「勝者のゲーム」と資産運用入門

日本株の決算発表ラッシュ!製造業中心に業績好調。
好調の2023年度に対し、2024年度の予想は保守的。
短期的な株価変動に一喜一憂せず、泰然と構えよ!太田忠の勝者のポートフォリオ 第136回

2024年5月14日公開(2024年5月13日更新)
太田 忠
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2023年度の決算は製造業を中心に絶好調な一方、今期予想は保守的な見方

 上場企業の決算発表がピークを迎えている。2023年度(2024年3月期)の業績の全貌が見えてきたが、非常に好調で会社の業績予想を上回るケースが続出している。特に目立つのが製造業だ。5月9日時点での日経経済新聞の集計(東証プライム170社対象)によると、製造業の純利益は前期比23%増の14.8兆円で、非製造業(前期比7%増の11.6兆円)を超えた。製造業の優位は2022年3月期以来であり、2021年3月期までは10期連続で非製造業を下回っていた。要するに、日本は非製造業の方が稼ぐ構図で、製造業の地盤沈下が目立っていたが、久々にモノづくりが復権したと言える。大手製造業の好業績は中小企業の賃上げや雇用増にも追い風になるため意義は大きい。

 一方、今期の2024年度(2025年3月期)の業績予想は今期が予想外に好調だっただけに保守的な数字が目立つ。5月8日時点でのTOPIX採用企業の会社予想は営業利益ベースで前期比8.1%の減少である。マーケット予想の叩き台となる「QUICKコンセンサス」では2.9%の営業増益を見込んでいただけに、投資家は肩すかしを食らった格好だ。

 「好調すぎる2023年度vs保守的な2024年度」を象徴する代表的な3銘柄を挙げながら悲喜こもごもの投資家模様について見てみたい。決算発表は株価にとって大きなイベントであり、そこでは様々な投資スタンスの様々な投資家たちのバトルが繰り広げられる。

絶好調なのがトヨタ自動車。日本企業で初めて営業利益が5兆円を超えた

 まずはトヨタ自動車(7203)である。2024年3月期の営業利益は前期比96%増の5兆3529億円だった。過去最高を大幅に更新し、日本企業で初めて5兆円を超えた。従来の日本企業の過去最高の営業利益は2兆9956億円だが、どの企業かご存知だろうか? そう、トヨタだ。トヨタが自身を抜いて更に記録を伸ばしたことになる。世界の自動車販売台数は1109万台と5%増加した。北米や日本でハイブリッド車の販売が伸び、高級車レクサスも販売好調。値上げや円安も寄与し原材料や人件費の上昇を補った。値上げ効果で1兆円、円安効果で6850億円それぞれ営業利益を押し上げた。

 トヨタの稼ぐ力はグローバルで見ても際立っている。米テスラの2023年12月期の営業利益は35%減となり、独フォルクスワーゲンは2%増にとどまった。電気自動車への投資がかさんだことや中国の景気減速などが響いている。

 トヨタの2025年3月期の営業利益予想は前期比20%減の4兆3000億円だ。「えー、そんなに利益が減ったら株価が暴落するのでは?」とハラハラするかもしれないが、稼いだ利益を設備投資に振り向け、研究開発費も過去最高の1兆3000億円、取引先のコストアップ支援で3000億円をサポートする。1兆円の自社株買いも発表した。トヨタの期初業績予想は、実はいつも超保守的で2024年3月期の営業利益予想は20%減の2兆4000億円で出していたが、終わってみれば倍以上の5兆3529億円で着地した。「今期は2割減益になる!」と心配する必要のない企業だ。決算発表後、株価はほとんど下がっていない。さすがトヨタ。今年中に時価総額はテスラを抜くのではないか、と私は思っている。

