「勝者のゲーム」と資産運用入門

日銀総裁の円安容認発言を受け、為替は160円突破。GW期間中、政府はついに2度の為替介入を実施。市場の虚を突いて効果大。投機的な円安に終止符か太田忠の勝者のポートフォリオ 第135回

2024年5月7日公開
太田 忠
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日本だけ大型連休のゴールデンウイーク期間中のマーケットには要注意

 日本政府が2度にわたる不意打ちの為替介入、ドル円は160円から153円に―。

 今年のゴールデンウィークは、有給休暇を3日取得すれば最大で10連休となる超大型のバケーションという暦的にはまことに都合の良い年回りとなった。日本だけが都合の良いお休みというのは、毎度のことながら日本に不都合なことが起こるのが定番である。新聞は休刊日で、世界は通常通りに動いている平日のマーケットが実は一番怖い。

 そして今年も事件が起こった。昭和の日の祝日である4月29日の月曜日。金曜日の日銀の金融政策決定会合後、15時半から行われた植田和男総裁による定例記者会見の席上、衝撃発言が飛び出した。「現状の円安なら物価への影響は無視できるのか?」というメディアからの問いに「はい」と返事したことから円安容認の姿勢が鮮明に示されたのだ。これにより円安・ドル高基調は一段と鮮明となり、金融政策決定会合前の155.50円レベルから一気に158円台に駆け上がり、NY市場では158.25円まで円安が加速。そして、4月29日の午前10時半に160.24円をつけ、1990年4月以来となる34年ぶりの160円台を付けたのだ。

政府は薄商いの時間帯を狙って為替介入し、一気に5円もの円高が進行

 しかし、それは一瞬の出来事だった。急激な円高・ドル安が起こり14時には155.04円と一気に5円もの円高となった。米国の高い経済成長率、高インフレ、高金利という揺るぎなき「3高」の状況に加えて、植田総裁による円安容認発言で投機的な円安が演出されたのも束の間、いや、むしろそれを狙いすましたかのように日本市場が休場という薄商いの時間帯を狙って政府による為替介入が行われた。為替介入の指示を出すのは財務省であり、その実行役を担うのが財務官だ。その要職にあるのが神田真人氏である。突然の円高・ドル安により、神田財務官の元には多くの報道陣が駆け付けた。

  「政府による為替介入はあったのですか?」との問いかけに神田財務官は「為替介入の有無について申し上げることはない。ノーコメントだ」と話した。ノーコメントとしつつも、足元の急激な円安に対して「投機による激しい、異常ともいえる変動が日本経済に与える悪影響には看過しがたいものがある」と語った。

FOMC後の議長発言を受け、2度目の為替介入を実施。ドル円は153円台に

 政府による為替介入には2通りのパターンがある。「介入を行いました」と率直に語るケースと「ノーコメントです」という曖昧に返答するケースだ。後者の場合は、介入したにもかかわらず、その意図や目的、次なる介入を悟られないために覆面介入を装うことがしばしばある。今回はまさにそのケースに該当しており、市場推計では約5.5兆円もの為替介入を行ったのではないか、と推測されている。実際にどれくらいの規模感だったのかは財務省が毎月末に公表する「外国為替平衡操作の実施状況」を見て判断する必要があり、5月末にはその全容をつかむことができる。

 155円まで急騰した円高の状況も長続きせず、その1時間半後の15時半頃には157円台まで再び円安に振れるという激しい動きとなった。

 そして、米連邦公開市場委員会(FOMC)が終わってパウエル議長の会見も終了した5月2日の木曜日、日本時間の午前5時過ぎに再びドル円は急速な円高・ドル安が進行し、153円ちょうどのレベルにまで一気に水準訂正が起こった。この時刻はいわば薄商いの時間帯であり為替の値動きはほとんど見られない。それを狙いすましたかのように3.5兆円規模の円買いの為替介入を起こしたのだ。本当に誰も予測していない、市場の虚を突く早朝の為替介入だった。もちろん、神田財務官は記者の質問に対しては「ノーコメント」である。

