ニデックの自社株取得を巡り、個人投資家のコメントで掲示板が大荒れ
「自社株買いヤルヤル詐欺、こんな会社の株を買ってはならない―」
「自社株買い発表で、会社が株価操作しているように見える ―」
M&A戦略を推進し、モーター製造で世界一となったニデック(6594)。そのニデックが5月24日に発表した『自己株式の取得状況および取得終了に関するお知らせ』というプレスリリースを受けて、ヤフーファイナンスの掲示板に書き込まれた個人投資家のコメントの一部だ。
ニデックが発表した文書を要約するとこうだ。「2024年1月24日開催の取締役会で自社株取得の決議を実施。取得株数は200 万株(上限)、取得総額110 億円(上限)、取得期間は2024 年1月25日~2024年5月24 日。結果は取得株式0株、取得総額0円」
自社株買いを宣言したにも関わらず、取得ゼロの結果に個人投資家が動揺
要するに今年1月24日に自社株買いを発表したものの、4カ月の取得期間中に実施した自社株買いはゼロであったという内容である。掲示板には「自社株買いを発表したくせに、取得がゼロなんて見たことない」「一体何があったんだろう…内紛か?」との書き込みもなされていた。
私がダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)とコラボレーションして投資助言を行なっている「勝者のポートフォリオ」の会員からも本件で質問が飛んできた。
質問「太田先生、ニデックが自社株を全く取得していないという結果とともに『当社株価は当社が適正と考える水準の範囲内で推移したことから、当該期間における自己株式の取得がなされなかった』と発表しました。過去の高値から半分強の現在の位置が適正であるということを企業が発することに少し驚きました。これは、代表取締役を務める永守重信さん特有のキャラからくる社風の様なもので、ニデックという会社を昔から知る方々からするといつも通りという感じなんでしょうか」
自社株買い期間中に株価が5500円を下回らなかったから買わなかっただけ
丁寧な書き方だが、掲示板の書き込みを見てかなり動揺して質問したと推察される。さて、皆さんはどう思われただろうか?
私の回答を申し上げると、自社株買いの期間中に株価が5500円を下回らなかったから自社株買いを行わなかっただけの話である。ニデックの自社株買いの条件をよく読んでほしい。200万株を上限に110億円を上限とする自社株買いだ。要するに110億円÷200万株=5500円。自社株買いの発表後、株価が5500円を明確に下回る局面はなく、5月24日には8023円にまで上昇した。
ヤフー掲示板はムッチーたちの集まりである。ムッチーとは私が命名した「無知な投資家」のことである。2023年7月に書いた「個人投資家におけるSNSとの付き合い方」というコラムを覚えているだろうか? その中で私は「掲示板の書き込みをあまり信じないように」と言ったが、さらに続けて次のように述べた。
感情むき出しや誤った認識の書き込みが多い掲示板は百害あって一利なし
掲示板は匿名での書き込みが多く、責任ある意見を表明する場になっていない。掲示板を読むと、自分の含み損や含み益にまつわるコメント、売り煽りや買い煽りなどのコメントが多く、とにかく感情むき出しの書き込みが目立つ。感情を吐露して何とか精神的バランスを取ろうという場が掲示板ではないかと思う。
感情の吐露に加えて、株価上昇や下落の要因、あるいは企業などについて完全に誤った認識で書き込んでいるケースも多い。決して悪意はなく、知識不足や憶測で書き込んでいる場合が多い。いずれにしても百害あって一利なしだ。特に経験の浅い投資家が掲示板の不正確な情報を投資の参考にすると痛い目に合うので、掲示板の閲覧は控えた方がいいと思う。
無知が故にカモられ大損させられる。ムッチー(無知)な投資家になるな
ところで、先週はもうひとつ象徴的な出来事があったので紹介しよう。
質問「先日2950円でTOB(株式公開買い付け)を発表したSBテクノロジー(4726)ですが、本日3445円でストップ高まで上昇しました。調べましたが、理由となるニュースも見つけられず、ここまで上昇した理由が分かりません。太田先生にご教授いただきたい質問は2つあります。
質問1 今回上昇した理由は何かございますでしょうか?
質問2 TOB価格を大きく超えることはよくあることなのでしょうか?」
「勝者のポートフォリオ」の会員からの質問だ。それに対する回答は以下の通り。
回答「ご質問の株価をつけた時間は9:55ですが、10:05には2945円に戻っており、その後はTOB価格近辺での取引となっております。
回答1 投機以外の何ものでもありません。
回答2 TOBを超える価格で取引されるケースはしばしば見られますが、すべて投機です。要するに、意図的に株価を上がる買い注文を連続的に出して、それに釣られて飛びつく投資家に売りつけるという手法です。違法行為ではありません」
TOB価格を大きく上回り3445円というストップ高まで上昇する異常事態となったが、まんまと引っ掛かって高値を買わされたのがムッチーたちだ。SBテクノロジーがTOB対象である、ということもおそらく知らずに「祭りが始まった」と勘違いした人たちだと推測される。ムッチーは無知が故に、いつもこのような形で大損させられるカモたちである。世の中、個人投資家はムッチーだらけ。あなた、大丈夫?
セミナーを7月4日に開催。テーマは「来たるべき金融相場での投資戦略」
さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言を行っている「勝者のポートフォリオ」。2大特典として毎月のWebセミナー開催とスペシャル講義を提供している。次回のWebセミナーは7月4日(木)20時からの開催予定だ。テーマは『来たるべき金融相場での投資戦略』。心待ちにしている金融相場での戦い方についてお話したい。毎回300名を超える参加人数であるが、7月も大いに盛り上がると思う。10日間の無料お試し期間を使えば誰でも参加が可能だ。
そして、スペシャル講義では『ポートフォリオ理論』に続き、太田流『ポートフォリオ実践』をスタートした。資産運用でポートフォリオ運用のノウハウを知っておくことは必須であり、個人投資家にそれを身に付けてもらうことが目的である。また、太田流『新NISA活用法』もすでに完結した。700名近くの会員たちはすでにバッチリ新NISAに取り組んでおり大きな成果を出している。資産運用を真剣にお考えの皆さま、「勝者のポートフォリオ」で一緒に大きく飛躍しましょう。ぜひ、ご参加をお待ちしております。
●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供によるメルマガ配信などで活躍。
国内外で6年連続アナリストランキング1位を獲得した、
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