日米とも株式市場の復調が鮮明。株価は相互関税発表前の水準まで回復!
株式市場が順調に戻りつつある。NYダウは5月8日に4万1368ドルまで上昇し、相互関税発表前の4月2日の4万2225ドル以来の水準近くまで戻った。日経平均株価も同日に3万6928円まで上昇し、3月28日につけた3万7120円近くの水準まで回復した。一時はNYダウが3万7645ドル、日経平均が3万1136円まで下落したことを考えると、トランプ関税ショックは収束したと言える。
5月第1週から第2週にかけて、日米の中央銀行が相次いで最新の金融会合の結果を発表した。「金融政策こそ、景気や業績よりも株式市場にとって最重要」と私は日頃から言っているが、まずはこちらを点検してみたい。
5月1日木曜に公表された日銀の金融政策は2会合連続で政策金利を据え置いた。植田和男総裁は「現状は、経済・物価ともオントラック(想定通り)できている」「経済・物価情勢の改善に応じて政策金利を引き上げる」との姿勢は堅持したものの、トランプ関税について「世界経済に与える影響が不透明であり、注視する必要がある」と述べた。3カ月ごとに見直される展望リポートにおいては2025年のGDPの成長率を1.1%から0.5%へ、CPI(消費者物価指数)の成長率を2.4%から2.2%へと下方修正した。「利上げのタイミングは後ずれしている」との見方が広がり、ドル円は145円台まで円安が進んだ。
トランプ大統領の「口撃」に屈せず、FRBは金利据え置き。市場は好感
そして、5月7日水曜に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)では3会合連続で政策金利が据え置かれた。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は「関税政策により、経済の見通しを巡る不確実性がさらに高まっている」「様子見が賢明であり、利下げを急ぐ必要はない」とあくまで慎重だった。トランプ大統領は自身のSNSで「今すぐ利下げしないと経済が減速しかねない」「判断が遅すぎる男」「一刻も早く解雇すべき」とパウエル議長を激しく攻撃していたが、FRBが安易に屈しない姿勢を示したことは好感される。FRBの独立性が損なわれれば、当然のことながら米国の信認は揺らぐ。そうした事態は避けねばならない。
「太田先生、日本は今後利上げするのなら、金融相場ではなくて逆金融相場になるのではないですか?」
こうした質問をいまだに受けるが、間違った考え方である。日本市場を含めて世界の株式市場の方向性を決めるのはFRBの金融政策である。FRBは昨年9月にようやく0.50%利下げし、11月と12月は連続で0.25%ずつ利下げした。その結果、5.25%~5.50%だった政策金利は現在4.25%~4.50%の水準にある。FRBが昨秋に利下げを始めたことで逆業績相場から金融相場に移行した。金融緩和によって株式市場にマネーが流れ安くなり、株式市場が上昇するエンジンとなる。
日銀も2会合連続で金利据え置き。今後は利上げも正常化の一環で心配無用
一方、日本の場合、昨年3月にマイナス金利からゼロ金利に移行し、同年7月には0.25%にプラス転換、そして今年1月に0.50%へと追加利上げを行った。数字だけを見ると確実に金利は上がっているが、これはあくまで金融正常化の一環であり、実質金利はいまだマイナスのままである。したがって、コロナ禍後のインフレ対応と称して欧米諸国で急ピッチに4%や5%を超える水準まで利上げしたのとは全く性質が異なる。「金融正常化のための金利引上げ」と「(通常の)利上げ」は違うのだ。日本はマイナス金利という負の金融政策で経済成長がほとんどなかった状況から脱却し、ようやく金利がある世界になった。これは株式市場にとってもプラス材料であり、日本のマーケットが好転している大きな要因となっている。
したがって、今は株式市場が最も上昇しやすい金融相場である。ところが、だ。トランプ政権による無茶な相互関税政策の発表で激しくぶち壊されたのが4月のマーケットだった。「太田先生、実際に世界恐慌になったらどうするんですか? 株価はもっと暴落するのではないですか?」と聞いた人がいたが、「それこそ私が望むところである」と言った。
トランプ関税も好転の兆し。第一弾の英国との関税交渉結果に市場は好感
なぜなら、景気や業績が大幅に悪化すればFRBは大胆な金融緩和政策を行うからだ。今の政策金利は4.25%~4.50%の高水準にあり、金利の引き下げ余地は十分にある。インフレに関わらず利下げが再開されれば量的金融政策も行われ、株価反発の大きなカタリストとなる。すでに我々はコロナ禍のマーケットで経験済みだ。あの時は経済活動停止で景気はめちゃくちゃ、企業業績は赤字続出となった。だが、FRBのゼロ金利政策で株価は急騰。日経平均は1万6000円から3万円を超える水準まで一気に上昇した。本格的な金融相場が到来し、「不況の株高」が起こったのである。
ところで、トランプ関税にも好転の兆しが出ている。第1弾の関税交渉決着相手は英国だった。相互関税率10%で上乗せ分はなし、自動車は低関税率、鉄鋼・アルミの25%関税は撤廃され、マーケットで好感されている。中国についても間もなく交渉が行われ、「良い結論が出るだろう」とトランプ大統領はコメントしている。NYダウが3万7645ドル、日経平均は3万1136円まで下落したのは最悪シナリオを織り込んだ水準だった。もはやそのような事態が起きないとすれば、今後二番底を探る展開にはならない。トランプ関税ショックの底はすでに確認した。
関税ショックによる二番底は期待薄の中、現金比率の引上げはナンセンス
市場全体が下がるシステマティックリスク。これはどんなマーケットサイクルでも起こりうる。マーケットサイクルそのものとは独立事象である。だが、マーケットサイクルごとに対処法が異なることは知っておくべきだろう。すなわち、今のような金融相場では過度な心配、ましてや株を売るような戦略は不要だ。なぜなら、株価は戻るからだ。本コラムにおいて、過去2回に渡って指摘したアクティブ投信のキャッシュ比率引き上げは、要するに安いところで株を売っているということであり、間違った投資戦略である。プロの運用ではない、と言っておく。
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●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供による「勝者のポートフォリオ」メルマガ配信などで活躍。
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