アマゾンのライバルになりそうな中国株が存在! AIが発展すると移民が必要なくなる!?
2023年12月12日(火)、米国・シアトルからメルマガ&オンラインサロン「米国株&世界の株に投資しよう!」で情報配信をしている元フィデリティ投信トップアナリストのポール・サイさんが、ストックボイス社が手掛ける経済・マーケット番組「WORLD MARKETZ」(TOKYO MX 月~金 22時~23時)に生出演した。
前回の放送で、ポールさんは日米株のセクターの年初来パフォーマンスを振り返り、アメリカでは来年(2024年)もAIのトレンドが続きそうである一方、日本はデフレからインフレに経済全体の状況が大きく変わり、スタグフレーションになる可能性が高いため、日本人は資産配分のやり方を考える必要があることを教えてくれた。
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今回の放送では、11月に亡くなった伝説の投資家チャーリー・マンガー(氏は省略)からポールさんが学んだ、投資に関する発見や考え方を紹介。アメリカ株はAIのトレンドで来年もよさそうだけれど、中国株のなかでテクノロジーを駆使して急成長し、アマゾンのライバルになりそうな銘柄があったり、AIが発展すると移民に変化が出てきたりするそうなので、さっそくチェックしていこう。
ウォーレン・バフェットの右腕として知られたチャーリー・マンガーの3つの教えとは?
番組冒頭は、バークシャー・ハサウェイのナンバー2で、ウォーレン・バフェットの右腕として知られた伝説の投資家チャーリー・マンガーが、11月に99歳で亡くなったという話題に。
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ポールさんはバークシャー・ハサウェイの年次株主総会の中継を毎年見ていたほど、マンガーの投資に対する発見や考え方に注目していて、ポールさんの心に響いたマンガーの教えが3つあるという。
1つ目は、大きな利益は買いと売りにあるのではなく、待つことにあるということ。
人間には上がっているものを買い、下がっているものを売る傾向があり、それをすると高く買い、安く売って損をしてしまうため、頻繁に売り買いせずにタイミングを待ったほうがいいという教えのようだ。
2つ目は、投資成功の鍵は何年も何十年も何もせず、チャンスがついに訪れたときには、非常に積極的に買い入れるということ。
投資のタイミングはいつでも来るわけではなく、そのタイミングが来た時には、それをしっかり認識してすごく積極的に買わなければならないという教えのようだ。1つ目の教えにも関連することで、下がった時、安くなった時に買わなければならないのだという。
3つ目は、お金とやりたいことのバランスをとる必要があるということ。
マンガーが亡くなる1週間前のインタビューで、今までで一番残念に思っていること、やりたくてもやれなかったことは何ですかと聞かれたマンガーは、100キロのマグロを釣りたかったと答えたそう。いくら払ってでもそれを体験したかったのに、今はもう99歳で体が動かなくなってしまい、実際に船に乗って釣りに行こうとしても、あまりいい経験にはならないことを残念がっていたそうだ。
人間の寿命は限られていて、人生は1つしかないから、やりたいと思うことにお金や時間がかかったとしても、ときにはそれを後回しにせず、バランスを取ってやっていかなければならないという教えのようだ。
金利低下でリバウンドし始めたセクターは商業用不動産と小型株
続いては、マーケットの話に。11月以降のS&P500の強さは基本的にビッグテックのAIトレンドが影響しているのか、番組MCの渡部一実さんがポールさんに質問した。
ポールさん曰く、今年全体で見るとビッグテックがAIのトレンドでリードしていて、そのトレンドは来年も続きそうだけれど、最近の上昇はビッグテックから少し変わり映えして、米金利低下でリバウンドし始めたセクターがあるという。
その1つが商業用不動産だ。商業用不動産は金利上昇で大変なことになると心配されていたけれど、金利が低下してきたことでその心配が緩和するそう。
商業用不動産の指標として見ているのは、VNQというバンガードの不動産ETFで、昨年はマイナス26%、今年は横ばいくらいだったので、来年は少し回復してくるのではないかとポールさんは見ている。
金利低下でリバウンドし始めたもう1つのセクターは小型株だ。
小型株をラッセル2000で見てみると、昨年はマイナス16%、今年は横ばいくらいで、金利が低下しそうな来年はチャンスがありそうとのことだった。
また、原油価格が下落したことで、エネルギーセクターが今年はあまり良くなかったけれど、いろいろな地政学リスクも残っているなかで、原油価格が上場する可能性があるため、エネルギーセクターは来年少し回復する余地があるようだ。
