トランプ関税ショックによる底値が確定。二番底到来のシナリオも消失
当コラムでこのところ再三にわたって取り上げてきたトランプ関税ショック。その底値が確定した。日経平均株価においては4月7日の3万1136円、NYダウにおいては4月8日の3万7645ドル。これが最悪シナリオを織り込んだレベルであり、その後は一気に株価が反転。トランプ関税を巡って二番底はもう来ない、とのシナリオも確定したと思う。
トランプ政権が発表した相互関税率は欧州連合(EU)が20%、日本が24%、中国が34%など市場が想定していたよりも厳しい内容だったため、世界経済への計り知れない悪影響を織り込む形でマーケットは急落。だが、4月9日の日本時間13時1分に発動されてからわずか13時間後にトランプ大統領が「相互関税の上乗せ部分について90日間停止する」と突然表明をして流れが一変。すさまじい勢いで買い戻しが行われ、日米市場ともに相互関税発表前の水準を回復した。
米国は英国や中国との相互関税率を大幅に引き下げ。日本はどうなる?
90日の停止期間中に米国は貿易相手国と関税交渉を行ない、実際の相互関税率を決める。第1弾の交渉決着相手は英国。相互関税率10%で上乗せ分はなし、自動車は低関税率、鉄鋼・アルミの25%関税は撤廃となった。さらに中国との関税交渉は「お互いに関税率を115%引き下げる」「米国の中国に対する関税率は30%」「中国の米国に対する関税率は10%」という驚きの内容だ。さすがにここまで一気に関税率が引き下げられるとは予想されておらず、買い戻しに拍車がかかった。そもそも米国と中国は関税の応酬合戦を続けてきた間柄だ。米国が中国に34%の相互関税率をかけると、すぐさま中国は34%の報復関税を発表。それを見たトランプ大統領は84%に引上げ、中国も84%に。そして、さらにお互い125%に引き上げた。そこから115%下がったわけだが、米国の中国に対する関税率30%は当初の追加関税20%が含まれている。
日米交渉はまだ決着していないが、両政府は3回目となる閣僚協議を5月20日~22日の主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)の後に開く方向で調整しており、赤沢経済財政・再生相が訪米する予定。日本側は米国からの農産物の輸入拡大などの交渉カードで関税の引き下げを求める意向だ。もちろん、24%などという日本に対する非常識な関税率は大幅に切り下がる。今後、主要国との交渉は米国が掲げた関税率から大きく下がる。悪いシナリオは起こらない。
株価急落で海外勢が大幅買い越しする一方、国内投信は逆の悪手をとった
ところで、トランプ関税ショックで日本市場が急落した最中に「買ったのは誰だ?」が明らかになった。海外勢が株式を3兆6759億円買い越し過去3番目の大きさに、そして債券を4兆5371億円買い越して過去2番目の大きさとなった。合計で8兆2130億円の買い越しとなり、合算ベースで過去最大の買いだ。
一方、日本のアクティブ投信はさわかみ、レオス、コモンズなどがキャッシュ比率を高める行動をとったことは既に述べたが、こうした運用成績の悪いファンドはパフォーマンス悪化を恐れて株を売った。だが、結局は間違った投資行動だった。反発局面でマーケットに追随することは難しく、とくに4月末のキャッシュ比率が19.5%まで高まったさわかみ投信は今後もマーケットに負け続ける可能性が高い。「次の株価急落時に徹底的に買い向かいます」とまで宣言しているが、次の株価急落時って果たしていつなのだろうか?
