「勝者のゲーム」と資産運用入門

GPIFの2023年度の収益は45兆円と過去最高を記録。
世界で最も稼いでも国民の年金給付が減る理由とは?
国には頼らず、資産運用して自分年金を確立しよう!太田忠の勝者のポートフォリオ 第145回

2024年7月16日公開(2024年7月16日更新)
太田 忠
facebook-share
twitter-icon
このエントリーをはてなブックマークに追加
RSS最新記事

日経平均株価は3カ月半ぶり、TOPIXは34年ぶりにダブルで最高値突破!

 米国の独立記念日、そして私が10歳の誕生日(世間的に言えば還暦)を迎えた7月4日。日経平均株価は3月22日につけた最高値4万888円を抜いて4万913円に、TOPIXも1989年12月18日につけた最高値2884を抜いて2898となった。

 「今年は辰年、私の年」「辰年は干支のベストパフォーマー」と今年の冒頭に申し上げたが、私にとって記念すべき日に日経平均とTOPIXがダブルで最高値となったのは象徴的だ。この後も、先週に入って日経平均は初の4万2000円台乗せ、TOPIXは2920ポイント乗せという連日でのダブル最高値を演じている。この背景には米国株がS&P500、ナスダック、SOX指数が揃って過去最高値を更新、海外投資家による日本株の再評価、企業の自社株買い、逆張り個人の投資行動の変化などの複合要因がある。全員参加型の上昇相場になってきている。

GPIFの2023年度の収益は45兆4153億円と過去最高を記録

 さて、今回のテーマは年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)と我々の年金の行方についてである。日本の公的年金を運用するGPIFの2023年度の収益は45兆4153億円と過去最高を記録。資産別の収益では外国株式が19兆円、国内株式が19兆円、外国債券が7兆円のプラス。国内債券は1兆円のマイナス。国内外の株高が収益を押し上げ、円安進行で外貨建て資産の円ベースの評価額も増える一方、国内金利の上昇(債券価格は下落)が足を引っ張った形だ。

 GPIFは将来世代のための年金積立金を運用している。高齢者への公的年金給付の財源は勤労者からの保険料収入と国庫負担で9割が賄われる。残りの1割が年金積立金から得られる財源である。年金財政における補完的な役割の位置づけだが、運用収益の積み上がりは年金財政基盤の安定につながる。厚生労働省によると2019〜2023年度の5年間に積立金の収益は106兆円となり2019年想定の6倍にもなった。2024年3月末時点の積立金の残高は291兆円に達し、想定より70兆円上振れしている。

運用開始の2001年からの累積収益は153兆円。世界で一番稼ぐ年金基金に

 GPIFは従来、安全重視で国内債券を中心とした資産配分で運用を行ってきた。だが、国債利回りが極端に低下したため「年金財政上十分な運用利回りを確保できない」との結論を下し、アセットアロケーションを「国内株式、外国株式、国内債券、外国債券に25%ずつ均等に投資する」とのスタイルに改めた。これが奏功して大きなリターンを叩き出せるようになった。

 世界の年金基金におけるGPIFの地位は堂々の第1位である。2番手がノルウェーのGovernment Pension Fund(政府年金基金)、3番手が韓国のNational Pension(国民年金公団)である。2023年度末のGPIFの運用金額は246兆円で年間リターンは45兆円。年率で23%ものリターンを出して45兆円もの大金を稼いでいる年金基金は他にない。世界で一番稼ぐ年金基金、それが日本のGPIFである。2001年からスタートした運用の累積収益は153兆円に達している。もの凄い金額だ。

GPIFの運用成績が好調でも、年金給付額が上乗せされない理由とは?