PDDは単純な中国株ではなく、世界株になる途中! アマゾンのライバルになりそう
ここで、ポールさんが注目している中国株の話題に。
中国株は地政学リスクで結構安くなっていて、マクロ環境と中国経済そのものの心配は残っているものの、その中で株価がかなり動いている銘柄があるという。
それが「PDD」というイーコマースの会社だ。「Temu」というショッピングアプリを通じて、中国の工場とアメリカの消費者を直接つなげ、リアルタイムの需要をインターネットやテクノロジー、ソーシャルメディアを使って把握し、モノを売る会社で、アリババの時価総額を抜くほど急成長しているそう。
そんなPDDは、元グーグルのエンジニアが作ったテクノロジー中心の会社だそう。今まではアマゾンなどアメリカのイーコマース会社が中国の生産能力の架け橋になっていたけれど、今はPDDのような中国のテクノロジー会社が中国の工場と直接やり取りしているため、アメリカの大きなイーコマースの会社にとってライバルになっていきそうとのこと。
つまり、ポールさんに言わせると、PDDは単純な中国株ではなく、世界株になりつつあって、地政学リスクも残っているけれど、注目して動きを見ていく必要性があるようだ。ただ、決算が良かったことですでに上昇していて、買うタイミングには気を付けたいとのことだった。
そして、ポールさんが注目するもう1つの中国株が「SHEIN」だ。
SHEINはアパレルの会社で、PDDと同様にソーシャルメディアなどを利用してトレンドをリアルタイムで掴み、中国の小さい工場で商品を作って売るというファストファッションの会社なのだそう。
ファッション業界では通常、3割が売れないまま残るのだが、SHEINでは売れ残りが2%しかないところが画期的で、10年間で急成長してきて注目しているとのことだった。
記者が調べたところ、SHIENは11月末に米当局へ上場を申請し、来年の上場を目指しているようなので、気になる方は動向をチェックしてみるといいだろう。
イスラエルがハマスに勝っても中東が安定するわけではない。戦争という手段を取ること自体、実質負けなのかも
次に、中東でハマスとイスラエルの戦争が続いていることから地政学リスクの話題に。
ポールさんは、イスラエルがガザを圧迫して勝っているように表面的には見えるけれど、戦略的にはイスラエルが負けているかもしれないと考えている。
なぜかというと、1万4000人の死者のほとんどは子供や女性、学生で、それは将来のテロリストの卵を作っていることになるからだそう。
昔の人類は相手を殺して争いを解決してきたけれど、現代の世界では全員殺すわけにもいかないため、残った人たちが平和に共存しなければいけないのに、それもできないとなると、不安定なものがずっと続いてしまう。
つまり、イスラエルがこの戦争に勝ったとしても、中東が安定するわけではないし、戦争という手段を取ること自体、実質負けなのかもしれないとのことだった。
AIでいろいろなことが自動化されると、移民が必要なくなり政治にも影響が出てきそう
最後は、AIと移民の話に。
「AIと移民」とだけ聞くと、両者にいったいなんの関係があるのかと思ってしまうが、アメリカはエンジニアとしてインドやメキシコの移民をたくさん雇っており、AIが発展することでそうした移民が必要なくなってくるかもしれないとポールさん。
現在のアメリカはヒスパニック系の移民が多く、アメリカの文化も単純なところだとメキシコ料理がブームになっていたり、アジア系の移民も増えてアジアに対する考え方も変わってきており、それはアメリカ大統領選にも影響してくるとのこと。
ポールさんもAIを完全に把握できているわけではないけれど、これからAIでいろいろなことが自動化されると、アメリカに限らず先進国で移民が必要なくなり、社会構造が変わって政治にも影響が出てくる可能性があるということだった。
ここまで、12月12日(火)放送の「WORLD MARKETZ」に電話出演した、ポールさんのマーケット解説を中心にお届けした。
冒頭でも紹介したとおり、ポールさんはメルマガ&オンラインサロン「米国株&世界の株に投資しよう!」で情報配信をしている。登録後10日間は無料だ。米国株投資をしてみたい、すでにしているけどもっと現地からの情報が欲しい、ポールさんが推奨する個別銘柄やポートフォリオ(2022年8月からのパフォーマンスは+60%以上)を見てみたいという人は、こちらをぜひ登録してみてほしい。
(ザイ投資戦略メルマガ)
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガ「米国株&世界の株に投資しよう!」を配信中