「勝者のゲーム」と資産運用入門

「ショボい」金融緩和に株式市場は失望感。特に高PERのハイテク株やグロース株には重荷。大型バリュー株優位のトレンドは当面続く!太田忠の勝者のポートフォリオ 第103回

2023年9月26日公開(2023年9月25日更新)
太田 忠
facebook-share
twitter-icon
このエントリーをはてなブックマークに追加
RSS最新記事

先週は株式市場の先行きを決めるFOMCと日銀の金融政策会合が開催

 日経平均は1131円安、NYダウは655ドル安に沈む―。

 先週は非常に重要な1週間となった。米国、英国、スイス、日本の4カ国の中央銀行が金融政策を発表する大きなイベントが相次いだからだ。もちろん日本の株式市場にとって最も重要なのが米国の米連邦公開市場委員会(FOMC)、その次が日銀の金融政策決定会合である。順番を間違えてはいけない。日本の株式市場の先行きを決める最も大きな要素は日銀ではなく米連邦準備理事会(FRB)の金融政策だ。

 FOMCは年に8回開催され、9月開催の今回は6回目にあたる。結果は予想通り、現状の政策金利5.25%~5.50%が据え置かれて利上げは行われなかった。「あーやれやれ、これで株式市場にはプラスだ」と早まってはいけない。同時に発表されたFOMCメンバーによる政策金利見通し「ドットチャート」の内容がタカ派的と受け止められ、即座に株安・ドル高という反応が起こった。

2024年の利下げペースが鈍化し「ショボい」金融緩和になることを嫌気

 ドットチャートは各年末における政策金利(中央値)の見通しである。2023年末は5.50%~5.75%。年内にあと1回の利上げに含みを残したのは従来のシナリオ通りだが、2024年末は従来の4.50%~4.75%から5.00%~5.25%へと0.50%引き上げられた。これは何を意味するか? 要するに2024年は「4回の利下げをやりますよ」とのシナリオから「2回の利下げだけですよ」と変更されたのだ。利下げスピードが鈍化して「大胆な」金融緩和から「ショボい」金融緩和になるとのメッセージがFRBから出されたわけである。さらに翌年の2025年末も従来の3.25%~3.50%から3.75%~4.00%に0.50%引き上げられている(こちらは5回の利下げシナリオに変わりなし)。

 従来予想より政策金利の想定が引き上げられた理由は何だろうか? それはズバリ「景気が強い」ためである。FRBによる経済見通しを点検すると、実質国内総生産(GDP)は2023年が1.0%→2.1%、2024年が1.1%→1.5%に引き上げられた。インフレ見通しは、コア個人消費支出(PCE)は2023年が3.9%→3.7%とやや引き下げられ、2024年は2.6%→2.6%と据え置かれた。ほぼ期待通りにインフレ鈍化が進んでいることを表している。

<FOMC結果発表後のパウエル議長の会見ポイント>
・昨年3月のゼロ金利解除から5.25%まで利上げを行ったが、金融引き締めの完全な効果はまだ見えていない
・経済は拡大を続けており、特に個人消費は強い
・インフレ圧力は和らいできたが、物価目標の2%まで低下させるためにはまだ長い道のりがある
・必要があれば、さらに追加利上げをする用意がある

一方の日銀は大規模金融緩和を維持。円安・ドル高トレンドは不変か

 今回のFOMCを受けて、大きく反応したのが債券市場である。米長期金利は4.49%まで上昇し2007年11月以来16年ぶりの高水準、そして国内長期金利は0.745%と2013年9月以来10年ぶりの高水準となった。一方、先週金曜日に発表された日銀の金融政策決定会合の結果は、大規模金融緩和維持である。9月9日の読売新聞のインタビュー記事を受けて、市場に広がっていたマイナス金利の早期解除の思惑を牽制する形で「政策の修正時期や具体的な対応について到底、決め打ちはできない」と植田和男総裁は語った。昨今再び増勢を続けている円安・ドル高の方向性に警鐘を鳴らすような内容ではなかった。

 FRBにはあと1回の利上げ余地が0.25%、そして日銀が-0.1%のマイナス金利を解除してゼロ金利にすれば利上げは0.1%で0.15%の日米金利格差が生じるが、その0.1%の利上げを行わないとすれば金利格差は0.25%に拡大する。円安・ドル高が進むのは当然のことである。148円を超えてから思ったほど円安が進まないのは政府・日銀による円買い介入への警戒があるからだ。

金利高止まりに失望感。高PERのハイテク株やグロース株が売り込まれる

 ところで、冒頭の「日経平均は1131円安、NYダウは655ドル安に沈む―。」であるが、株式市場には失望感が漂っている。金利の高止まりは特に高PERのハイテク株やグロース株にとっては株価の割高を意味する(債券と比較してイールドスプレッドが大きくなることで株の割高感が意識される)。ナスダックやマザーズ指数が大きく売られているのはこのためだ。マザーズ指数は年初来安値を付ける展開となっている。2024年からは金融緩和がなされて「金融相場」入りが期待されるが「グロース株のダイナミックな活躍が市場の期待よりも小さくなるかも…」というメッセージでもある。

 太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言をおこなっている「勝者のポートフォリオ」では来たるべき金融相場を見据えてテンバガー候補銘柄を組み入れているが、パフォーマンスは冴えない。ほんのわずかな投資ウェートに留めているが、勇み足はまだ不要だ。一方、大型バリューは相変わらず好調だ。特に我々が期待を寄せている3大セクターは先週の厳しいマーケットでも堅調だった。大型バリュー優位のトレンドが当面は続きそうだ。

