中国の経済は最近、多くの問題に直面しています。そして、これが原因で中国経済は米国経済にさらに遅れを取り、中国の株式市場では大規模な売りが加速しています。
このような中国株に買いのチャンスはあるのでしょうか?
そのことを検討するため、今回は中国について、さまざまな観点から考察してみたいと思います。
中国が台湾を攻撃するのは、中国共産党が権力喪失を招く可能性が出てきた場合のみ
まず、中国株を分析するときは、地政学と経済の両方を考慮しなければいけません。
中国の経済的停滞は一時的なことだと思います。
中国の経済規模がやがてアメリカを超えるのは驚くことではありません。中国は非常に多くの人口を有しています。中国の1人当たりGDPが中南米の国のレベルになれば、中国の経済規模はアメリカを超える計算になります。
次に地政学的リスク、戦争のリスクについて検討してみると、私は戦争にはならないと思います。
中国の指導者たちは、何よりも権力を保持することに関心を持っています。彼らにはアメリカを乗っ取る野望はありません。台湾問題に対してどれほど真剣かはわかりませんが、台湾への攻撃は、おそらく中国共産党が権力喪失を招く可能性が出てきた場合にのみ起こるでしょう。
私は中国共産党の指導部は心配症だと思っています。ゼロコロナ政策に対して抗議デモが起こったことは、彼らの権力が彼らが考えるほど強固でないことを証明しました。
中国のお金持ちは国外に資産を移し、逃げようとしている
中国の流行り言葉に「潤」という言葉があります。これは北京語で、発音が英語のRUN(走る・逃げる)と同じなのです。
お金持ちは逃げています。最も裕福な人々が国外に資産を移している国がどれほど大変な状況か、考えてみてください。これが現在、起こっていることなのです。なので、中国の権力者は心配していると思います。国内のことを心配している間は台湾を攻めたりしないでしょう。
最近、李稻葵(David Li Daokui)が書いた記事を読みました。李稻葵は中国で最も影響力がある経済学者です。彼は中国が尊敬を必要としている点を強調していました。これはシンプルな考え方だと思います。
確かに、歴史的に見ると、中国は尊敬されることを求めているように見えます。かつての中国は日本、韓国などが朝貢を行っていれば満足していました。皇帝たちは尊敬を求めただけでした。
ただ、「尊敬」には実際に経済的、政治的な利益があり、それは過去の中国にとっての利点だったのです。これは米ドルが基軸通貨であることがアメリカに利益をもたらすようなものです。結論は、中国は自国の周辺地域にある程度の影響力を保持することを望んでいるということです。
中国が安全を確保する1つの方法は、中国の力を日本、台湾、フィリピンに及ぼすことです。これはアメリカがカナダ、メキシコ、カリブ海諸国などを基本的にアメリカの影響下に置く方法と同じです。特に新しい発想でもなく、合理的です。
アメリカが中国を攻撃するリスク。その可能性がより高いものだと中国は考えている
中国は、アメリカが中国を攻撃するリスクがより高いと考えている可能性があります。
アメリカは、ある国の政権がアメリカにとってより有利な存在となるように、政権変更を促すことを過去に何度も行ってきました。中国は、数十年前までヨーロッパ諸国・日本に半植民地として支配された経験から、外国勢力に対して猜疑心を持っています。
これらの要素から考えて、米中間の緊張をやわらげる方法は、アメリカが何らかの形で中国を「尊重」することです。お互いがお互いを敵ではないと認識することです。
これは、アメリカが中国の政治や中国内の出来事に干渉しないということ、チベット、新疆の独立などを支持しないことを意味します。中国にとって、チベットや新疆への干渉は、中国がテキサスの独立を支持したり、抑圧されているアフリカ系アメリカ人がアメリカで自国を形成することを支持するようなものと聞こえるのです。
アメリカはサウジアラビアなどは権威主義体制であっても受け入れていますが、それと同じように、中国には中国の体制があるということをアメリカが受け入れれば、緊張はやわらぐでしょう。
台湾の場合、事実上独立しているのと、テクノロジー面で利害関係があるので、現状維持がアメリカと中国の双方にとってメリットのあるメインシナリオだと思います。
アメリカが多民族化、多文化化することによって、アメリカとアジアの国々との関係が改善してくる
中国とアメリカの緊張をやわらげるもう1つの要因は文化的なものかもしれません。
「欧米」という言葉があるように、これまでのアメリカはヨーロッパと同じように括られる勢力でしたが、現在のアメリカは多文化の力を持った存在に変わりつつあります。
アメリカのこのような変化によって、中国とアメリカはお互いを理解しやすくなるかもしれません。
アメリカはドイツなどを除いて欧州の勢力とは、今の米中の緊張関係と同じような緊張関係を持っていませんでした。ドイツなどについても戦争が終わったあとは、結局、友好的な存在になるのが一般的でした。欧米間で戦争があっても、それは家族間の喧嘩であり、長期的な敵対関係ではないようです。
そう考えると、アメリカが多民族化、多文化化することによって、アメリカはアジアの国々との関係が改善してくることでしょう。
それと、中国がアメリカから技術を盗むことは過大評価されている可能性があります。アメリカで授与されている科学技術系の博士号は、そもそも中国人に数多く授与されているのです(以下の2つのグラフ参照)。
過度に売られた中国の優良株を安値で買えるタイミングは遠くない!
結論をまとめましょう。
中国は不動産バブルが弾けたことによって、経済が減速しています。この調整はいつか終わります。地政学的な面についても、中国がアメリカと戦争する根本的な理由がないです。なので、地政学の問題も時間が経つと、緩和してくると思います。
過度に売られた中国株を安値で買うタイミングはそこまで遠くない将来に来るでしょう。いい企業を安く買うチャンスが近づいていることを意識しておいてください。
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。
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