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米大統領は王様ではないし王様のような権限もない! 米大統領の権限にはさまざま制限があることを意識すべき。米大統領選後に株価暴落なら買いのチャンス!

2024年11月6日公開(2024年11月5日更新)
ポール・サイ
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米大統領選の結果によって、もしも株価が暴落すれば、それは買いのチャンスになる

 今週はアメリカの大統領選があります。

 この記事は大統領選の前に書いていますが、記事が公開されるのは大統領選の投票後のことになります。記事公開時点で選挙結果の大勢は判明しているかもしれません。

 今回言いたいことの結論から言うと、アメリカの大統領はパワーがありますが、アメリカのシステムをひっくり返すようなパワーまではありません。

 なので、ドナルド・トランプか、カマラ・ハリスが当選することによって、株式市場で暴落などが起これば、それは買いのチャンスになると思います。金融市場が過度に結果に反応するのであれば、そこはチャンスなのです。

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米大統領の権限には法的および制度的な制限が数多く設けられている

 ここからは、アメリカの大統領の権限について簡単に紹介したいと思います。

 アメリカ合衆国における大統領の権限には、法的および制度的な制限が数多く設けられています。

 合衆国憲法は、大統領の行動に一定の枠組みを提供し、その権限が過度に集中するのを防ぐためのしくみを整えています。

 たとえば、立法権は連邦議会に与えられており、大統領が直接法律を制定することはできません。大統領は法案に署名して法律を成立させたり、逆に法案に対して拒否権を行使する権限などを持っていますが、そういった権限は議会が主導する立法プロセスの中に収められています。

 このように、大統領の権限は厳密に規定され、他の政府機関と分かれた形でそれは行使されているのです。

アメリカの連邦議会には、大統領の行動を監視する役割がある

 次に、アメリカの連邦議会には、大統領の行動を監視する役割もあります。

 議会は大統領の政策や行動に対して監査権を持ち、特に委員会を通じて大統領の施策を調査することができます。さらに、議会は予算の承認権を持っているため、大統領が特定の政策を実施するための財源は議会の同意なくして確保できないという制約も存在します。

 特に国防政策や外交政策の面では、議会の支持がなければ、大統領といえども大規模な行動をとることは難しいのです。

最高裁判所を含む司法機関が大統領の行動を違憲と判断することもある

 また、最高裁判所を含む司法機関も大統領権限の制約において重要な役割を果たしています。

 合衆国憲法に基づく司法審査制度により、最高裁判所は大統領令や連邦法が憲法に違反していないか、審査する権限を持っています。

 過去には、司法機関が大統領の行動を違憲と判断し、その行動を制限する判決を下した事例も数多くあります。こういったしくみにより、大統領の権限行使は憲法の枠内に収まるよう、調整されているのです。

連邦制のアメリカでは州政府には独自の権限があり、連邦政府の影響力は制限される

 さらに、大統領の権限は州政府との関係でも制約を受けます。

 アメリカは連邦制を採用しているため、州政府には独自の権限があり、連邦政府の影響力が制限されています。

 たとえば、教育や警察の管理は主に州の管轄下にあります。そのため、大統領が国内政策において州政府の協力を得られない場合、政策の実施に支障をきたすことがあります。州と連邦の権限の分担が、大統領の政策の影響力を調整する役割を果たしているのです。

大統領は直接国民から選出されるため、国民の支持率が低下すると大統領の政策推進力が低下する傾向

 また、国民の支持も大統領の権限に対する重要な制約の1つです。

 アメリカでは大統領が直接国民から選出されるため、国民の支持率が低下すると大統領の政策推進力が低下する傾向にあります。

 特に再選を目指す場合、支持率は政治的な意思決定に大きな影響を与えるため、国民の関心や意見を無視することは難しいです。

 このように、民主主義的なしくみが大統領の権限を一定の範囲に留めるための抑制要因として機能しています。

米大統領は関税に関しては比較的パワーを持っている

 以上述べてきたように、大統領の権限には制限がありますが、関税と移民に関しては比較的パワーを持っています。

 特に貿易政策や国家安全保障に関連する場合に、関税を課すことができます。

 大統領は「通商拡大法」や「国際緊急経済権限法」などの法律に基づき、外国製品に対して一時的な関税を課すことで国内産業を保護したり、特定の国へ制裁を加えたりすることが許されています。

 しかし、こうした関税政策には議会の支持も必要で、長期的な関税の引き上げや大規模な貿易制裁を実施する際には、議会との協力が欠かせません。

米大統領は移民政策に関しても一定の裁量が与えられている

 移民政策に関しても、大統領には一定の裁量が与えられています。

 特に国家安全保障や緊急事態に関わる場合、大統領は大統領令を通じて特定の国からの入国に制限を課すことが可能です。

 たとえば、テロのリスクがあると判断される地域からの入国を制限する大統領令は過去にも発動されており、これは「移民国籍法」の権限の下で実施されることが多いです。

 しかし、移民政策全般を抜本的に変更するには議会の承認が必要であり、包括的な移民法改革を進めるには議会との協力が不可欠です。このため、大統領の裁量だけでは、実質的な移民政策を変更することには限界があり、大統領がそれを実現したければ、立法プロセスを通じた調整が求められるのです。

議会での党派的な対立が大統領の政策実行を難しくすることもある

 最後に、政党や他の政府機関との関係も、大統領権限に影響を与える要素です。

 アメリカは典型的な二大政党制であり、議会での党派的な対立が大統領の政策実行を難しくすることがあります。

 特に野党が議会で多数を占めている場合、大統領が推進しようとする政策が阻止されたり、修正を余儀なくされたりすることがあります。

 このように、大統領権限の行使は一方的に進められるものではなく、複数の権力間での調整が必要となるしくみが整えられているのです。

米大統領は王様のような権限を持っているように思えてしまうが、実際はそうでもない

 今回の選挙で、連邦議会と大統領が同じ政党になる可能性は低いと思います。

 上院は共和党になりそうですが、下院は民主党の可能性の方が大きいです。

 さらに2年後には中間選挙もありますので、連邦議会と大統領の政党が同じという状態は一時的にはあっても、持続しにくいのです。大統領と連邦議会が同じ政党になっているのは、歴史上、3分の1ぐらいの期間です。

 現在の50対50に分断されているアメリカだと、なおさら同じ政党にはなりにくいでしょう。

 そのため、今回紹介した大統領権限への制限はほとんどの時に効くでしょう。米大統領選は大変な注目を集めますから、米大統領は王様のような権限を持っているように思えてしまいますが、実際はそうでもないことを意識すべきです。

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●ポール・サイ  ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。

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