配当金を出さない株でも、保有株の一部を売却すれば現金は手に入る
株式投資には、配当金とキャピタルゲインという2つの収益源があります。
これらは互いに関連しており、場合によっては配当金を得ていなくても、自分自身で配当金に相当するような金額を得られるように取引することも可能です。たとえば、株式を一部売却することでキャピタルゲインを得て、これを配当金のように利用することができます。
成長企業の利益留保の重要性
現在成長中の成功企業にとっては、利益を配当として支払うよりも、その利益を企業内部に留保することが重要です。留保された利益は、新たな投資や事業拡大に使われ、さらなる成長を促進する原動力となります。
したがって、将来の成長を見込める企業は、配当よりも利益留保を優先する傾向があります。
利益を再投資するより、配当を支払った方がよいのはどんな企業か?
しかし、すべての企業が利益を再投資するのが最適とは限りません。
たとえば、コーポレート・ガバナンス(企業統治)が不十分な場合、経営陣が利益を無駄遣いする可能性があるため、そのような場合には配当として支払われることが望ましいです。
また、投資機会が乏しい企業も同様で、この場合は配当として支払われることで、株主がその資金をより効率的に活用することができます。このような成長の見込みが低い企業は、特に米国債の利回りが5%近くある現在、その魅力が薄れています。
高配当ETFは魅力的に思えるかもしれないが、長期的に株式投資で利益を得るには配当を見るだけではダメ
高配当ETFは魅力的に思えるかもしれませんが、その配当利回りは5%に達しません。
長期的に株式投資で利益を得るためには、配当だけでなく、企業のPER(株価収益率)や収益力、成長力にも注目することが重要です。これにより、企業の将来性を見極め、投資の成果を最大化することができます。
リスクを恐れすぎて高配当株・好配当株に固執すると、長期的な利益機会を逃してしまう可能性がある
過度にリスクを回避し、高配当株・好配当株にばかり注目することは、潜在的な利益を逃す原因になることがあります。高配当株・好配当株は安定した収益を提供しますが、その分、成長の可能性が限定されることが多いです。
特に、テクノロジー系企業や新興企業などの成長株に投資すれば、配当以上のキャピタルゲインを得るチャンスがあります。リスクを適切に管理しながら、成長株への投資もバランスよく行うことで、総合的なポートフォリオのパフォーマンスを向上させることができるのです。
リスクを恐れすぎて高配当株・好配当株に固執すると、長期的な利益機会を逃してしまう可能性があるため、投資戦略には柔軟性を持つことが重要です。
過去8年の日本株高配当ETFとS&P500指数連動ETFを比べると、S&P500の圧勝
以下のチャートは東証に上場している3つのETFを比較してみたものです。
青いラインはSPDR S&P500 ETF(1557)で、これはS&P500指数連動の円ベースのETFになります。
また、黄色いラインはiシェアーズ MSCI ジャパン高配当利回り ETF(1478)、赤いラインはNEXT FUNDS 野村日本株高配当70連動型上場投信(1577)で、どちらも日本株の高配当ETFです。
ここ8年ぐらいの期間で見ると、S&P500指数連動のETFの方がはるかに良いパフォーマンスを残していることがわかります。
過去5年だと日本株高配当ETFはS&P500指数連動ETFのパフォーマンスに追いついてきているが、その理由を深掘りしてみると…?
以下のチャートは先ほどのものよりもうちょっと短期で、過去5年ぐらいの期間を見たものです。
先ほどのチャートで示した3つのETFに加え、紫のラインを追加しています。紫のラインはNEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信(1489)という、日本株の高配当ETFです。
先ほどよりも少し短期間のこのチャートで見ると、日本株高配当ETFはS&P500指数連動ETFにパフォーマンスがある程度、追いついてきて、中にはS&P500指数連動ETFにかなり近いパフォーマンスをマークしている日本株高配当ETFもあることがわかります。
これはなぜでしょうか?
深掘りすると、たとえばパフォーマンスのいいNEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信(1489、紫のライン)の中身は、その多くが海外で稼いでいる銘柄です。つまり、円安敏感株が多いのです。
そして、組み入れ銘柄はガバナンスが改善しそうな銘柄ばかりです。ガバナンスの改善はある意味、一時的なものであり、永続的に続くものではありません。ガバナンス改革が進むのは良いことですが、それがある程度、進んでしまうと、それ以上、改革を進めることが難しくなるでしょう。
株価がさらに上昇するには、やはり企業自体の成長を伴わないといけないのです。
まとめ──株式投資で長期的に利益を上げていくなら、配当にこだわりすぎず、企業の成長力や収益力にも注目したい
配当金とキャピタルゲインは関連しており、自分自身で配当金に相当する金額を作り出すように取引することも可能です。
成長中の企業にとっては、利益を再投資することが重要ですが、コーポレート・ガバナンスが不十分な場合や投資機会が乏しい場合には配当を出す方が望ましいでしょう。
高配当ETFは一見魅力的ですが、株式投資で長期的に利益を上げていくことを目指すなら、企業の成長力や収益力にも注目することが必要です。
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。
※メルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」募集中! 米国株&世界の株の分析が毎週届き、珠玉のポートフォリオの提示も! 登録から10日以内の解約無料。