており、10月6日時点の2年金利は5.06%である(10年金利は4.80%)。昨年の3月にFRBがゼロ金利を解除する前までは、ほぼゼロ金利だったのに5%も上昇した。「これだけ金利が高いってことは、債券は魅力的じゃない?」という疑問が出てくる。
一方の株式市場。株式市場においても利回りに相当する概念がある。それが「益回り」だ。1株当たり利益を株価で割ったものである。例えば、1株利益が50円で株価が1000円なら益回りは5%となる。ちなみにその逆の株価を1株利益で割ったのが株価収益率(PER)である。皆さん、お気づきだっただろうか?
今はイールド・スプレッドが著しく縮小し、株は割高、国債は割安に
それはさておき、米国株式の益回りは10月6日時点で5.22%(S&P500)。そして2年金利は5.06%である。ほとんど同じだ。もちろん、通常は株式の益回りが債券の利回りを上回っており、イールド・スプレッドが開いて「株は割安、国債は割高」の状況にあるのだが、今はイールド・スプレッドが著しく縮小して「株は割高、国債は割安」という事態が起こっている。
こうした状況で先ほどの疑問、「あなたの株式投資、本当に大丈夫ですか?」に戻ってみよう。早い話が米国人にとってリスク資産である株式と安全資産とされる国債の利回りが同じになっているということだ。米国債は世界のあらゆる債券の中で最もデフォルトリスクが小さく、信頼のおけるリスクフリーの投資先だ。それに比べれば、株式投資は景気悪化リスク、業績悪化リスク、減配リスクはては倒産リスクまで常にはらんでいる。リスクの高い株式と無リスクの国債。「利回りが同じなら、株を売って国債を買う方がいいよね」ということになる。
米株売り、米国債買いは短期は有利かもしれないが、長期は不利な判断に
これで話が決着したか、と言えばそうではない。なぜなら「株式と国債の利回りが同じ」という現象はめったに起こらないからだ。確かにFRBはゼロ金利解除後、猛烈なスピードで利上げしてインフレ沈静化に努めてきた。一時は9%を超えていた消費者物価指数(CPI)は3%台まで低下し、その効果を発揮している。まだ効果を発揮していないのが「強すぎる経済」であり、これが米国金利が足元で上昇している要因になっている。
9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では利上げがおこなれず政策金利は5.25%~5.50%に据え置かれた。FOMCは年内の11月と12月に2回あるが、FRBは「あと1回の利上げ」をする含みを持たせている。仮にあと1回、0.25%の利上げをおこなって政策金利が5.50%~5.75%に達すれば、今回の利上げのゴールに到達する。ドットチャート(FOMCメンバーによる各年度末の政策金利見通し)は来年の2024年に2回の利下げ、再来年の2025年に5回の利下げのシナリオが示されている。
とすれば、「株式と国債の利回りが同じ」だから「株式を売って国債を買う」のは短期的には有利な判断かもしれないが、長期的には不利な判断になることがおわかりいただけると思う。これから国債の利回りは低下し、株式の益回りは現水準あるいはさらに高水準になっていく。イールド・スプレッドが再び拡大することになる。
東証プライムの日本株益回りは6.57%。米S&P500の5.22%より高い
日本の場合はどうか。日本国債の10年利回りは0.800%、一方、2年債の利回りは0.059%。米国とは違って完全な順イールドだ。2年債よりも10年債の利回りが高いので0.800%を国債利回りとしよう。一方、株式の益回りをみると6.57%(東証プライム市場)である。圧倒的に株式の勝利だ。6.57%は米国の5.22%よりも高いリターンである。米国株よりも日本株の方が利回りは高い。これが現状である。
ところで、数週間前に「三井住友銀行がドルの定期預金金利を5.3%にする」というニュースも流れてきた。もちろん為替リスクはあるが…。さあ、あなたなら今どのような投資判断をされるだろうか?
さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言をおこなっている「勝者のポートフォリオ」。2021年10月にスタートしてから早くも3年目を迎えた。2023年9月末までの累計パフォーマンスは+28.5%(TOPIX+20.5%、日経平均+12.9%、マザーズ-35.0%:同期間の配当込みベース)と市場に対して大きく勝ち越しており、おかげさまで会員数も急増している。「テンバガー(10倍株)」についてのスペシャル講義もスタートし6本の講義動画を公開中。来たるべき「金融相場」に向けて着々と準備を進めている。
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10月4日水曜20時よりWebセミナーを開催した。「勝者のポートフォリオ」の毎月の恒例行事で今回が第23回目。平日の夜にもかかわらず316名もの参加があり、Q&Aが盛り上がって予定終了時刻21時30分から1時間半も超過して23時に終了。遅くまでありがとうございました。
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●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。
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