 好調な積立金運用は年金の財政状況にもちろんプラスに働くが、運用成績が良いからと言って、ただちに給付される年金に上乗せされるわけではない。国民全員が加入する国民年金と会社員らが入る厚生年金は、毎年の年金額の伸びを賃金・物価の伸びよりも低く抑える「マクロ経済スライド」という仕組みがある。少子高齢化で保険料を納める現役世代が減り、年金を受け取る世代が増えることへの対策だ。この抑制措置は年金財政が将来にわたって安定する見通しが立つまで続く。

 厚生労働省は7月3日、年金財政を点検する財政検証の結果を公表した。私たちが将来、国から受け取る年金。その年金制度が将来も持続可能かどうかを5年に1度点検しているが、最新の予想シナリオが公表された。結果を見た私の感想を一言で述べると「無残やな」だ。

 ひょっとしてひょっとすると、皆さん期待していました? 「将来、どんどん受け取る年金が増えると思っています」という人はいないと思うが、やはりその通り。年金は増えるどころか減る。年金は、減ります、減ります、減りまーす。税金は、増えます、増えます、増えまーす。「どうして、こんな矛盾することが起こるんでしょうか、太田先生」「自民党員は裏金作りの脱税でガッポリ、国民は税金が増えて年金は減るんですよ」。まるで罰ゲームですな、こりゃ。

政府シナリオによると、経済成長如何に関わらず、年金給付の減額は確定

 これから年金をもらう高齢者は激増、一方、財源となる保険料を払う現役世代はどんどん減る。年金の給付水準は下がるしかない。では、どこまで下がるのか? 経済成長に応じて4つのシナリオが示されているが、以下の通りである。感想も付け加えた評価を記す。                                      

①マイナス成長(-0.7%)のケース:今の給付水準に対して年金は4割減。岸田総理、私に「死ね」と言うんですか? 年金を納めてきたのに4割減。詐欺師やん!
②横ばい成長:今の給付水準に対して年金2割減。2割も減る? なんじゃそれは。
③成長シナリオ(1.1%):今の給付水準に対して年金6%減。成長しても減る? 何でやねん!
④高成長シナリオ(1.6%):今の給付水準に対して年金7%減。ウッソー。成長率は増えているのに年金がさらに減るって…。赤塚不二夫氏のギャグ漫画やないで。

 日本政府はかように申しておりますが、皆さん、これでいいですか? というか、太田予想では上記の試算よりもっと減ると思う。働いている人が毎月納めている年金保険料は、将来の自分のために充てられることはなく、今受け取る人たちに充てられている。いびつな人口構成の下、支払い手と受け取り手が順送りの年金システムでは、当然こうなる。

 個人資産の運用がますます重要な世の中。もう異論の挟みようがない。自分年金の確立を!

公的年金に頼れない中、今こそ資産運用を始めて自分年金を確立しよう!

 太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言を行っている「勝者のポートフォリオ」。2大特典として毎月のWebセミナー開催とスペシャル講義を提供している。

 7月4日(木)20時より第31回Webセミナーを開催した。テーマは『来たるべき金融相場での投資戦略』。平日夜にもかかわらず290名もの参加者となり、Q&Aを含めた終了時刻は22:55。すでに会員ページのアーカイブにて動画がアップ済みだ。次回は8月8日(木)20時より開催予定である。10日間の無料お試し期間を使えば誰でも参加が可能だ。

 スペシャル講義では『ポートフォリオ理論』に続き、太田流『ポートフォリオ実践』がスタートした。資産運用においてポートフォリオ運用のノウハウを知っておくことは必須で、個人投資家にそれを身に付けてもらうことを目的としている。また、太田流『新NISA活用法』もすでに完結した。700名近くの会員たちはすでにバッチリ新NISAに取り組んでおり大きな成果を出している。資産運用を真剣にお考えの皆さま、「勝者のポートフォリオ」で一緒に大きく飛躍しましょう。ぜひ、ご参加をお待ちしております。

●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供によるメルマガ配信などで活躍。

※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『太田忠 勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。原則毎月第一木曜夜は、生配信セミナーを開催。

 

国内外で6年連続アナリストランキング1位を獲得した、
トップアナリスト&ファンドマネジャーが
個人投資家だからこそ勝てる

「勝者のポートフォリオ」を提示する、
資産運用メルマガ&サロンが登場!

老後を不安なく過ごすための資産を自助努力で作らざるを得ない時代には資産運用の知識は不可欠。「勝者のポートフォリオ」は、投資の考え方とポートフォリオの提案を行なうメルマガ&会員サービス週1回程度のメルマガ配信+ポートフォリオ提案とQ&Aも。登録後10日間は無料!