「勝者のポートフォリオ」は開始2年でパフォーマンスは+31.3%と好調

 快進撃を続けている「勝者のポートフォリオ」。スタートしてから間もなく2年になるが、おかげさまでパフォーマンスは+31.3%(9月23日時点)と好調で会員数も大きく増加している。「テンバガー(10倍株)」についてのスペシャル講義もスタートし6本の講義動画を公開中。来たるべき「金融相場」に向けても着々と準備を進めている。

 10月4日(水)20時より毎月恒例のWebセミナーを開催する。今回のテーマは『勝ち組投資家になるために大切なこと』。行き当たりばったりの投資では、全く儲からない投資家になってしまう。それを是正するにはどうすればよいか、についてお話したい。また、このコラムでは個別銘柄の話はなかなかできないが、セミナーでは今後株価の大きな上昇が期待できる銘柄についても存分にお話する予定だ。会員限定だが、10日間の無料お試し期間を使えば誰でも参加可能である。セミナー当日14時までのお申込み(15時URL配信)。なお、会員の方々は後日アーカイブでの視聴ならびにプレゼンテーションPDFもご利用いただけるようになっている。

●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。

※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『太田忠 勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。原則毎月第一水曜夜は、生配信セミナーを開催。

 

国内外で6年連続アナリストランキング1位を獲得した、
トップアナリスト&ファンドマネジャーが
個人投資家だからこそ勝てる

「勝者のポートフォリオ」を提示する、
資産運用メルマガ&サロンが登場!

老後を不安なく過ごすための資産を自助努力で作らざるを得ない時代には資産運用の知識は不可欠。「勝者のポートフォリオ」は、投資の考え方とポートフォリオの提案を行なうメルマガ&会員サービス週1回程度のメルマガ配信+ポートフォリオ提案とQ&Aも。登録後10日間は無料!

太田忠の勝者のポートフォリオ

10日間無料 詳細はこちら※外部サイトに移動します


「勝者のゲーム」と資産運用入門 バックナンバー

»もっと見る

【クレジットカード・オブ・ザ・イヤー 2023年版】2人の専門家がおすすめの「最優秀カード」が決定!2022年の最強クレジットカード(全8部門)を公開!
【クレジットカード・オブ・ザ・イヤー 2023年版】2人の専門家がおすすめの「最優秀カード」が決定!2021年の最強クレジットカード(全8部門)を公開! 最短翌日!口座開設が早い証券会社は? おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き
ZAiオンライン アクセスランキング
1カ月
1週間
24時間
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

攻めと守りの高配当株
NISAの攻略法
高配当株トップ300

9月号7月20日発売
定価780円(税込)
◆購入はコチラ!

楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!Amazonで購入される方はこちら!

[攻めと守りの高配当株]
◎巻頭企画
誌上初対談!
優待株で5億円超!桐谷広人さん×累計利益100億円!テスタさん

「どんな相場でも勝てる戦略で年後半に挑む」

◎第1特集
インフレに強い!NISAにもピッタリ!
攻めと守りの高配当株
●守り:持ちっぱなしOK!ド安定高配当株63

・過去最高に稼ぐ高配当株
・減配しない10年配当株

●攻め:配当と値上がり益を両取り!

欲バリ高配当株29
・さらに増配する高配当株
・稼ぐチカラがある高配当株
・中小型の増配株

●高配当株の達人 かんちさんの投資術
●隠れ高配当株に注目!
●武藤十夢のアガる高配当株教えて!


◎第2特集
勝ち組8人のリアルバイ!
8人8色の攻略法を大公開!NISAで何買ってる?
●成長投資枠は投信・ETFメイン
米高配当ETFをスポット購入/高配当株投信を積立など
●成長投資枠は株メイン
割安&高成長の配当株を長期保有/優良IPO株の当選待ち!など


◎第3特集
つみたて投資枠投信の6カ月の通信簿
●積立てた時の成績上位50本ランキング
●好成績で発進した8本を分析!

 

◎第4特集
株主総会2024-37社の突撃レポート!
●桐谷さんも参戦!要注目のお騒がせ株
ダイドーリミテッド/日産自動車/ニデック
●みんなが持ってる人気株
東京エレクトロン/ソフトバンクG/ソニーグループほか
●気になる高配当&金融株
三井住友FG/三菱HCキャピタル/オリックス
●ザイの新人記者がNTTの総会に初参加!
●2024年株主総会の4つの特徴


【別冊付録】
買いか売りかをズバリ判定!
利回り4.1%以上ぜんぶ載せ!
高配当株トップ300大診断

 

◎連載も充実!

◆おカネの本音!VOL.25ジャスティンさん
「働き方の常識を更新 エジプトで暮らせば月収5万円で悠々自適」
◆10倍株を探せ!IPO株研究所2024年6月編
「新興株市場の底打ちでIPO株も取引が活発化」
◆株入門マンガ恋する株式相場!VOL.93
「サイバー攻撃でヤりたい放題!?」
◆マンガどこから来てどこへ行くのか日本国
「困った場合の救済策も!奨学金を人生の重しにしない方法」
◆人気毎月分配型100本の「分配金」速報データ


>>「最新号蔵出し記事」はこちら!
>>【重要】お盆期間中のお届け遅延による定期購読誌配達への影響について


「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!


>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

【法人カード・オブ・ザ・イヤー2023】 クレジットカードの専門家が選んだ 2023年おすすめ「法人カード」を発表! 「キャッシュレス決済」おすすめ比較 太田忠の日本株「中・小型株」アナリスト&ファンドマネジャーとして活躍。「勝つ」ための日本株ポートフォリオの作り方を提案する株式メルマガ&サロン

ダイヤモンド不動産研究所のお役立ち情報

ザイFX!のお役立ち情報

ダイヤモンドZAiオンラインαのお役立ち情報