さて、ここから大事なことを書く。今回のトランプ関税ショックで「我々は何を学んだか」についてだ。大きなポイントは2つある。
関税ショックに学ぶポイント① 恐怖指数の活用
まず、ひとつが恐怖指数の活用だ。マーケット参加者の市場に対する心理状態を0%~100%のレンジで表す指数だ。平常時は20%未満だが、20%を超えると恐怖を感じている状況、40%を超えるとパニック状態と定義されている。トランプ関税ショック時における米国のVIX指数は52.33%(4月8日終値ベース)、日本のVI指数は58.39%(4月7日終値ベース)ときわめて高水準となった。恐怖指数はリアルタイムで変化するが、4月7日に日経平均が2644円安の3万1136円まで売られた時は日中ベースで60%を超える水準まで上昇した。
パニック状態における「恐怖指数」の活用は非常に有効だ。例えば、恐怖指数が40%というのは「株価が今後1年間に約7割の確率で上下40%の範囲で変動する」ことを示す。実際の株価の動きを見ると、急激な恐怖指数の高まりは「たいてい瞬間的であり」「さらなる株価下落よりもこれから株価反発が起こり」「上下40%の範囲の解釈は上昇40%と読み取れる」ことになる。リーマンショック、コロナショック、チャイナショックなど過去の大きな12のシステマティックリスク・イベントを検証すると恐怖指数は40%を超えており、その後大きく反発する結果になっている。だから恐怖指数は「チャンス指数」と私は皆さんに言っている。今回も恐怖指数、いやチャンス指数を活用すれば安値で買える投資行動が取れたはずだ。
関税ショックに学ぶポイント② システマティックリスク時の逆指値設定
もうひとつが、システマティックリスクの対処法だ。株式投資をするにあたってはリスク管理をするのが常識だ。すなわち、保有銘柄にストップロスを設定してあらかじめ逆指値注文を出しておくことで損失額を限定する方法だ。仮にファンダメンタルズが悪化したり、当初の思惑が外れた際にも自動的に売却して損失を食い止めることができる。だが、今回のように相場全体が一斉に下落すれば優良銘柄も急落する。本来売ってはいけない株価で売却することになりかねない。したがって、通常のリスク管理からは離れて、逆指値設定を解除しておく必要がある。「勝者のポートフォリオ」では2024年9月に米連邦準備理事会(FRB)が利下げして金融相場入りした時から逆指値を解除しており、今回の急落局面では1株も売っていない。キャッシュに余裕があれば、むしろ買い増しすらできる局面だった。
「賢者は過去に学ぶ」「愚か者は何も学ばない」と私はいつも言っているが、大きな出来事での重要ポイントは将来同様の事象が起こった時に生かすことができる。すでに、第1次トランプ政権時の米中貿易戦争でのマーケットの下落と反発を7年前に経験した。その経験値が「勝者のポートフォリオ」の運用に大いに生かされている。4月は厳しいマーケットだったにもかかわらず月間最高値を更新し、5月に入っても最高値を更新しているのは「賢者は過去に学ぶ」を実践しているからである。
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さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言を行っている「勝者のポートフォリオ」。毎週のメルマガ配信による運用指南に加えて、2大特典として毎月のWebセミナー開催とスペシャル講義を提供している。
毎月恒例の株式投資Webセミナーを5月14日水曜20時より開催した。テーマは『トランプ関税ショックに収束の兆し、勝者のポートフォリオは最高値更新中』。2時間半のロングランセミナーとなり、参加者は248名とGW明けという時期もあってやや少なかったものの、ほとんどの人が22時半の終了時刻まで熱心に視聴してくれた。今後の投資戦略、株価上昇が期待できる個別銘柄を詳しく解説し、皆さまからのすべての質問にお答えした。投資のヒントが満載である。すでにアーカイブでセミナー動画を視聴することができる。次回は6月4日水曜20時より開催予定である。10日間の無料お試し期間でも参加可能。ぜひ奮って、お申し込み&ご参加願いたい。
そして、動画によるスペシャル講義ではいよいよアンシステマティックリスク、すなわち個別銘柄リスクに関する詳細な講義がスタート。第2弾は「個別銘柄の株価の動きをスコア化する」「グロース株vsバリュー株の評価ポイント」。すでに講義動画はアップ済みである。
「個別銘柄の株価の動きをスコア化する」においては、株価がSリスク、USリスク、Mサイクルの3つの要因、さらにそれぞれが包含する多くの要素によって株価が動いていることを理解するのが目的である。スコア化することによって、常に泰然自若の投資家になっていただきたいと考えている。「グロース株vsバリュー株の評価ポイント」では、それぞれのカテゴリーにおいて投資の評価軸が異なることを再確認していただくのが目的。混同している方々が多いため詳しく解説している。
●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供による「勝者のポートフォリオ」メルマガ配信などで活躍。
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