エヌビディアの決算に一喜一憂しないためにも、ポールさんが重視する長期投資の話を改めて聞こう!
2025年2月25日(火)、米国・シアトルからメルマガ&オンラインサロン「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」で情報配信をしている元フィデリティ投信トップアナリストのポール・サイさんが、ストックボイス社が手掛ける経済・マーケット番組「WORLD MARKETZ」(TOKYO MX 月~金 22時~23時)に生出演した。

今回の放送では、番組翌日に大注目のエヌビディアの決算発表を控えて、短期のノイズや混乱に惑わされないためにも、ポールさんが重視する長期投資の話を改めて詳しく教えてもらったので、さっそくチェックしていこう。
番組は、シアトル在住のポールさんが今回、福岡から時差なしで番組に出演することを、アシスタントの木村カレンさんが紹介するところから始まった。
ポールさんは先週(2月17日~)、北海道で友人とスキーをしたあと、福岡に保有している家に帰って別の友人と会って、番組翌日の2月26日(火)にシアトルに戻る予定だと明かしてくれた。
番組MCの渡部一実さんは、ポールさんの出演時間がいつもシアトル時間早朝であることに気を使っていて、今度は時差がない福岡から夜の時間帯の出演であることに、また気を使いながら「よろしくお願いします」とあいさつ。
そして、ザイ・オンラインで連載中の当コラム「成長する米国&世界に投資する最強のFIRE計画(プロジェクト)」で取り上げた、長期投資の話を詳しく聞きたいと切り出した。
【※関連記事はこちら!】
⇒長期投資家がとるべき3つのシンプルな戦略とは? いくら優良企業でもいつ投資してもOKとは限らない!? そもそも長期投資に向かない業種とは?
今回、長期投資の話を番組で取り上げるのはなぜか。それは、番組放送翌日の2月26日(火)に、マーケットが大注目するエヌビディアの決算発表を控えていたから。
(※エヌビディアが2月26日(火)に発表した決算は底堅かったものの、投資家の期待を大きく上回る内容ではなかった)
エヌビディアの決算で一喜一憂したり、取り乱さないためにも、ポールさんの長期投資の話を今、渡部さんは聞きたいとのことだった。
「使用資本利益率(ROCE)」で強みを継続できる会社を把握できれば、長期投資もやりやすくなる
番組は、ポールさんが掲げる「長期投資家がとるべき3つのシンプルな戦略」と、それぞれの詳細をまとめており、渡部さんはそれを見ながら、1つ目の戦略「良い会社を買う」ための判断基準となる「使用資本利益率(ROCE)」とはどういう考えなのか質問した。

「使用資本利益率(ROCE)」とは、会社が使っている資本に対する利回りのことで、会社の収益率や競争の優位性をどれくらい維持できるかを表すものだとポールさん。
ROCEが高い会社は何か強みを持っていて、それを継続できていることになるため、景気変動の影響を受けにくい、良い会社ということで、長期保有に向いているのだそう。
個人投資家や一般投資家は、決算を占う力があまりなかったり、決算をいちいち追いかけることが難しい点からも、ROCEで強みを継続できる会社を把握できれば、長期投資もやりやすくなるようだ。
すると渡部さんが「ROCEが高いのは、使った資本に対しての利益が大きいということなので、経営がうまいということですよね」と返した。
ポールさんは、経営がうまいこともそうだけれど、スケールメリットがあるとか、ネットフリックスだと配信力が強いとか、コンテンツがうまく作れるとか、商品やビジネスの仕組みに強みがあると、ROCEが高いとコメント。自己資本利益率(ROE)もROCEと似たような考え方で、株主が出資した資金に対して利益がどれだけ出たかだと教えてくれた。
キャッシュがないと黒字倒産になるリスクがあるため、注意が必要
続いては、2つ目の戦略「過剰に支払わない」のフリーキャッシュフロー(企業が自由に使うことのできる現金)利回りの話題に。
渡部さんは決算発表の際、今期の利益がいくらで増益率はいくらといった損益計算書(PL)の話はよくするけれど、ポールさんは貸借対照表(BS)やキャッシュフロー(企業のお金の流れ)、フリーキャッシュフロー利回りを意識したほうがいいとのことで、そのあたりをどう考えたらいいのか質問した。
会社によって利益は伸びるけれど、キャッシュを生まないところがあるとポールさん。そういう会社は過剰な設備投資を行っていたり、成長にすごくアクセルを踏んでいて、キャッシュがないと黒字倒産になるリスクがあるため、注意が必要だという。
テスラやアマゾンもキャッシュが出なかった時期があり、リスキーだったけれど、その後ビジネスが順調に伸びたので倒産にならなかったそう。
つまり、フリーキャッシュフロー利回りだけではなく、会社の事業の性質と両方を比べながら、良い会社か判断する必要があるようだ。
継続的な需要があり、キャッシュフローを生む会社や、テクノロジー業界が長期保有に向いている
次に、ポールさんが掲げる「長期投資家がとるべき3つのシンプルな戦略」に当てはまる、具体的な銘柄の話題に。

