アメリカ株のセクターの年初来パフォーマンスを振り返り。日米の投資環境の違いは?
元フィデリティ投信トップアナリストで、米国・シアトルからメルマガ&オンラインサロン「米国株&世界の株に投資しよう!」で情報配信をしているポール・サイさんが、東京MX2で毎週月曜~金曜22時から放送されている、「WORLD MARKETZ」に電話でゲスト出演した。
前回の放送で、米1年債を満期保有すれば5.3%の利息がもらえることから、個人投資家の米国債投資はよい戦略だと教えてくれたポールさん。米金利低下による円高進行はリスクだけれど、「ボンドラダー」という投資方法なら、その衝撃を和らげられるということだった。
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そして、今回の放送では、年末を控えてアメリカ株のセクターの年初来パフォーマンスを振り返り、来年(2024年)のアメリカ株の投資環境がどうなりそうかを考察。日本株とのパフォーマンスも比較して、日米の投資環境の違いも解説してもらったので、さっそくチェックしていこう。
オンラインでの買い物が増えていることから、年末商戦で店が混む様子はあまり見られなくなった
番組冒頭、アシスタントの木村カレンさんから、サンクスギビングデー(感謝祭)のアメリカでの盛り上がりについて聞かれたポールさん。
サンクスギビングはシリコンバレーに住んでいるポールさんの妹さんの家に行き、家族で集まったとのこと。車で1、2時間で行けるワインの産地、ナパバレーでワインテイスティングを楽しんだそうだ。
すると、番組MCの渡部一実さんが「サンクスギビングと被るんですけど、ブラックフライデーやサイバーマンデーといった年末商戦で、街の消費の様子は肌感覚でどうですか」と質問した。
消費は7.5%や8%ぐらい増えているという統計は報じられているけれど、ポールさんの肌感覚では、最近はオンラインでの買い物が増えていることから、店がすごく混むといった様子があまり見られなくなってきたそうだ。
ナパバレーのホテルの値段がそんなに高くなかったのが少し意外で、サンフランシスコ空港もそこまで混んでいなかったものの、シアトルはわりと混んでいて、場所によるのかもしれないと話してくれた。
今年のアメリカ株はAIのテーマでテクノロジーがリードした
続いては、年末ということでアメリカ株のセクターの年初来パフォーマンスを振り返ることに。
まずはテクノロジーセクターからで、XLK(テクノロジー・セレクト・セクターSPDRファンド)というETFがあり、これでパフォーマンスを見ると、年初来49%上昇してアメリカ株のセクターのなかでトップだったとポールさん。
次は、コミュニケーションセクターのETFであるXLC(コミュニケーション・サービス・セレクト・セクターSPDRファンド)。こちらにはメタやアルファベット、ネットフリックス、ディズニーが入っていて、年初来48%上昇したようだ。
そして、一般消費財セクターのETFであるXLY(一般消費財セレクト・セクターSPDRファンド)は年初来31%上昇して、主にアマゾンとテスラが貢献したという。
これらのことから導き出せる結論は、AIなどのテーマでテクノロジーが大きく貢献したことと、景気全体がそんなに悪くなかったということ。
昨年(2022年)は今年の真逆で、XLKはマイナス27%、XLCはマイナス38%、XLYはマイナス36%となり、トップだったのはエネルギーセクターだったそう。そのエネルギーセクターの今年のパフォーマンスは、1番後ろから数えて4番目のマイナス0.5%だったから、今年は昨年の逆であり、昨年の反動が出た年だったとも言えるようだ。
今年はAIのトレンドで、テクノロジーがトップに立ってリードしたから、来年はその反動でリードしないかというと、そうでもないとポールさんは考えている。
2019年、2020年、2021年はテクノロジーがトップだったし、アメリカ株が良かった時のほとんどはテクノロジーがリードしていたそう。AIのトレンドも1年だけの話ではなく、数年続く可能性があるようだ。
日本はスタグフレーションになる可能性が高い
また、昔は不景気になるとスタグフレーション、つまり不況に伴うインフレ上昇が心配されていたけれど、今のアメリカにスタグフレーションの心配は必要なさそうとのこと。
ここで、日本株とアメリカ株のセクターパフォーマンスを比較してみると、日本がスタグフレーションになると市場は予想しているようだ。
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というのも、日本株を6カ月と1年の動きで見ると、いいパフォーマンスを出しているのは銀行、商社、エネルギー、鉄などコモディティの会社で、インフレやスタグフレーションに強いセクターが強いパフォーマンスを見せているから、日本がスタグフレーションになりそうと言えるのだという。
日本株の景気敏感セクターはどうかというと、電気機器、IT、サービス、小売などはパフォーマンスが苦戦しており、そのことからも日本がスタグフレーションになる可能性は高いと市場は見ていて、ポールさん自身もそう見ている。
銀行とスタグフレーションは一見、関係なさそうだけれど、スタグフレーションの最初の段階では金利が上昇し、貸出金利上昇の利ざやで銀行が稼げるため、スタグフレーションの初期は銀行にとってプラスなのだそう。
もっとも、スタグフレーションが長期になると倒産が増えたり、地銀のポートフォリオの含み損の問題も大きくなって、銀行にはマイナスとなるようだ。
つまり、アメリカと日本の投資環境を比べると、アメリカはインフレがある程度対応できる範囲に落ち着いた後、AIやテクノロジーのトレンドが続く一方、日本はデフレからインフレに経済全体の状況が大きく変わるため、日本国内向けの資産配分の考え方も従来のものから変える必要があるとポールさんは語った。
AIはかなり初期の段階。本格化すればドラえもんができてしまうかも!?
