NISAでも税金がかかる!? 米国株の配当に潜む落とし穴。一方、その問題がないのが香港株とシンガポール株
配当投資といえば米国株。そう思い込んでいる初心者にこそ、筆者はアジアの市場を見てほしいと思っています。
理由は難しい話ではありません。税金です。
米国株の配当は、日本に届く前に現地で10%が源泉徴収されます。ところが香港とシンガポールには、この現地源泉徴収税がそもそも存在しません。配当は1ドルも引かれずに日本へ届くのです。
この差が最も効くのがNISA。
下の図を見てください。配当100円に対する手取りは、米国株を課税口座で持てば約72円(※)、NISA口座でも90円止まり。非課税のはずのNISA口座で配当が丸ごと100円もらえないのは、米国の現地源泉徴収税10%はNISA口座でも引かれたままで戻ってこないからです。
ところが香港株・シンガポール株をNISA口座に入れれば、100円が丸ごと手元に残ります。「完全非課税の配当」が、実は米国株では作れず、アジアでは作れる国があるのです。
(※筆者注:米国株・課税口座の72円は外国税額控除の適用前。外国税額控除を使えば、確定申告で一部を取り戻せる場合がある)
出所:筆者作成
「成長を取るか、配当を取るか」という二択。数少ない両取りできる存在がアジア株だ
税金のことだけがアジア株の取り柄ではありません。
米国株の魅力が成長なら、その代償は配当利回りの低さです。S&P500の配当利回りはいまや1.1%前後しかありません。
一方、高配当で知られる欧州株は配当利回りこそ立派ですが、欧州の実質経済成長率はおおよそ年1%台にとどまります。
アジア株はこの中間に立っています。2026年のアジア途上国の実質経済成長率見通しは4%台半ばと先進国の2倍以上で、しかも香港・シンガポールの優良株なら4~6%の配当利回りが普通に手に入ります。成長率の高い地域の企業は利益も配当も伸びやすいのです。
「成長を取るか、配当を取るか」という定番の二択に対する、数少ない両取りの答えがアジア株なのです。
どの証券会社で、どんな銘柄を買えばいいのか
香港株はSBI証券、楽天証券、マネックス証券の大手ネット証券3社で、シンガポール株はSBI証券と楽天証券で、外国株口座を開けば、日本語表示の取引画面で買えます。特殊な手続きはいりません。
私が推奨する銘柄選びの基準はシンプル。それは「利回りの高さ」ではなく、「配当を払い続けてきた年数」で選ぶことです。
香港株・シンガポール株で、私が初心者向けの出発点として挙げるのは次の5銘柄。いずれも10年以上、配当を維持・増配してきた実績があり、事業は電力・インフラ・銀行・不動産というわかりやすいものばかりです。
出所:筆者作成
香港株・シンガポール株で初心者が陥りやすい3つの罠
ここで初心者が陥りやすい3つの罠を挙げておきます。
第一の罠は、配当利回りの高い順に買うことです。
アジアには配当利回り7%、8%という銘柄がごろごろありますが、その多くは景気敏感な海運・素材や、政策リスクを抱えた中国国有企業です。高い配当利回りは「リスクの値札」だと考えたほうがいいでしょう。長く株式投資を続けるなら、安定した4%は不安定な7%に勝ります。
[参考記事]
●米国株の「配当王」AWRの配当利回りが2.35%と低い理由とは? 配当株は「配当利回り」という数字だけで選んではいけない
第二の罠は、シンガポールのREITです。
シンガポールREITは分配金利回り6%台の銘柄が並ぶ魅力的なものですが、個別のシンガポールREITは制度上の理由で日本の主要ネット証券ではほぼ買えません。ネット記事で名前を見て探しても出てこないのはそのためです。
どうしても欲しければ、シンガポール上場のREIT ETFや東証上場のシンガポールREITのETN(証券コード:2045)(※)を買うという代替手段がありますが、初心者はまず上の表に挙げた普通株と香港のLink REITから始めれば十分でしょう。
(※編集部注:このETNの正式名称は「NEXT NOTES S&P シンガポール リート(ネットリターン) ETN」)
第三の罠は、同じ香港上場銘柄でも中身が違うものがあることです。
中国本土で登記された企業(H株)の配当には中国の源泉徴収税10%がかかります。「香港=源泉徴収税ゼロ」が成り立つのは香港やシンガポールで登記された企業の話であり、銘柄ごとの確認は怠れません。
また、配当は香港ドルやシンガポールドルで受け取ることになるため、もしも円高になれば円換算の手取りは目減りすることになります。為替の変動に対しては、買付を数回に分けて時期を散らすのが、平凡ながら唯一の対策です。
香港株・シンガポール株へ小さく投資を始めて、外国税ゼロで丸ごと振り込まれることを実感してみよう
香港株は1単元数万円から買える銘柄が多く、NISA成長投資枠も使えます。まずは先ほどの表の中から1銘柄、数万円分、投資してみましょう。配当が外国税ゼロで丸ごと振り込まれるのを一度体験すれば、数字の説明をいくら聞くよりも、この市場の意味をよく理解できるはずです。
配当投資の主戦場が米国株であることは今後も変わらないでしょう。しかし、「非課税の配当」という一点において、アジア株は米国株より初心者にやさしい──私はそう考えています。
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガ「米国株&世界の株に投資しよう!」を配信中。著書『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』発売中。
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