経済学と物理学。この両者は一見した限りでは、かなり異なった学問分野ですが、数学を介することによって、実はお互いに深い関連性があることがわかってきます。
複利の効果と富の無限の増加は、宇宙物理学の概念である脱出速度にたとえることができるのです。
今回は、これらの概念を詳細に解析し、これらがどのように相互に関連しているかを探求してみたいと思います。
複利の原理とその数学的基礎──初期投資が少なくても、高い利率で運用できたり、長い時間をかけたりすれば、資産は指数関数的に増加する
複利とは「利子が利子を生む」現象であり、その計算式は以下のとおりです。
この式から、元本が小さくとも、利率や時間が十分にあれば、資産の成長は著しく大きくなることがわかります。
たとえば、初期投資が少なくても、高い利率で運用できたり、長い時間をかけたりすれば、資産は指数関数的に増加します。
時間の役割とその実践的意味──投資する時間が長ければ、長いほど投資の成果は大きくなる
資産の成長が制約を受けるのは時間だけです。時間が短すぎれば、さほど資産は増加しません。
言い換えれば、投資する時間が長いほど、将来の価値は大きく伸びます。ですから、若い頃から貯蓄と投資を始めることは重要です。
時間は複利効果を最大限に引き出す上で最も重要な要素なのです。時間が長ければ長いほど、投資の成果は大きくなります。
支出管理と富の無限増加──投資収益が支出を上回れば、上回った分の再投資によって、理論的には富が無限に増え続ける
資産を無限に増加させるためのシンプルな鍵になることは、投資から得られる収益が支出を超えるかどうかという点です。収益が支出を上回る部分を再投資することにより、複利のサイクルが強化され、時間とともに資産はさらに加速して増加します。
この状態を維持することができれば、理論的には富は無限に増え続けます。
宇宙物理学における脱出速度の概念とその経済への応用──資産の成長が支出より大きくなる「経済的な脱出速度」に到達すれば、人は経済的自由を実現できる
本記事冒頭で触れたように、宇宙物理学には脱出速度という概念があります。地球から飛び出す速度が特定の閾値を超えると、地球の重力圏を抜け出すことが可能になるのですが、この速度が脱出速度です。
脱出速度の計算式は次のとおりです。
この式は、地球の重力を振り切って、宇宙に進出するために必要な最小限の速度を示しています。
経済的な文脈にこれを当てはめれば、この「脱出速度」は、経済的自由を実現するための資産成長率と解釈できます。資産の成長が支出より大きければ、これは重力を振り切って、脱出速度に到達したことになります。
資産の成長が支出より大きくなる「経済的な脱出速度」に到達すれば、人は経済的自由を実現し、金銭的な束縛から解放されるのです。
まとめ──重要なことは、出費を収入より低くし、若いうちから早めに投資を始めて資産が資産を産むようにし、さらに自らの健康を維持すること
複利の力と脱出速度は、異なる分野の概念ですが、無限の成長という点で類似しています。投資収益が支出を上回ること、そして十分な時間を確保することが、経済的な自由への道を開きます。このようなことを理解し、実生活に適用していけば、それは個人の財務戦略に革命をもたらします。
重要なポイントは、出費は収入より低くすること、投資して資産が資産を産むようにすること、若い頃から早めに投資を開始することと、自らの健康を維持することです。
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。
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