日本製鉄の今期の事業利益予想は保守的だが、値上げ効果で上方修正必至

 次に鉄鋼最大手の日本製鉄(5401)だ。2024年3月期の事業利益は8696億円(前期比-5.1%)で着地した。2023年1Qの時点で期初計画の6500億円(同-29.1%)を6900億円(同-24.7%)に、2Qの時点で7400億円(同-19.3%)に、3Qの時点で8000億円(同-12.7%)へと四半期ごとに上方修正したが、最終的に上回った。在庫評価を除く実力ベースの事業利益は9350億円と過去最高を記録。値上げ効果が大きい。年間配当は期初計画の140円から160円に増配。

 2025年3月期の会社予想は事業利益6500億円(同-25.3%)と2024年3月期と同じく極めて保守的な計画を出してきたが、今期も値上げ効果で上方修正必至だろう。当期純利益3000億円(同-45.4%)は事業再編損失1300億円を含んだ数字である。年間配当は160円と発表。USスチール買収は流動的だが、買収を目的とした資金調達2000億円(劣後債発行)を行う予定だ。

 「中国の鋼材価格の値下がり懸念」という切り口でネガティブな見方をされ、会社側も最近の決算資料では「未曽有の厳しい経営環境」という表現をいつも使っているが、実力ベースでの事業利益は過去最高だ。だから、決算発表後の株価も小幅安にとどまっている。

国策銘柄の三菱重工業の2023年度の事業利益は46%増の大幅増益で着地

 そして、最後が国策銘柄として脚光を浴びる三菱重工業(7011)だ。実は3社の中で一番サプライズな動きを見せた。2024年3月期の事業利益は2825億円(同+46.1%)と大幅増益で着地。受注高は6.68兆円(同+48.5%)となり、とりわけ航空・防衛・宇宙部門が2.06兆円と前期の7036億円から急増した。年間配当は40円増配して200円(23/3期は130円)。2025年3月期の会社予想の事業利益は3500億円(同+23.9%)、年間配当は2円増配の22円(4月1日に株式を10分割)と発表した。

 非常に良い決算内容だと思うが、株価は発表当日に7%安、そして翌日も6%安と急落。要因として考えられるのが、2024年3月期の事業利益が3000億円の計画を下回って2825億円で着地したこと。そして、2025年3月期の事業利益予想が3500億円と市場予想の3935億円を下回ったこと。この2点が嫌気されている。

決算発表は短期的な値幅取りの格好の対象だが、中長期投資は泰然とせよ

 決算発表は、株価の短期的な値幅取りを行うには格好の対象だ。会社予想に対して上回ったのか、下回ったのか、そして市場予想に対して上回ったのか、下回ったのかが判断材料になる。それらにおいてネガティブな結果を出した企業は「即、売り」の対象となり、大きく株価が下げれば信用買いのポジションは投げ売りを促され、現物株も売られる。特に三菱重工業が3月28日に実施した1→10の株式分割で株価が盛り上がっていた所で投資した投資家にとっては手痛い下落だ。

 こういう場面に遭遇した場合に考えるべきは「自分は何に期待して投資しているか」だ。短期的な値幅取りでなければ、会社予想や市場予想との誤差はいずれ解消される。むしろ、短期的に間違った株価が出現すれば買いチャンスにもなる。この点をしっかりわきまえておけば、決算発表というイベントについてさほど心配することなく、落ち着いて見ていられると思う。個別銘柄投資において重要なことである。

次回のWebセミナーは6月6日開催。2024年下半期の投資戦略を練ろう!

 さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言を行っている「勝者のポートフォリオ」。2大特典として毎月のWebセミナー開催とスペシャル講義を提供している。5月2日(木)20時より開催したWebセミナーはゴールデンウィーク中の平日夜にもかかわらず245名が参加し、大いに盛り上がった。テーマは『遠のく米国の利下げ、遅れる金融相場の到来』。次回は6月6日(木)20時より開催予定だ。10日間の無料お試し期間を使えば誰でも参加が可能だ。

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●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供によるメルマガ配信などで活躍。

 

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