「勝者のゲーム」と資産運用入門

東証再編から1年半が経過。改革は進んだのか?時価総額5000億円以上の企業だけの、本当の「プライム市場」を創設し、海外投資家へ訴求せよ!太田忠の勝者のポートフォリオ 第104回

2023年10月3日公開(2023年10月2日更新)
太田 忠
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東証再編から1年半が経過。市場活性化の狙いを果たせているのかを検証

 2022年4月にスタートした東京証券取引所の市場改革。従来の東証1部、東証2部、ジャスダック、マザーズという区分を廃止し、プライム、スタンダード、グロースの3つに市場を再編。プライムは大株主や役員などの保有分を除いた流通株式ベースで時価総額100億円以上、スタンダードは10億円以上といった基準を設けた。その際に、新市場の基準を満たしていなくても暫定的措置として上場を認めた企業がプライムで269社、スタンダードで200社、グロースで41社あり、各市場の1~2割を占めていた(2022年12月末時点)。

 一番の目玉はもちろんプライム市場の創設である。「世界の主要市場の時価総額と比較すると、東京は欧米に大きく水をあけられている」「プライム市場を新設し、そこに日本有数のグローバル企業を上場させることで、海外投資家を中心に多くのマネーを呼び込み市場を活性化したい」というのが東証再編の狙いであったが、あれから1年半が経過したのでその後の動きを追ってみたい。

プライム市場は1600社程度。旧東証1部からの減少率は25%に留まる

 再編前の東証1部企業は2185社だった。プライム市場の船出は1838社(2022年12月末)。もちろんこの中には、先ほど述べた新市場基準を満たしておらず暫定的措置として認められた企業が269社含まれていた。「現在の東証1部の上場社数は2185社あり、全体の6割が集中している。これは海外の主要市場と比べても企業数が多い」と問題視していたはずだが、出だしからこのような状況だった。

 暫定的措置の269社はどうなったのだろうか? 先週の9月26日時点で離脱組が167社に上っておりスタンダード市場への移行を選択。最終的にはほとんどが離脱してプライム市場は1600社程度になると見られている。要するに旧東証1部2185社からプライム1600社へと減少率は約4分の1に留まるのだ。

 これで一体何が変わったと言えるのだろうか? 最大の問題は、プライムという市場の名に値しない企業が多数入っていることである。プライムは「最良の」を意味する言葉だ。それが本当のプライム企業とごちゃまぜになって多数派を占めているのだ。さらに私が非常に残念に思うのは、スタンダード、グロースを設けたことで、従来の東証2部、ジャスダック、マザーズという区分がなくなり、東証2部とジャスダックのベンチマークが消滅したことだ。マザーズ指数はマザーズ先物があるため何とか継続されているが、私のような小型株をスペシャリストとする者にとっては小型株を体現する指数がなくなってしまったのは痛い。東証2部、ジャスダック、マザーズはそれぞれ特徴が異なり、ベンチマークの動きが小型株市場の微妙な動向を伝えてくれていた。それが無くなってしまった。

時価総額5000億円以上の企業をプライムと定義すれば250社に絞れる

 私の想いは「日本に本当のプライム市場が欲しい!」である。ちなみに私の手元に2021年末時点での市場別時価総額データがある。プライム市場1社あたりの時価総額の中央値は、再編前の東証1部が446億円、再編後のプライムは599億円。150億円ほど増えているが、599億円という中央値はとてつもなく小さい規模だ。グローバルマーケットの中央値を見るとNY市場は3269億円、ナスダックのグローバルセレクトは1999億円、ロンドンのプレミアムは1948億円だ。いずれも2000億円~3000億円の規模があり、東証プライムの3倍~5倍ある。

 海外投資家に向けて「日本には多くの魅力的な企業があり、株価は割安に放置されているので、注目してほしい!」というコンセプトを明確に打ち出すとすれば、私なら時価総額5000億円以上の企業をプライムとして定義する。こうすれば対象企業は約250社に絞られ、時価総額の中央値も1兆円を超える水準になる。もちろん、GAFAMのように100兆円、200兆円を超えるような企業はないにせよ、1兆円クラスの企業が250社存在すれば、海外投資家への訴求力も高まる。

旧区分の最上位に「東証プライム」を加えるだけで改革は事足りた

 実現するために最もスムーズなのは、東証1部の上に時価総額5000億円以上のまさしく「東証プライム市場」を作り、日本を代表する企業群のグループを形成することだったと思う。とにかく、グローバルに通用する企業群にスポットを当てる東証プライムを1つ追加するだけで済ませておけば、ベンチマークの消滅問題なども発生しなかったはずだ。旧区分の最上位に「東証プライム」を加えるだけで改革は事足りた。少なくとも今回の曖昧な市場再編よりも、もっともっと明確なメッセージが出せたはずだ。そして、東証プライムの下に位置する東証1部企業には頑張って東証プライムに入ってもらうようにハッパをかけ、企業側も投資家の期待に応えるためグローバル展開を注力する、こういうムードを作り出して欲しかった。

 東証が今年3月に打ち出したPBR改革は大歓迎である。日本企業への注目を高め、企業も努力し始めた。ただし、今のプライム市場は企業数が多すぎてプライムの名に値しない企業が多数入っているため、東証プライム市場指数はベンチマークの意味をなさない。本当の意味で厳選された「東証プライム市場」を作れば、日本を代表する指数のTOPIXには投資できないが、「東証プライム指数」には投資したいという海外投資家のニーズにも応えられただろう。「日本に投資するなら、まずは東証プライム指数に投資するのが基本」という認知を得ることができたはずだ。そういう意味においても残念な結果しか出ていない。今のままでは、海外投資家への訴求力は画竜点睛を欠いているというのが私の見方だ。

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