ブランド力が強く、長期的に安定した収益を稼いでいる銘柄として、ペプシコ、エスティローダー、ユニリーバ、フィリップモリスが挙げられているのを見た渡部さんは、「これは消費関係という感じですか?」と投げかけた。
ポールさんは「消費関係で長期に渡って株価も上昇している会社だ」とコメント。特に、フィリップモリスはたばこの会社で、規制リスクがあったり、ESG(Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス(企業統治))的に、たばこの会社に投資したくないという面もあるけれど、たばこはなかなかやめられないことが強みになるようだ。
また、ペプシコやウォーレン・バフェットがずっと持っていたコカ・コーラは、需要が安定していて、コストもある程度コントロールできるところが強みだそう。ここで挙げた銘柄は継続的な需要があり、キャッシュフローを生む会社で、安定成長型だということだった。
そして、高い成長性と収益性があるマイクロソフト、アルファベット、アマゾン、アドビについては、テクノロジー業界のネットワーク効果があったり、「winner takes all(勝者がすべてを得る)」といった傾向で、ずっと業界をリードすることが多いため、長期的にかなり上昇しているそう。
テクノロジー業界は、途中で上下するなどボラティリティも高いけれど、新しいものを次々と作っていけるし、ソフトウェアが売れるほどコストが上がるわけでもないため、事業の強みも増していくのだという。
その一方で、長期投資家は銀行、航空、化学、エネルギー、鉄鋼など、景気循環の影響を受けるような業種を避ける傾向があるようだ。
例えば、銀行は金利サイクル、石油はコモディティのサイクルに影響される業界で、個人投資家はそういったサイクルを把握しづらいし、サイクルがあると長期保有に向いていないそう。
航空も、事故や油の価格、お客さんの動向など自分でコントロールできない領域に左右されることが多く、マクロ経済に影響される点で長期保有に向いていないとのことだった。
なお、大注目のエヌビディアの決算については、エヌビディア顧客が決算時の発言で、AIの見通しは加速すると言っていたこともあり、エヌビディアの決算が予想より少し上でも下でも、全体のトレンドに影響はなさそうとポールさんは語った。
国連でウクライナ戦争の決議案を、アメリカがロシアや中国とともに反対したことが大きな話題に
最後は、マーケットを取り巻く国際情勢やトランプ政権の外交の話題に。
日本ではあまり話題になっていないけれど、アメリカでは直近、国連で採決されたウクライナ戦争はロシアのせいだという決議案に、ロシア、北朝鮮、中国とともにアメリカが反対したことが大きな話題になっているとのこと。
ロシア寄りの見方をすると、ウクライナからお金が取り戻せるとアメリカは考えているようで、値段が合えば何でもあり得るような取引ベースの交渉が行われており、今までアメリカの同盟国だったパナマやフィンランド、カナダも敵に回しているようだ。
昔はアメリカが世界の警察のような役割があり、世界が平和だとアメリカにとってもいいという前提があったものの、大きな国が小さな国をいじめる構図をアメリカが認めてしまうと、アジアでは台湾、韓国、日本、フィリピンなどが中国にいじめられることになり、それに対抗するために核兵器が拡散する可能性もあって、世界が危うくなっているとポールさんは感じている。
そうなると、世界で一番安全に近い国は海に囲まれたアメリカであり、安全資産として米ドルを持つのはいいことだそう。日本人だから日本の資産に比重を置く理由はなく、世界の市民の観点から分散投資する必要があるとのことだった。
ここまで、2月25日(火)放送の「WORLD MARKETZ」に出演した、ポールさんのマーケット解説を中心にお届けした。
冒頭でも紹介したとおり、ポールさんはメルマガ&オンラインサロン「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」で情報配信をしている。登録後10日間は無料だ。米国株投資をしてみたい、すでにしているけどもっと現地からの情報が欲しい、ポールさんが推奨する個別銘柄やポートフォリオ(直近2年で100%近い上昇)を見てみたいという人は、こちらをぜひ登録してみてほしい。また、動画配信も予定しているので、こちらも注目だ。