乱高下を繰り返す日経平均株価。白旗を挙げて降参する個人投資家も散見
3連休明けの日経平均は大幅3日続伸で1500円高に―。
先週の日経平均株価の動きに戸惑った投資家たちは多かったようだ。ちょうど3連休の初日の10月7日(土)に突然始まった中東での戦闘。パレスチナのガザ地区を実効支配するハマスが、イスラエルに向けて攻撃を開始し、ネタニヤフ首相が「戦争状態にある」との声明を出した。「いやー、これは大変なことになった」「えっ、また日経平均は急落するの?」「3連休なのに、ぜんぜん楽しめない」などと言ったイヤなムードになっていた。
ところが、である。先週火曜日の日経平均は751円高、水曜日は189円高、木曜日も558円高と3日続けて上昇して1500円高となったのだ。思い出していただきたい。先々週の日経平均は863円安となっており、特に10月4日(水)は711円安と急落して5月17日以来5カ月ぶりの安値を付けた。個人投資家によるパニック売りや投げ売りが久々に見られ、白旗を上げて降参する投資家たちが大量に出た。多くの人たちは耐えられなくなって現物株売却や信用買いの処分、あるいはもう一段の下落に備えてインバース型ETFを買ったり、信用売りをしたりして「やれやれ、これでもう大丈夫だ」と思ったに違いない。
値動きに右往左往するドタバタ売買ではダメ。株価が動く理屈を理解せよ
しかしながら、いきなりのV字反転。「えー、何でこんなに上がるの?」「先週売った途端に急騰してるー、大ショック!」「日経平均インバースETFを買って大やられだ」「信用売りして大損だ~」などという悲鳴がSNS上で溢れた。これではダメだ。値動きだけでドタバタ売買していると往々にして逆の結果が出る。株式市場の動きには理屈がある。それを知っていれば、大慌てすることもない。このV字反転の要因を見てみよう。
まず先々週までの過去3週間における下落要因は何か? それは金利上昇である。9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)においてドットチャート(FOMC参加者による各年度末の政策金利見通し)が変更された。来年2024年の利下げ回数が従来予定の4回から2回に引き下げられ、「利下げペース鈍化」「金融緩和に消極的」との姿勢が示されたことで金融引き締め政策が長引くとの思惑が働き、株式市場にとっては逆風であった。実際にこの間の米国の長期金利の動きを見てみると4.2%台から4.88%へと16年ぶりの高水準にまで上昇した。それに加え、日本市場では機関投資家によるリバランス売りという特殊要因がマイナスとなった。
ところが先週は事態が一変した。米連邦準備理事会(FRB)の高官による相次ぐ追加利上げ慎重発言で利上げは終了したとの見方が強まった。マーケット参加者予想による11月のFOMCの利上げ確率が10%を下回り「金利は据え置き」シナリオが現実的となった。長期金利は先々週の4.88%から先週は一気に4.55%まで急低下。これが3日間で1500円もの日経平均が上昇した正体である。
株式市場にとって一番大事なのは景気動向ではなく、金利動向である
株式投資をしている人たちには妙な先入観がある。それは「景気が良くなると株式市場は上昇」「景気が悪くなると株式市場は下落」という思い込みである。しかし、それはかなり不確かな根拠である。マーケットには「金利が低下すると株式市場は上昇」「金利が上昇すると株式市場は下落」という大前提がある。株式市場にとって一番大事なのは景気ではなく、金利である。「えーっ、そんなこと知らなかったよー」という人は今回の事態をきっかけにして考えを改めて欲しい。確かに新聞などのマーケット解説の記事を読んでいても「景気減速懸念が強まり、株式市場は売られた」というのを目にするが、これは間違いだ。
正しくは、まず景気の動きがあって、それにFRBなどの中央銀行がどのような金融政策を打ち、株式市場に影響を与えるのか? この一連の流れを押さえておくのが重要である。今の株式市場は非常に単純明快になっている。「景気が強すぎるから、容易に金利を引き下げられず、株式市場に逆風」である。なので「景気が鈍化すれば、金利を引き下げやすくなり、株式市場に追い風」となる。したがって、「景気減速懸念が強まり、株式市場は買われた」というロジックだ。皆さん、お分かりになるだろうか?
先週大きく戻した日経平均は金曜日に急反落。その要因も金利上昇にあり
さて、話を初めに戻す。先週の火曜日から木曜日まで大きく上昇した日経平均だが、金曜日は178円安と下落した。好決算を発表したファーストリテイリングが5.8%上昇し、わずか1銘柄で194円の押し上げ効果があったため、これを除くと実際は372円安となる。急反落だ。その要因はやはり金利にある。前日の米国市場で長期金利が4.55%から4.70%へと一気に0.15%も上昇した。これには9月の消費者物価指数(CPI)が絡んでいる。前年同月比+3.7%と予想の+3.6%をわずかながらも上回ったことでインフレ懸念が再燃した。木曜日の米国市場は下落し、金曜日の日本市場も下落した。金利に非常に敏感なマーケットになっている。
先週の金曜日の日経平均の終値は3万2315円。これで9月15日の直近高値3万3533円から10月4日の直近安値3万526円までの3007円下落(-9.0%)に対して59%戻しとなった。「半値戻しは全戻し」という相場格言がある。もちろんすぐに全戻しを期待するのは楽観的だが、金利動向に翻弄されながらも着実に逆業績相場から金融相場へ向けての歩みを進めると考えている。マーケットサイクルの考え方ももちろん大前提は「株式市場は景気ではなく金利で決まる」である。
「勝者のポートフォリオ」は3年目に突入。市場平均を大きく勝ち越し!
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●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。
※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『太田忠 勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案や銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。原則毎月第一水曜夜は、生配信セミナーを開催。
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