OpenAIで大騒動が起きました。OpenAIのCEO、サム・アルトマンが取締役会でいきなり解任されたのです。
OpenAI大騒動! サム・アルトマンとグレッグ・ブロックマンはOpenAIを去り、マイクロソフトへ
その後、サム・アルトマンはマイクロソフトに採用されることがいったん発表されました。共同創業者のグレッグ・ブロックマンもOpenAIを辞任したあと、マイクロソフトに採用されることが発表されました。2人はマイクロソフトのAIチームを担当する見込みでした。
そして、500人以上のOpenAI社員が、サム・アルトマンが会社に戻らなければ、OpenAIを辞めると宣言しています。
これでAIビジネスの構図は大きく変わりました。また、ソーシャル・エンタープライズ(社会的企業)(※)の在り方にも影響がありました。
(※編集部注:「ソーシャル・エンタープライズ」とは利益の追求だけでなく、社会的な問題解決を目指す企業のこと)
元々のOpenAIは人類全体の利益になるような方法でデジタルインテリジェンスを進歩させることを目指した非営利団体であり、営利部門はなかった
OpenAIは当初、非営利団体として始まり、「人類全体の利益になるような方法でデジタルインテリジェンスを進歩させること」を目指していました。2015年には、出資者から10億ドルの資金が約束されました。しかし、2019年までに、その野望を達成するためには大量のクラウドコンピューティングパワーと大規模な投資が必要であることが認識されました。
この課題に対処するため、非営利のOpenAIは営利部門を作り、投資家が会社に出資し、リターンが期待できるようにしました。しかし、非営利部門の取締役会が全社を統治し、OpenAIの基本的な価値観に沿った行動を確保するという特異なパートナーシップが形成されました。
これにより、OpenAIは人類全体に利益をもたらすという目標に向かって動きつつ、大規模な資金を引きつけることが可能になりました。この営利部門のしくみによって、マイクロソフトはOpenAIに総計100億ドル以上の出資を行いました。
マイクロソフトはほぼダダで、OpenAIを買収したに等しいことになった
サム・アルトマンが解雇された理由は完全にははっきりとしていないですが、おそらくアルトマンは、もう少しAIを営利の方向に発展させようとしたのでしょう。
会社側の声明によると、アルトマン退任の正式な理由は、「アルトマン氏が取締役会とのコミュニケーションにおいて一貫して率直さを欠き、取締役会の責任遂行を妨げた」と結論されたからとのことです。そして、「取締役会は、彼がOpenAIを引き続き率いる能力を信頼していません」とも述べられています。
私はすべてのOpenAIの人たちがマイクロソフトにいくわけでもないと思います。しかし、大半はマイクロソフトに行くと考えていました。
そうなれば、マイクロソフトはほぼダダで、OpenAIを買収したに等しいことになるところでした。人材を採用しているだけであって、会社を買収したわけではありませんので、独占禁止法に抵触することもないです。
マイクロソフトは元々、OpenAIのソースコードへの権利も持っているので、一から開発しなければいけないわけでもないです。
株式市場もこれらのことをわかっていて、マイクロソフトの株価は大きく上昇しました。危機の中にチャンスがあるといういい例です。
一部のOpenAIの社員はマイクロソフト以外の会社、たとえば、メタやグーグルに採用されると思います。これによって、AIの開発は全体的に加速するかもしれません。
[参考記事]
●NVIDIAの時価総額が1兆ドル超え! 現在のAIはインターネット初期と同じ感覚で、これから先は長い! 周辺の注目銘柄は、大きいソフトウェアの会社
●AIは本物で、これから一気に発展する! 恩恵を受けやすいのは、大型テック株やテスラ。これから先、3年、5年、10年と長いテーマになる!
ただ、本稿をここまで書いた時、やっぱりサム・アルトマンがOpenAIに復帰するとのニュースが入ってきました。状況はめまぐるしく二転三転しています。
OpenAIの危機はAI業界全体に投資している株式投資家にとってプラス
AIは人類にとって危険な面もあるのは確かです。
しかし、「囚人のジレンマ」のような状況で、AI開発企業は開発を抑制的に行うよりも、遠慮なく開発を進めた方が利益が得られますので、人類全体にとってはある程度、抑制しながら開発していった方がいいとわかっていても、開発競争に制御は効きづらいことになるのではないかと思います。
結局、OpenAIの危機はAI業界全体に投資している株式投資家にとってプラスだ思います。
あと、OpenAIは営利の会社と非営利の組織を組み合わせて構成されているわけですが、アメリカのような資本主義が真に浸透している資本主義社会では、このような組織構成でやっていくことは難しいとわかりました。
状況が二転三転し、サム・アルトマンはOpenAIに復帰する模様ですが、OpenAIにおける非営利的な部分と営利的な部分の割合は、より営利的な方向に傾くだろうと思います。OpenAIのあり方は変わるでしょう。
一方、日本は資本主義社会ではあるものの、アメリカほどは資本主義的精神が徹底していませんので、社会的な問題解決を目指すソーシャル・エンタープライズ型の会社が成立しやすそうです。
けれど、株式投資は慈善事業でやるわけではありません。社会的な問題解決を目指すという会社の方向性は、株主にとって、必ずしもプラスになるとは限らないと思います。
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。
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