ここで、AIのトレンドは続くというけれど、どれくらい続くトレンドになりそうなのか、渡部さんは気になるようだ。
これに対し、「AIは長いトレンドで1年で終わるとは思わない」とポールさん。インターネットバブルも数年続いたし、AIはかなり初期の段階で、バブルの領域にも入っていないようだ。
AIが本格化した場合、例えば学校の先生が要らなくなったり、日本の漫画で言うとドラえもんそのものができてしまって、人間みたいになるような未来がくるとポールさんは想像していた。
これには渡部さんも「ドラえもんができたら僕はもう仕事なんかしないですよ。全部ドラえもんにお願いしますよ」とノリノリで反応。木村さんも「ちょっと夢がありすぎて」と漫画みたいな未来の想像に笑うしかない様子だった。
米大統領選の共和党の候補者はトランプか若手か。民主党のバイデンはヨボヨボだけど、大統領選から退出するのは時期的に遅い
最後はアメリカの政治情勢の話題に。
アメリカで最近、米中首脳会談が開催されたことで、中米関係は少しいい方向に向いているとポールさんは感じているようだ。
一方で、その会談のビデオを見ると、バイデン米大統領がかなり年を取ってヨボヨボで、動きが遅く体が硬そうな印象を拭えなかったそう。
米大統領選を賭け市場と世論調査で見ると、トランプ(氏は以下省略)が40%以上の支持を得てバイデンより大統領になる可能性が高まっているとのこと。
もっとも、ポールさんに言わせると、トランプとバイデンのどちらが大統領になっても、アメリカや世界にとっては良くないようだ。
バイデンが大統領になると、アメリカの半分の人間が怒るし、それはトランプが大統領になっても同じことで、アメリカの平和には貢献しないのだという。
それでは、トランプやバイデン以外の候補者はどうなっているのかというと、共和党では最近、女性候補のニッキー・ヘイリーが少し人気になってきていて、ニッキー・ヘイリーがトランプを倒すことができたら、女性全体が大きく変わることになるそう。
そうなると、民主党ももっと若手が出ないと、ニッキー・ヘイリーが勝ってしまうため、バイデンが出馬しない可能性も出てくるようだ。
年寄りのバイデンが再び大統領選に出る理由は、トランプを倒せるのは自分だけという考えからだが、今はトランプが優勢なのだから、バイデンは国のためにも大統領選から退出すべきと考える人は増えてきているとのこと。
年寄りなのはトランプも同じだけれど、元気で動きが速く声も大きいため、バイデンよりはマシということで、共和党は候補者がトランプになるか、若手になるかというところが大きいという。
民主党の候補者としては、カリフォルニア州知事のギャビン・ニューサムやマンチン上院議員など数人いるものの、バイデンが大統領選から退出するというのは少し時期的に遅く、すでに水面下で動き出しているということだった。
ここまで、11月28日(火)放送の「WORLD MARKETZ」に電話出演した、ポールさんのマーケット解説を中心にお届けした。
冒頭でも紹介したとおり、ポールさんはメルマガ&オンラインサロン「米国株&世界の株に投資しよう!」で情報配信をしている。登録後10日間は無料だ。米国株投資をしてみたい、すでにしているけどもっと現地からの情報が欲しい、ポールさんが推奨する個別銘柄やポートフォリオを見てみたいという人は、こちらをぜひ登録してみてほしい。
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