長期投資家がとるべき3つのシンプルな戦略とは?
長期的に市場を上回るリターンを得るためには、特定の企業の短期的な動向やマクロ経済の変化に振り回されるのではなく、本質的な価値を持つ企業に焦点を当てることが重要です。
そのため、多くの長期投資家は次のようなシンプルな戦略を実践しています。
(1)良い会社を買う
(2)過剰に支払わない
(3)何もしない
上記のような戦略をとること、すなわち、優れた企業に適正価格で投資し、長期間保有すれば、複利の力を最大限に活用することができるのです。
効率的に利益を上げ、競争優位性が高く、景気変動の影響を受けにくい「良い会社」
「良い会社」とは、持続的に高いROCE(使用資本利益率)(※)を維持し、競争優位性を持つ企業です。
(※編集部注:「ROCE(使用資本利益率)」とは、使用した資本に対してどれだけの利益を得られたかを表す指標。ROCE=EBIT÷使用資本が計算式になる。「利益」の数字には「EBIT(利息および税金控除前利益)」を用い、「使用資本」の数字には「自己資本+有利子負債」を用いる)
こういった企業は、事業サイクルを通じて安定したキャッシュフローを生み出し、価値を創造し続けます。
このような企業は景気変動の影響を受けにくく、特に消費財、テクノロジー、ヘルスケアなどの業種に多く存在しています。
たとえば、ペプシコ(PEP)、エスティローダー(EL)、ユニリーバ(UL)、フィリップモリス(PM)などの消費財企業はブランド力が強く、長期的に安定した収益を生み出しています。
(※銘柄名のあとのカッコ内はティッカー。以下同)
また、マイクロソフト(MSFT)、googleの持株会社・アルファベット(GOOG)、アマゾン(AMZN)、アドビ(ADBE)などのテクノロジー企業は、高い成長性と収益性を兼ね備えており、デジタル化の進展により今後も成長が期待されます。
このような企業はLong Term Winner(長期的な勝者)とも言えます。
安定したリターンを求める長期投資家が避けた方がいい業種とは?
一方で、長期投資家は銀行、航空、化学、エネルギー、鉄鋼など、景気循環の影響を受けやすい業種を避ける傾向があります。
これらの企業は、景気の変動や原材料価格の高騰などに業績が左右されやすく、持続的な収益の確保が難しいため、長期的な価値創造には向かないと考えられるからです。
安定したリターンを求める投資家にとっては、事業の予測可能性が高い企業のほうが適していると言えるでしょう。景気循環の影響を受けやすい業種は、長期保有には向いていません。
もしも、このような企業に投資したければ、サイクルを正しく読むことが極めて重要になってきます。
いくら優れた企業でも、割高な株価で買うのは望ましくない
また、長期投資家にとって、「過剰に支払わない」ことも重要な原則です。
いくら優れた企業でも、割高な株価で購入すれば将来のリターンが低下します。そのため、たとえば、FCF利回り(※)など、その企業のバリュエーションを慎重に分析し、株式を買う際は適正な価格で買うことを心がけるのがいいでしょう。
(※編集部注:「FCF利回り」とはフリーキャッシュフローを時価総額で割った指標)
たとえば、テクノロジー株が急落した時などは、その企業の長期的な成長性を考慮して追加投資を行うことで、優良企業の株式をリーズナブルな価格で取得することができます。
純利益が増えていても、キャッシュフロー管理が不適切だと黒字倒産のリスクもある
そして、長期投資家が特に注意すべき点は、純利益(ネットインカム)とキャッシュフローは異なるものだということです。
企業の財務諸表では、会計上の利益が計上されているものの、そこに実際のキャッシュフローが伴っていないケースがあります。
たとえば、売掛金の増加により売上が計上されていても、現金の回収が遅れれば、企業の運転資金が不足し、資金繰りが悪化します。特に成長企業では、利益は出ているのにキャッシュフローがマイナスという状況に陥ることがあり、キャッシュフロー管理が適切に行われなければ、黒字倒産のリスクもあります。
そのため、長期投資家は単なる会計上の利益だけでなく、キャッシュフローの健全性を重視します。
「優良企業を適正な価格で買い、長期的に保有する」という原則
ここまで述べてきた投資戦略は、一見シンプルに見えますが、それを実践するには忍耐と規律が求められます。「優良企業を適正な価格で買い、長期的に保有する」という原則は、多くの個人投資家にとっても有益な指針になるでしょう。
短期的な市場のノイズに惑わされず、企業の本質的な価値を見極めることが、投資で成功するための鍵になるのです。
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●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。
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