「勝者のゲーム」と資産運用入門

遠のく米国の利下げ、遅れる金融相場の到来!米インフレ再燃はマーケットにとって逆風。小型グロース株の活躍の出番は後ずれに太田忠の勝者のポートフォリオ 第131回

2024年4月9日公開(2024年4月8日更新)
太田 忠
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米国市場の大幅下落を受け、日経平均は一時3万8000円台まで下落

 日経平均株価は一時999円安、ついに3万8000円台にまで下落―。

 先週金曜日の東京市場。日経平均は午前の取引時間中に前日比999円安の3万8774円まで売り込まれ、3月15日以来の水準にまで低下。週間の下落幅は1377円安となり、下落率は3.4%と比較的大きな下げを演じた。

 その引き金となったのが、前日木曜日の米国市場の大幅下落である。朝方は買い先行でNYダウは294ドル高の3万9421ドルまで買われ、ナスダックも191ポイント高の1万6468ポイントと過去最高値を付けていたが、午後に入って一転して急落。NYダウは530ドル安の3万8596ドル、ナスダックは228ポイント安の1万6049ポイントで取引を終えた。NYダウの下げ幅は今年最大である。 米連邦準備理事会(FRB)高官による利下げに対する慎重発言が相次いだこと、そして原油先物相場が大きく上昇したことが下落の要因だ。

パウエル議長を筆頭にFRB高官から利下げに対する慎重発言が相次ぐ

 ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は米経済のモメンタムが強いことを背景に「なぜ利下げする必要があるのかとの疑問が生じる」と年内の利下げ見送りの可能性に言及。リッチモンド連銀のバーキン総裁も講演で「誰もインフレ再燃を望んでおらず、FRBは時間をかけるのが賢明だ」と利下げ判断を急がない姿勢を強調した。また、タカ派で知られるウォラー理事は「利下げは急ぐべきではない」と繰り返し指摘。そしてパウエル議長も3月29日の講演に続いて、4月3日のスタンフォード大学のイベントで「利下げを急ぐ必要はない」とコメントしており、このところFRB高官による利下げに対する慎重発言が続いている。

 3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)において示されたドットチャート(FOMC参加者による政策金利予想)では、「2024年の利下げ回数は3回が適切」との結果が出ており、昨年12月から変化はなかった。2024年に入って雇用・物価の強い基調が続いていたため「ひょっとして年内の利下げ回数が3回から2回に減らされるかも…」との懸念がマーケット参加者にはあったため、この決定がハト派として受け止められて投資家の不安を払拭。米国市場は主要3指数揃って過去最高値更新の展開となっていた。しかしながら、潮目は変わってきたようだ。

米国WTI原油先物価格が87.22ドルまで上昇し、インフレ懸念が再燃

 先週木曜日の米国市場の大幅下落のもうひとつの要因が原油先物相場の上昇である。4月4日の米国市場でWTI価格は前日比2.1%高の87.22ドルまで上昇。昨年10月以来の高水準だ。イスラエルがシリア首都ダマスカスのイラン大使館周辺を空爆。イランは報復の構えを見せるなど中東情勢が緊迫化したことが要因である。原油価格上昇はインフレに直接つながる。「インフレ再燃懸念→利下げ先送りの可能性」という連想が働いたことで米国市場の下落に拍車をかけた。

 地政学リスクをどう見るか? こうした事態が起こると私にも度々質問が来るが、これについては以前から何度も申し上げている通りである。一般的に地政学リスクによる株価下落は短期的かつ限定的であり心配は無用である。冷静に考えていただきたいのだが、中東情勢は落ち着きを見せたことなど一度もなく、常に一定の緊張が常態化している。そうした中での出来事なので、今回の件をことさら大げさに捉える必要はない。そもそも、いまだに続いているロシアによるウクライナ侵攻の時も株式市場に与える影響は軽微だった。日経平均は侵攻から営業日ベースで10日後の3月9日に2万4717円の安値を付けて反発。下落率は-7%だった。いわゆる「開戦は買い」の一時的な下落で留まった。