為替介入の原資は約47兆円と推測。2割程度使われたが、余力は十分ある

 どうして政府は追撃の為替介入を行ったのか? それはFOMC後に開かれたパウエル議長の記者会見での問答にヒントがある。昨今の米国の経済好調&インフレ継続を受けて「利下げは急がない」「とは言え、利上げをする可能性も低い」とパウエル氏が強調したことで「日米金利差が拡大して再び円安・ドル高が加速するのでは…」という市場のコンセンサスが形成されつつあるところに、「そうじゃない!」という否定の爆弾を投げ入れた格好となった。これまで政府は鈴木俊一財務大臣による度重なる口先介入で円安・ドル高を牽制していたが、その本気度を測りかねていたところに植田日銀総裁による円安容認発言が飛び出したために、政府の口先介入が軽々しくあしらわれている感があった。それを一気に覆す動きをゴールデンウィーク中に起こしたのである。

 「9兆円もの円買いによる為替介入は、血税が使われているのではないですか?」―。ダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ主催の5月2日の株式投資のWEBセミナーでこのような質問が飛び出した。読者の皆さんは十分ご存知だと思うが、資金の出所は税金ではない。それは日本政府が保有している莫大な外貨準備が使われる。

市場の虚を突いた為替介入は効果的。投機的に作り出された円安に警告

 円を買うためには元手となるドルが必要だ。政府保有の外貨準備は今年3月末時点で1兆2900億ドル(約200兆円)ある。もちろんすべてをすぐに介入原資として使えるわけではない。この中で実際に使える規模は3000億ドル程度(約47兆円)と推測される。今回の為替介入で使われた9兆円はその約2割程度に該当する。無尽蔵には使えないが、まだ余力はかなりあるとの見方が妥当だと思う。

 とは言え、今回の市場の虚を突いた政府の為替介入は円安牽制には効果的な演出だったと私は思う。歴史的円安、しかも投機的に作り出された円安に警告を与えた。この原稿を執筆しているのは5月3日(金)22時であるが、ドル円は152円ちょうどのレベルまで円高が進んでいる。今後の方向性は「米連邦準備理事会(FRB)は利下げ、日銀は利上げ」になるのは間違いなく、日米金利差は縮小することが予想される。要するに円高・ドル安の力学が働く。それを事前に強制的に市場に促したのが今回の為替介入ではないだろうか? 160円もの円安が続けば、せっかくいい形におこなわれた企業の賃上げ効果は帳消しになり、日本経済にコスト高となりマイナス面が大きい。それを修正してくれたのが今回の為替介入である。

5月2日のセミナーも大盛況。次回は6月6日開催。日米金融政策を徹底解説

 さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言をしている「勝者のポートフォリオ」。2大特典として毎月のWebセミナー開催とスペシャル講義を提供している。5月2日(木)20時より開催したWebセミナーはゴールデンウィーク中の平日夜にもかかわらず245名もの参加となり大いに盛り上がった。テーマは『遠のく米国の利下げ、遅れる金融相場の到来』。次回は6月6日(木)20時より開催する。10日間の無料お試し期間を使えば誰でも参加が可能だ。

 そして、スペシャル講義では太田流『ポートフォリオ実践』がスタート。資産運用においてポートフォリオ運用のノウハウを知っておくことは必須であり、個人投資家が身に付けるべきスキルである。また、太田流『新NISA活用法』のスペシャル講義も完結した。700名近くの会員たちはすでにバッチリ新NISAに取り組んでおり大きな成果を出している。今年こそ資産運用を真剣にお考えの皆さま、「勝者のポートフォリオ」で一緒に大きく飛躍しましょう。ぜひ、ご参加をお待ちしております。

●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供によるメルマガ配信などで活躍。

 

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