太田忠の勝者のポートフォリオ

10日間無料 詳細はこちら※外部サイトに移動します


「勝者のゲーム」と資産運用入門 バックナンバー

»もっと見る

【クレジットカード・オブ・ザ・イヤー 2023年版】2人の専門家がおすすめの「最優秀カード」が決定!2022年の最強クレジットカード(全8部門)を公開!
【クレジットカード・オブ・ザ・イヤー 2023年版】2人の専門家がおすすめの「最優秀カード」が決定!2021年の最強クレジットカード(全8部門)を公開! 最短翌日!口座開設が早い証券会社は? おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き
ZAiオンライン アクセスランキング
1カ月
1週間
24時間
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

お金が減らない高配当株
NISAお悩み相談室
株トレ

12月号10月21日発売
定価780円(税込)
◆購入はコチラ!

楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!Amazonで購入される方はこちら!

[お金が減らない高配当株78銘柄]
◎第1特集
死ぬまで使える資産がつくれる!
お金が減らない高配当株 厳選78

●武藤十夢と一緒にマスター!高配当株なら資産がつくれてお金が減らない!
●優良高配当株を持ちっぱなしで増やす

・勝ち組のワザ!
立川一さん
「増配傾向の株に投資」
なのなのさん「利回り4%以上に注目」
・10年以上増配が続く株
・配当がド安定の株
・増益基調の増配株

●割な安高配当株を売買しながら増やす
・勝ち組のワザ!
御発注さん
「高配当株の人気化を待つ」
配当鳥さん「高配当株を逆バリで買う」
・高利回りの景気敏感株
・成長期待の高ROE株
・キャッシュリッチな中小型株


◎第2特集
オルカン積立続行でOK?
持ち株をズバリ診断!
NISAのお悩み相談室

●NISA人気NO.1投信「オルカン」積立て続けても大丈夫?
●NISAの使い方&投信お悩み相談
●アナタの持ち株ズバリ診断!
●今さら聞けないNISAのギモン14にすべて答えます


◎第3特集
NISAで買えて長く持てる!
注目テーマの好成績投信27

●テーマを選ぶコツ&注意点
●テーマ別好成績投信
ハイテク全般/半導体/インフラ・製造業/エコ・ESG/AI(人工知能)/ロボット・クラウド

 

◎第4特集
円安も円高もビッグチャンスに!
今すぐ儲ける!FX入門

●マンガでFXの魅力を理解!
●儲かる仕組み:為替差益/レバレッジ
●儲けるコツ:チャート/政策・指標
●FX口座の選び方


【別冊付録】
累計15万部のベストセラー
一問一答の株ドリル!買っちゃダメな株がスグわかる!

株トレ出張版 ファンダメンタルズ編

 

◎連載も充実!

◆NEWS:東京メトロが10月23日に上場!これから買うならいつが正解?
◆連載3回目:ZAi編集部の新人・ザイゼンがチャレンジ!目指せ!お金名人
「年金だけで老後暮らせる? 老後にもらえる年金額を知ろう!」
◆10倍株を探せ!IPO株研究所「上場日集中で買いが分散!銘柄により明暗!」
◆マンガ恋する株式相場「大谷翔平銘柄!株価もSHO-TIME!」
◆マンガ「収入減の心配は無用!男性こそ育休を取ろう」
◆人気毎月分配型投信100本の「分配金」速報データ!
「9月も低調が続き100本中4本の分配金がダウン!」

 

>>「最新号蔵出し記事」はこちら!


「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!


>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

【法人カード・オブ・ザ・イヤー2023】 クレジットカードの専門家が選んだ 2023年おすすめ「法人カード」を発表! 「キャッシュレス決済」おすすめ比較 太田忠の日本株「中・小型株」アナリスト&ファンドマネジャーとして活躍。「勝つ」ための日本株ポートフォリオの作り方を提案する株式メルマガ&サロン

ダイヤモンド不動産研究所のお役立ち情報

ザイFX!のお役立ち情報

ダイヤモンドZAiオンラインαのお役立ち情報