逆業績相場では好景気より景気減速の方が株式が上昇するロジックが働く

 今のマーケットでは「好景気→インフレ懸念→利下げ見送り→株式市場下落」。そして「景気減速→インフレ後退→利下げの可能性→株式市場上昇」というロジックが働いていることをまず認識して欲しい。株式市場が上昇するためには好景気ではダメで、景気減速の方が歓迎される。「えっ、逆じゃないか?」と思っているようならマーケットを分かっていないことになる。これは今のマーケットが「逆業績相場」にあり、今後「金融相場」に移る過程にあるからこそのロジックである。私はしばしば「金融相場」→「業績相場」→「逆金融相場」→「逆業績相場」→「金融相場」→「業績相場」→ ……(以下繰り返し)というマーケットサイクルについて言及するが、それぞれの局面で景気や業績の捉え方が変わってくる。非常に大事な点で、これを理解していないとマーケットが分かっていないことになり、相場が下がると、不安な心理状態で株式投資に付き合うことになる。個人投資家の大半がそうだ。

 今、巷の話題は「すでにバブルじゃないか?」だ。曰く「こんなに株価が上がるのはおかしい!」、曰く「これから暴落する!」、曰く「新NISAにだまされるな!」などなど、いろいろネガティブな意見が飛び交っている。そうした中で、先週のような日経平均1377円安という下げに出くわすと、「やっぱり、これから暴落が来る!」「早く逃げなきゃ」という考えになりかねない。

今はバブルではない。企業の収益力向上で日経平均4万円でも割安感

 かつてのバブル時代、1989年の日経平均PERは62倍、上場企業の経常利益38兆円、経常利益率3.0%に対して、今の日経平均PERは17倍、経常利益95兆円、経常利益率6.0%だ。要するに企業の稼ぐ力が大きく高まったことで、4万円に近い日経平均でも割安感が強い状況が今の姿だ。どこがバブルだろうか? バブルという人は、単に株価チャートの形だけを見て「もう上がるはずがない」「これから下がる」と勝手な感想を抱いているだけである。要するに、マーケットに無知な人の典型的な発想だ。

 日本の株式市場は次の5つの要素で今後も上昇していく。(1)本格的な海外投資家の買い、(2)企業の資本効率改善努力、(3)グローバルで割安、(4) 世界でも珍しい金融緩和政策継続、(5)新NISAスタートでの資産形成作り。私からすれば「日本株を売る理由なし!」「買う理由ばかり!」となる。

FRBの利下げは「早くて次の7月、下手をすれば9月にずれ込む」可能性も

 本題に戻る。FRBの利下げ開始タイミングは年初時点では3月のFOMCでおこなわれるとの見方が支配的だったが、今や6月になるとの見方が支配的だ。3月26日のコラム『日本の早まる利上げ vs 米国の遅れる利下げ』で私はこう述べた。6月開始はあくまで「そうなればいいな」的な要素が強いのであって「早くて次の7月、下手をすれば9月にずれ込む」と。だが、最近の情勢を見ているとさらにずれ込むか、年内利下げは9月頃に1度おこなってその後は様子見するか、という感じだ。要するに年内の利下げ回数は「3回ではなく多くて2回、あるいは1回、下手をすれば利下げなし」という可能性まで考えないといけない状況にある。それは何よりも期待される「金融相場」の到来が遅れることに他ならない。小型グロース株の活躍の出番もまだやって来ないことを意味する。

 さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言をおこなっている「勝者のポートフォリオ」。2大特典として毎月のWebセミナー開催とスペシャル講義の提供をおこなっている。4月3日(水)20時より開催したWebセミナーは平日夜にもかかわらず過去最高の320名の参加となり大いに盛り上がった。テーマは『マイナス金利解除決定、本格的株高時代到来へ』。次回は5月2日(木)20時より開催する。10日間の無料お試し期間を使えば誰でも参加が可能だ。

スペシャル講義で「ポートフォリオ理論」と「新NISA活用法」を学ぼう

 そして、スペシャル講義においては太田流『ポートフォリオ理論』がスタート。資産運用においてポートフォリオ理論を知っておくことは必須であり、個人投資家にとって必要なスキルを身に付けることが目的である。また、太田流『新NISA活用法』のスペシャル講義も完結した。700名近くの会員たちはすでにバッチリ新NISAに取り組んでおり大きな成果を出している。今年こそ資産運用を真剣にお考えの皆さま、「勝者のポートフォリオ」で一緒に大きく飛躍しましょう。ぜひ、ご参加をお待ちしております。

●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供によるメルマガ配信などで活躍。

※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『太田忠 勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。原則毎月第一木曜夜は、生配信セミナーを開催。

 

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